E2601 – 第18回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>

カレントアウェアネス-E

No.457 2023.06.01

 

 E2601

第18回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>

関西館図書館協力課・レファレンス協同データベース事業事務局

 

  2023年3月22日、国立国会図書館は、第18回レファレンス協同データベース(レファ協)事業フォーラムをオンライン形式で開催した。今回のフォーラムは、「レファ協で出会う専門図書館―そのディープな魅力に迫る―」をテーマとし、専門図書館の特色ある所蔵資料やレファレンスサービスについて理解を深め、専門図書館と他の館種との連携を強化する契機とすることに主眼を置いたものであった。

  はじめに、「専門図書館の魅力を知る」と題して、明治大学文学部の青柳英治教授によるオープニングスピーチが行われた。専門図書館の定義や設置主体の種類、経営資源の状況、他館種との連携・協力の実施状況などについて説明があり、具体例を挙げながら専門図書館の特徴が紹介された。その上で、特定テーマの資料・情報を持つ専門図書館がレファ協事業に参加すると、専門図書館で行われているレファレンスサービスの認知度が高まるのと同時に、専門性の高いレファレンス事例などを活用できる機会が広げられるため、専門図書館側とレファ協のデータを利用する側双方にメリットがあるとまとめられた。

  次に、継続的にレファ協へのデータ登録を行っている専門図書館4館の担当者が登壇し、参加館報告が行われた。

  • 泉峰子氏(国立保健医療科学院図書館サービス室)
      図書館サービス室では、保健医療分野を中心に、戦前の統計資料、世界保健機構(WHO)の出版物や貴重資料を含む約12万冊を所蔵しており、「厚生労働科学研究成果データベース」などの情報提供事業や、学術誌『保健医療科学』の編集・刊行を行っている。レファ協には2010年から参加しており、主に館内での記録用として利用していたが、2020年以降、新型コロナウイルス感染症の流行とともに「流行性感冒」についての問い合わせが増えたため、レファレンス事例の一般公開に踏み切ったことが述べられた。
  • 吉野ゆかり氏(公益財団法人矯正協会矯正図書館)
      一般図書約4万冊、逐次刊行物960タイトル、江戸期の古文書などの文献のほか、手錠・足枷などの刑具、絵画など貴重なコレクションを所蔵。過去の刑務所の所在地についての質問が多く寄せられることから、江戸期以降の刑務所、拘置所などの施設の新設・移転・廃止といった変遷をまとめた「刑務所拘置所変遷図」(東京・大阪・北海道)を作成し、同館のウェブサイトで公開している。レファ協にレファレンス事例を蓄積し、時に見直すことで、利用者が図書館に求めていることを把握することができるという利点が述べられた。
  • 小室利恵氏(トヨタ自動車株式会社トヨタ博物館図書室)
      メーカーやブランドを超えた自動車関連のカタログ・書籍・雑誌など約25万点を所蔵。乗り物絵本専用の図書室も併設しており、家族連れの来館も増えている。レファ協で900件以上の事例データを公開している。どのような資料を所蔵しているかの参考としてもらうために、ウェブサイトでレファ協に登録している同館のレファレンス事例を紹介している。
  • 阿部麻里氏(凸版印刷株式会社印刷博物館ライブラリー)
      印刷全般をはじめ、出版、広告、文字など関連分野も含めた和洋図書雑誌約7万冊を所蔵。専門誌・業界紙や印刷会社のカタログ類・見本帖類が貴重な資料となっている。印刷博物館の学芸員や印刷工房の職人などのスタッフと連携してレファレンスサービスに取り組んでいる。印刷工房は、活版印刷の保存や伝承、研究のために印刷博物館内に設置されている施設である。レファ協は情報発信の強力なツールとなっているのと同時に、他館のレファ協事例が参考になることもあると述べられた。

  事務局報告では、レファ協に多様なデータが多数登録されていることを紹介し、参加館同士の連携を強め、より役立つデータベースとしていくことを呼びかけた。

  続いて、レファ協事業企画協力員の西口光夫氏(豊中市立庄内図書館(大阪府))によるコーディネートのもと、参加館報告者(矯正図書館は吉野氏に代わり平松智子氏)によるフリートークが行われた。フリートークでは、専門図書館ならではの資料分類方法、専門性の深め方、レファ協に登録したデータの更新などについて、各館の状況を共有した。また、ChatGPTのような人工知能(AI)を活用したサービスや検索サービスが発達するなか、専門職の必要性に関してどのように考えるかという質問に対し、質問者の理解度を確認して質問の真意を掘り下げるプロセスや、デジタル化されていない原資料や書籍化されていない知識を扱う場面では、司書の専門性が生かせるのではないかといった回答があった。

  参加館報告、事務局報告、フリートークについては、国立国会図書館公式YouTubeチャンネルでアーカイブ映像を視聴することができる。また、すべての配布資料をレファ協ウェブサイトに掲載しているほか、後日同サイトに「記録集」も掲載する予定である。参加館報告の中で紹介があったレファレンス事例については、レファ協に登録されているのでそちらも参照されたい。

Ref:
“第18回レファレンス協同データベース事業フォーラム「レファ協で出会う専門図書館―そのディープな魅力に迫る―」”. レファレンス協同データベース.
https://crd.ndl.go.jp/jp/library/forum_18.html
“第18回レファレンス協同データベース事業フォーラム「レファ協で出会う専門図書館―そのディープな魅力に迫る―」”. YouTube. 2023-04-28.
https://www.youtube.com/playlist?list=PLXvKjMC1JnVvF94xOTOt5xWiLQCjrszqz
レファレンス協同データベース.
https://crd.ndl.go.jp/reference/
関西館図書館協力課・レファレンス協同データベース事業事務局. 第17回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>. カレントアウェアネス-E. 2022,(436), E2503.
https://current.ndl.go.jp/e2503