カレントアウェアネス-E
No.436 2022.06.09
E2503
第17回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>
関西館図書館協力課・レファレンス協同データベース事業事務局
2022年3月3日,国立国会図書館は,「“続けること”が生み出すもの-継続的なデータ登録の工夫を探る-」をテーマに,第17回レファレンス協同データベース(レファ協)事業フォーラムをオンライン形式で開催した。本フォーラムは,レファ協でデータを蓄積・共有することの意義への理解を深め,参加館によるデータ登録の促進を目指したものである。
はじめに,「続けていることで生まれ出てくるもの」をテーマに,ウィキペディア編集者の日下九八氏によるオープニングスピーチが行われた。長年ウィキペディアに携わってきた経験を踏まえて,ウィキペディアとレファ協との共通点や相違点に触れながら,データを蓄積することの意義に関して説明があった。スピーチの中では,取組を長く続けていくことで生み出される価値について,またレファ協が今後目指すべき方向性や活用可能性について提案がなされた。
次に,近年継続的にデータ登録・公開に取り組んでいるレファ協参加館3館の担当者が登壇し,参加館報告が行われた。レファ協事業への参加からデータ登録作業の体制構築に至るまでの過程,データ登録・公開に関する具体的な運用方法,継続的なデータ登録による効果等について,それぞれの館の実態に即して報告された。各館の報告の概要は以下の通りである。
・德田恵里氏(関西大学図書館)
業務繁忙等により事例の登録が滞った時期もあったが,独自のガイドラインやマニュアルの整備,Twitterアカウントの活用などによって事例登録を再開し,現在の積極的な活用に至る。レファ協を活用することが,外部からの図書館サービスの評価につながっているが,職員のモチベーションの維持向上や人材育成が今後の課題である。
・上田茜氏(兵庫県伊丹市立図書館本館「ことば蔵」)
新人の頃から粘り強く館内調整を続け,レファ協事業への参加を果たした。クイックレファレンスも含めて多くのデータを登録する,Twitter上で話題にしてもらえるような文体で事例を作成するなど,事例の公開数とアクセス数の増加を目指してさまざまな取組を行っている。このような取組を継続することが,市民や行政からの評価につながっている。
・生友えり氏(兵庫県小野市立図書館(当時))
レファ協の活用は,職員の意識改革を最大の目的として始まった。データを作成・公開することが,業務の効率化や,日々の登録作業や研修での活用等を通じた職員の能力向上にも貢献し,ひいては利用者の図書館に対する信頼醸成へとつながっている。
この後,レファ協事業企画協力員の小熊ますみ氏(埼玉県立熊谷図書館)によるコーディネートのもと,参加館報告者3人を交えたフリートークが行われた。フリートークでは,参加館報告に関して寄せられた多くの質問に対して,時間が許す限り回答が行われた。データを一般公開するにあたって行っている工夫や,過去に作成した事例のメンテナンス,コロナ禍の業務への影響に関する質問などが取り上げられ,3館それぞれの取組や工夫が共有された。フリートークの中では,レファ協事業企画協力員の田子環氏(神奈川県立厚木清南高等学校)や坂井華奈子氏(独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所学術情報センター)から,学校図書館や専門図書館ならではの取組や実情についても紹介がなされた。
フォーラムではそのほか,レファ協事務局から,レファ協に参加するメリットや,参加館がデータを登録・公開する際に意識するとよいポイントなどについての説明も行った。
フォーラム終了後には,初めての試みとして,オンラインでの交流会を実施した。交流会は,フォーラム登壇者,レファ協事業企画協力員,参加者を交えた少人数のグループに分かれて,リラックスした雰囲気で行われた。どのグループでも,参加者同士の交流や情報交換が活発に行われた様子がうかがえた。
事後アンケートの満足度調査では,満足との回答が大半であったが,中には対面での開催を求める声もあった。次回の開催方法については,今後事務局で検討していきたい。
フォーラム当日の様子は,国立国会図書館公式YouTubeチャンネルでアーカイブ映像を視聴することができる。また,レファ協ウェブサイトにてフォーラムの発表資料を掲載しているほか,後日,フォーラムの「記録集」も同ページに掲載する予定である。
Ref:
“第17回レファレンス協同データベース事業フォーラム“続けること”が生み出すもの-継続的なデータ登録の工夫を探る-”. レファレンス協同データベース.
https://crd.ndl.go.jp/jp/library/forum_17.html
“第17回レファレンス協同データベース事業フォーラム「“続けること”が生み出すもの-継続的なデータ登録の工夫を探る-」”. YouTube. 2022-04-18.
https://www.youtube.com/playlist?list=PLXvKjMC1JnVuOKHHpncbeONjKzEFOhKc3
関西館図書館協力課・レファレンス協同データベース事業事務局. 第16回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>. カレントアウェアネス-E. 2021, (416), E2403.
https://current.ndl.go.jp/e2403