カレントアウェアネス-E
No.416 2021.07.08
E2403
第16回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>
関西館図書館協力課・レファレンス協同データベース事業事務局
2021年3月19日,「レファ協というプラットフォーム―コロナ時代のレファレンス・サービスを考える―」をテーマとして,16回目となるレファレンス協同データベース(レファ協)事業フォーラムを開催した。本フォーラムは,2020年3月に別のテーマで開催が予定されていたが,新型コロナウイルス感染症感染拡大防止のため中止を余儀なくされ,この度オンライン形式に移行して開催の運びとなったものである。
プログラム冒頭では,小田光宏氏(青山学院大学コミュニティ人間科学部教授,レファ協企画協力員)がフォーラムを方向づけるオープニングスピーチを行った。フォーラムのテーマに掲げた「プラットフォーム」という言葉を「レファレンスサービス情報交換基盤」という意味で捉え,コロナ時代のレファレンスサービスに関わる日本各地や世界での先進的な取組について紹介しながら,レファ協が今後目指すべき未来像やその課題が提示された。レファ協には「コモン」(共有の場)としての役割と「ハブ」(つなぎ役)としての役割があることが指摘され,より「低く,平たく,載せやすい」プラットフォームとなることが望ましいのではないかとの提起によってスピーチが締めくくられた。
今回のフォーラムは,コロナ禍に見舞われた図書館の取組を参加者と共有し,「新しい日常」におけるレファレンスサービスのあり方を考えることを主眼とした。藤本明子(大阪市立中央図書館),大畑真依(函南町立図書館(静岡県)),上野芳重(近畿大学中央図書館(大阪府)),田子環(神奈川県学校図書館員研究会,レファ協企画協力員)の4氏(以上,登壇順)が登壇し,新型コロナウイルス感染症感染拡大に伴って各機関で採られた対策・新しい取組の状況や,その中でのレファ協の活用状況について報告がなされ,閉館中でも利用者の「知りたい」に応えるために行われた各館各様の工夫が共有された。報告はそれぞれ盛りだくさんの内容であり,特に印象に残る話としては以下のようなものがあった。
- レファ協上で,コロナ関連事例をいち早く公開することや,自宅から参照できる情報源を過去事例に追記する等の取組を行った。併せて,自宅で利用できる電子書籍やデジタルアーカイブのPRをウェブサイトやSNS上で行った。(大阪市立図書館)
- 休館期間等を利用し,過去のレファレンス事例をレファ協に多数遡及登録したり,お役立ちリンク集を作成したりした。レファレンス回答に当たっては他館の類似事例が非常に心強く,自館でも積極的に登録を続けて参加館協同での課題解決に取り組みたい。(函南町立図書館)
- 東日本大震災で図書館が発する信頼性の高い情報が求められたことを教訓に,コロナ禍においても需要の高い事例をいち早くレファ協上で公開した。また,Zoomによるオンライン利用相談やオンライン講習会等,来館できない利用者にサービスを届けるための新しい取組を行った。(近畿大学中央図書館)
- 神奈川県の学校図書館では,学校によって差があるものの,リモートでのレファレンス受付を開始する,新しい広報手段を確保する等,生徒が図書館を利用できない中でも図書館サービスの利用を支援できるよう各校各様の工夫を凝らした。(神奈川県学校図書館員研究会)
事務局からのレファ協の活用の提案に関する報告の後,プログラムの最後に,登壇者4人にコーディネーターとして坂井華奈子氏(独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所学術情報センター,レファ協企画協力員)が加わり,自由に意見交換をするフリートークを行った。フリートークの中では,図書館サービスや図書館が主催するイベントを紹介する動画作成の方法やオンラインならではのレファレンス・インタビューの工夫,デジタル資料の活用等について実用的で有益な意見交換が行われた。
今回のフォーラムは初めての完全オンライン開催となり,事務局も手探り状態での開催となった。当日は200人を超える参加があり,実施後のアンケートでの満足度も非常に高いものだった。特に経費や時間の問題で今までフォーラムに参加できなかった方にとって,オンライン開催のメリットは大きかったようだ。次回以降の開催方式については,寄せられたご意見を基に事務局で検討したい。
なお,レファ協ウェブサイトにて,今回のフォーラムの当日資料を掲載しており,「記録集」も後日掲載する予定である。
Ref:
“第16回レファレンス協同データベース事業フォーラム レファ協というプラットフォーム―コロナ時代のレファレンス・サービスを考える―”. レファレンス協同データベース.
https://crd.ndl.go.jp/jp/library/forum_r2_16.html
小田光宏. オープニングスピーチ「レファ協はプラットフォームか? 低い,平たい,載せやすい」. 第16回レファレンス協同データベース事業フォーラム. [2021].
https://crd.ndl.go.jp/jp/library/documents/forum16_1.pdf
藤本明子. コロナ禍のレファレンスとレファレンス周知の取り組み. 第16回レファレンス協同データベース事業フォーラム. [2021].
https://crd.ndl.go.jp/jp/library/documents/forum16_2.pdf
大畑真依. 課題解決支援のために動き続ける図書館. 第16回レファレンス協同データベース事業フォーラム. [2021].
https://crd.ndl.go.jp/jp/library/documents/forum16_3.pdf
上野芳重. 事例報告 コロナ禍とレファレンスサービス. 第16回レファレンス協同データベース事業フォーラム. 2021.
https://crd.ndl.go.jp/jp/library/documents/forum16_4.pdf
田子環. COVID-19の影響下での学校図書館サービス. 第16回レファレンス協同データベース事業フォーラム. 2021.
https://crd.ndl.go.jp/jp/library/documents/forum16_5.pdf
藤田順. レファ協活用の提案. 第16回レファレンス協同データベース事業フォーラム. 2021.
https://crd.ndl.go.jp/jp/library/documents/forum16_6.pdf
関西館図書館協力課・レファレンス協同データベース事業事務局. 第15回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>. カレントアウェアネス-E. 2019, (367), E2129.
https://current.ndl.go.jp/e2129