E2674 – 2023年VIAF評議会会議<報告>

カレントアウェアネス-E

No.474 2024.02.22

 

 E2674

2023年VIAF評議会会議<報告>

収集書誌部収集・書誌調整課・村上一恵(むらかみかずえ)、木村千枝(きむらちえ)

 

  2023年9月28日、バーチャル国際典拠ファイル(VIAF)評議会会議(E2567参照)がオンラインで開催された。本稿では、今回の会議の内容を報告する。

●2022/2023年度のVIAF統計報告

  VIAFを維持管理しているOCLCから、2022年7月から2023年6月までの統計が報告された。参加機関数は前年度と変わらず57機関、各機関から提供された典拠レコード数は約9,654万件(前年度比約233万件増)、紐づく書誌レコード数は約1億8,736万件(前年度比約405万件増)であった。提供された典拠レコードを機械的にまとめたクラスターの数は約3,858万件(前年度比約103万件増)であった。

  典拠種別ごとの件数は、個人名約6,487万件(前年度比約104万件増)、地名約1,381万件(前年度比約121万件増)、団体名約1,132万件(前年度比約14万件増)、タイトル約653万件(前年度比約5万件減)となった。タイトルの減少は、タイトルのうち表現形の減少が、著作の増加を上回ったことによる。

  VIAFへの国別アクセス数ランキングは、前年度と同様、韓国が1位(約29万回/年)、中国が2位(約17万回/年)で、日本は米国、フランス、ドイツ、スペインに次いで7位であった(約5万件/年)。

●参加機関等による発表

  • IdRefにおけるVIAFデータの活用/ミストラル(François Mistral)氏(高等教育書誌センター)
      フランスの高等教育書誌センター(Abes)が維持管理する、大学図書館総合目録Sudocの典拠ファイルIdRefでは、参加機関がVIAFに提供した個別の典拠レコードをAPIにより取得し、典拠作成を行っている。現在は個人名典拠のみ取得しているが、今後、典拠種別の拡充や、作成済み典拠レコードへの情報の付加に取り組みたいと述べた。VIAFデータを用いて作成された典拠は、2022年10月から2023年9月までの1年間で約3,700件となった。個別の典拠レコードを基にして良質の典拠レコードを作成しつつ、VIAFのクラスターを基にIdRefでの典拠レコード重複を排除するといった品質管理も行われている。IdRefでは、言語や文化的背景の異なる外国人等に対する典拠レコード作成にVIAFデータがよく使用されている。
  • RDAと典拠データ/ベーレンス(Renate Behrens)氏(RDA運営委員会)
      RDA(Resource Description and Access)は、IFLA Library Reference Model(IFLA LRM;CA1923参照)に基づく目録規則である。IFLA LRMの実体関連モデルに典拠は欠かせないものであり、RDAは典拠の記録について規則を提供し、標準化に関わってきた。昨今、特に目録担当部署では、より速いデータ作成が求められる一方、適切な訓練を受けた職員が少なくなっている。また図書館以外の文化施設との連携が進み、AIなど新たな技術も開発されている。このような図書館をめぐる状況の変化に対応しながら、データの一貫性と品質を確保するためには目録規則の検討が必要である。2023年8月、IFLA書誌概念モデル(BCM)レビューグループは、時代の新たな要求に応えIFLA LRMを発展させることを決定した。RDA運営委員会はこのIFLA LRMの検討に積極的に関与している。
  • 日本語名称典拠データの複雑さ/木村麻衣子氏(日本女子大学)
      日本では図書館の種別によってデータフォーマットや目録規則が異なり、館種を超えた典拠の連携や変換は行われておらず、日本国内で典拠を統一することは難しい。また、同じ漢字の表記で読みが異なること、同じ読みで漢字の表記が異なることが多いのも日本語名称の特徴である。そのため漢字表記と読みをセットで扱う必要があり、アクセス・ポイントが長くなる。日本では2018年、RDAとの相互運用性を担保した目録規則『日本目録規則2018年版』(CA1951参照)が刊行され、著作に対するアクセス・ポイントについて規則が定められた。日本では統一タイトルの典拠コントロールが限定的であったため、著作に関する典拠形アクセス・ポイントの構築が課題であると述べた。

  今回の会議では、VIAFデータの活用例とともに、時代にあわせた規則の必要性、各地域の事情が発表された。筆者は、国際典拠ファイルであるVIAFデータ活用の広がりを実感すると同時に、VIAFデータ作成の要となる同定処理等のデータの維持管理について、今後検討が必要であると感じた。次回2024年度VIAF評議会会議の開催形式は未定であるが、VIAFデータの品質向上について議論が深められることを期待している。

Ref:
VIAF.
http://viaf.org/
“IdRef – Identifiants et Référentiels pour l’enseignement supérieur et la recherche”. Agence bibliographique de l’enseignement supérieur.
https://www.idref.fr/
RDA Toolkit.
https://www.rdatoolkit.org/
“日本目録規則2018年版”. 日本図書館協会目録委員会.
https://www.jla.or.jp/mokuroku/ncr2018
川鍋道子. バーチャル国際典拠ファイル(VIAF)について. 情報の科学と技術. 2021, 71 (10), p. 452-455.
https://doi.org/10.18919/jkg.71.10_452
ことばの壁をこえる典拠―バーチャル国際典拠ファイル(VIAF)への参加. 国立国会図書館月報. 2013, (623), p. 30-34.
https://doi.org/10.11501/7795106
村上一恵. 2022年VIAF評議会会議<報告>.カレントアウェアネス-E. 2022, (449), E2567.
https://current.ndl.go.jp/e2567
和中幹雄. IFLA Library Reference Modelの概要. カレントアウェアネス. 2018, (335), CA1923, p. 27-31.
https://doi.org/10.11501/11062627
渡邊隆弘. 『日本目録規則2018年版』のはじまり:実装に向けて. カレントアウェアネス. 2019, (340), CA1951, p. 12-14.
https://doi.org/10.11501/11299455