E2156 – IFLA,貴重書等の整理におけるRDA適用に関する報告書を公開

カレントアウェアネス-E

No.372 2019.07.11

 

 E2156

IFLA,貴重書等の整理におけるRDA適用に関する報告書を公開

 

 国際図書館連盟(IFLA)貴重書・特別コレクション分科会(RBSCS)は,貴重書・特別コレクション(以下「貴重書等」)の整理業務におけるRDA(Resource Description and Access;CA1766参照)適用状況に関する調査の分析結果の報告書“IFLA Survey on Rare Materials Cataloguing with RDA”を2019年2月に公開した。

 RDAは,英米目録規則第2版(AACR2)の後継として開発された「情報資源発見のためのデータ作成のツール」であり,各国で使用が拡大している。貴重書等の整理規則については,RDAが適用される一方で,国際標準書誌記述(ISBD)や米国大学・研究図書館協会(ACRL)の貴重書・手稿部会(RBMS)主導によるDescriptive Cataloging of Rare Materials(DCRM)が存在し,これらも広く使用される。RBSCSによる今回の調査の大枠は,貴重書等の整理を担う機関に,RDA適用の意思の有無,ISBDやDCRMの提供する目録作成の細部をRDAが担えるか,RDA適用をするならどう行うかを問うものであった。

 調査対象は貴重書等の整理を行う各国の機関であり,2018年4月から6月にオンラインによるアンケートを行い,131件の回答が得られた。調査結果はIFLAのウェブサイトで閲覧可能である。報告書本体“IFLA Survey on Rare Materials Cataloguing with RDA: Analysis”のほか,設問別集計結果“Report for Rare Materials Cataloguing”及び世界の地域別の集計結果“a comparative study by world regions”が掲載されている。なお,アフリカ及びアジア地域に関しては回答数が僅かであったため,これらの地域については,比較分析における地域別の集計結果の信頼性は相対的に低いとしている。

 以下,調査結果の概要を紹介する。なお,各回答の割合は報告書本体による。また,適用状況に言及する場合,特に断りのない限りは,貴重書等の整理業務におけるRDA適用を指している。目録作成機関の整理全般におけるRDA適用ではない点に留意願いたい。

 まず,調査では,貴重書等の整理におけるRDA適用状況の把握から始めている。回答は,「既にRDAを適用して整理業務を行っている」が44%,「適用予定」が25%,「適用予定がない」は31%であった。

 「適用予定がない」理由の回答では,「RDAを目録作成の標準として適用中/適用予定だが,貴重書等の整理に適用するには,現状のRDAでは不十分」が最多であった。他に,「自機関がRDAを目録作成の標準として適用する予定がない」,「適用に必要な財政的・人的資源が欠如している」等があった。また,「適用予定がない」場合,どの標準を使用予定かを尋ねた結果,ISBDが40%,DCRMが33%であった。その他AACR2や,これらを併用するとの回答があった。設問の背景としては,ISBDは新たな概念モデルIFLA Library Reference Model(CA1923参照)にあわせて改訂作業が行われていることが言及され,回答はその策定に影響を与えるとしている。

 一方,「適用中/適用予定」の場合,適用のための機関独自の指針の策定状況を尋ねている。「既に策定済」は25%,「策定中/策定予定」は32%,「策定予定がない」は43%で,RDAを適用している,又は適用予定である機関の中でも,指針を策定した機関は少ない。北米地域における「策定予定がない」の回答割合は61%に及んだが,これは,RBMSによる貴重書等の整理におけるRDA適用のための指針の公開を待っているためではないかと説明されている。続いて,機関独自の指針を「既に策定済」,「策定中/策定予定」の場合に,その指針はISBDに基づくかを尋ねている。ISBDに「基づく」および「部分的に基づく」は合計で77%であり,標準としてのISBDの重要性が確認されたという評価である。また,「策定予定がない」場合,RBMSの指針に従うかという設問において,「従う予定」および「部分的に従う予定」は合計で84%あった。

 さらに,「機関独自の指針の策定予定がなく」かつ「RBMSの指針に従う予定がない」場合,その他の機関の指針に従う予定はあるかが確認され,「予定あり」が53%であった。なお,具体的にどの機関の指針に従う予定かは,前述の設問別集計結果で確認できる。

 最後の設問として,IFLAが承認した貴重書等の整理におけるRDA適用に対する勧告があれば,それに従うかを尋ねたところ,「従う」が60%,「未定」が35%,「従わない」が5%であった。

 調査の結論としては,以下のようにまとめられている。

  • 各国で貴重書等の整理におけるRDA適用が拡大しつつも,貴重書等の整理に十分対応できるほどにはRDAは開発されていないという見方もあり,ISBDやDCRM等,旧来からの整理規則を使用する意義は失われていない。
  • 貴重書等へのRDA適用に伴い,適用のための独自の指針を策定する機関もあるが,多くはRBMSの指針に,一部は他機関の指針に従う予定である。財政的・人的資源の不足が,最新の基準の適用を困難にする場合がある。
  • 貴重書等の整理において,大部分の機関が,RDA適用に対するIFLAが承認する勧告があればそれに従うと回答しており,標準策定機関としてのIFLAへの評価が高かった。一方で,RDAはIFLAが所有する標準ではないため,その勧告にIFLAが取り組めるのかという疑問も呈された。

 今回の調査は,貴重書等の整理を検討する上で,各方面に参考となる結果といえるだろう。RBSCSは,この調査を受け,RDA適用に対するポジションペーパーを2020年に刊行する予定としており,期待される。

収集書誌部収集・書誌調整課・舛田航平

Ref:
https://www.ifla.org/publications/node/91980
https://www.ifla.org/files/assets/rare-books-and-manuscripts/Project-dcouments/ifla_survey_on_rare_materials_cataloguing.pdf
https://www.ifla.org/files/assets/rare-books-and-manuscripts/Project-dcouments/report_rare_materials_cataloguing.pdf
https://www.ifla.org/files/assets/rare-books-and-manuscripts/Project-dcouments/survey_results_compared_by_regions.pdf
https://iflarbscs.hypotheses.org/621
http://rbms.info/dcrm/rda/#RBMSPS
CA1766
CA1923