E2146 - 公共図書館におけるプログラミングワークショップ実証実験

カレントアウェアネス-E

No.371 2019.06.27

 

 E2146

公共図書館におけるプログラミングワークショップ実証実験

 

 日販コンピュータテクノロジイ株式会社(NCT)と株式会社図書館流通センター(TRC)は連携し,2018年12月中旬から2019年1月中旬までの期間に,公共図書館におけるプログラミングワークショップ(WS)の実証実験を行った。実証実験の報告とともに公共図書館におけるプログラミング教育についての考察を述べる。

●なぜ,公共図書館でプログラミング教育なのか

 TRCでは図書館運営のサポート業務としてイベント等をパッケージ化し,全国の運営館に提供する業務を行っている。2020年度からの小学校でのプログラミング教育必修化を受け,プログラミング教育事業のパッケージ化のための企画開発を検討することになった。小学校でのプログラミング教育について,文部科学省が行政説明資料で,また総務省も「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業の成果報告資料で触れているように,地域での取り組みが期待されており,当社では公共図書館がその役割を担うことができると考えた。

 実証実験で使用したNCTのプログラミングロボット「こくり」はしゃべって,動き,プログラミングによって自らが思い描いたようにロボットを動かす体験ができるものである。総じてロボットは高額になりがちであるが,「こくり」は既製品のタブレット端末を活用し低コストを実現しようとしていた点も,公共図書館でのプログラミングWS実現に理想的であった。

●公共図書館におけるプログラミングWSの特性

 公共図書館主催の事業とするため工夫したのは,以下の2点である。1つ目は,外部講師に頼らず図書館員が講師を務めることを可能としたことである。図書館員が講師を務めることで,WSにかかる費用が縮減できるだけでなく,主体的な取り組みとすることが可能となる。2つ目は,公共図書館ではPC室やWi-Fi環境の整備状況がまちまちなため,持ち込んだ機材の設置・接続のみでWS実施を可能としたことである。実証実験では機材のセットアップから講義や指導もすべて図書館員が行えるかの検証を行った。また,機材のトラブル等に対応できるかも気になる点であった。

●実証実験でわかったこと

 実証実験は,東京23区内の4館(新宿区立戸山図書館,練馬区立大泉図書館,豊島区立目白図書館,江戸川区立西葛西図書館)で行った。児童とその保護者を対象にしたWSは,簡単な講義の後に「こくり」の自己紹介をビジュアルプログラミングソフト(App Inventor 2 Ultimate)で作成し,そのプログラムでロボットを動かして検証し,最後に発表するという流れである。実証実験では,実施時間,「こくり」1台を何人で使用するか,保護者の役割をどうするか,等々パターンを変えて試行した。テキストは元々準備していたが参加者の作業スピードに差が見られたため,例題を示したワークシートや自己紹介のテンプレートを作成し,次回のWSより使用することとした。1台の「こくり」を複数の参加者が使用する場合は,参加者の作業の進捗に差が生じないよう働きかける会場スタッフが複数名必要だとわかった。また,保護者については参加者なのか見学者なのかを明確にすることが有効と思われた。図書館員が講師を務めることができるか,という点についてはシナリオを準備することで専門知識がなくても可能であることがわかった。機材準備についてもマニュアルを作成することで対応可能であり,機材トラブルに対してはトラブル対応窓口をNCTに設置することを検討することとなった。

●公共図書館の可能性

 筆者は先日,『ルビィのぼうけん:こんにちは!プログラミング』の著者リウカス(Linda Liukas)氏の講演会を企画し実施した。その際リウカス氏は,「プログラミング(ICT技術)というのはあくまでツール」であると語った。コンピューターが普及した今,この先どのような社会を創っていきたいのか,人々の生活をどうしていきたいのか,ということが重要であり,ICT技術はあくまでもそれを達成するための手段だということである。「人間が得意なこと,コンピューターが得意なことを理解することが入り口で,両方の力で社会をよくするためにコンピューターサイエンスはある」とも話していた。

 公共図書館は,プログラミング教育に触れる機会を提供することで,ICT技術を使って「この世界をどうよくしていくか」を主体的に考える場となっていけるのではないか。図書館資料による情報提供と体験型WSをつなげることは公共図書館の得意とすることである。地域の中で新たな役割を担い公共図書館の価値そのものを高めていきたいと考えている。

株式会社図書館流通センター・長田由美

Ref:
http://www.nct-inc.jp/news/3459/
https://www.trc.co.jp/topics/event/e_ooizumi_02.html
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1416328.htm
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/jakunensou/121748.html
http://www.nct-inc.jp/news/4578/
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I027282794-00