E2201 – 読書・学習支援コンテンツの構築及び利活用に関する調査研究

カレントアウェアネス-E

No.380 2019.11.21

 

 E2201

読書・学習支援コンテンツの構築及び利活用に関する調査研究

国際子ども図書館資料情報課・林嘉信(はやしよしのぶ)

 

 国立国会図書館国際子ども図書館は,「国際子ども図書館調査研究シリーズ」のNo.4として,『読書・学習支援コンテンツ構築及び利活用に関する調査研究』と題した,全5章からなる報告書を2019年7月16日付けで刊行した。国際子ども図書館は,国立国会図書館のデジタルコンテンツを活用するとともに,館外のデジタルコンテンツにも分かりやすくナビゲートする読書・学習支援コンテンツの構築を検討している。この報告書は,その検討に資するため,2018年度に外部委託により実施した調査研究の成果をまとめたものである。以下では,報告書の概要を紹介する。

 第1章では,国内におけるICT教育の変遷及び動向並びに国内外のデジタルコンテンツに関する先行研究等を概観している。

 第2章は,国内の読書・学習支援のデジタルコンテンツ提供機関の事例調査として,(1)国の機関,(2)地方公共団体の教育研究所等,(3)各種図書館・文書館・大学等,(4)民間という4種類に調査対象を分類した上で,ウェブ調査の結果及び国内46機関から回答を得たアンケート調査の分析結果のほか,異なる機関種別から1つずつ選んだ4機関に対して行ったインタビュー調査の結果について報告している。アンケート調査の内容は,コンテンツの内容や特徴,作成状況,運営状況等を問うものであり,インタビュー調査では,それらの内容についてのより詳細な聞き取りを行った。

 第3章は,国内の読書・学習支援のデジタルコンテンツ利用機関のニーズ調査として,ICT教育先進校の小・中・高等学校8校(中高一貫校を含む)のコンテンツ利用状況や必要とされる内容,国立国会図書館に対する要望等のインタビュー調査の結果を報告している。さらに,インタビューを行った小・中学校が属する地方公共団体の中から,ICT教育を推進している2つの地方公共団体の教育委員会に対して行ったインタビュー調査の結果について報告している。

 第4章は,米国議会図書館(LC),米国デジタル公共図書館(DPLA;CA1857参照)及びEuropeana(CA1785CA1863参照)の教育活動など,海外関係機関におけるデジタルコンテンツを巡る現況について文献調査を行った成果を報告している。米国及び欧州では,教育分野において,一次資料としてのデジタルコンテンツ利用の普及に係る取組がなされている(CA1943参照)。

 第5章は,調査研究結果を総括し,デジタルコンテンツの作成・利用に関する課題及び今後の在り方の可能性についてまとめている。作成・利用に関して必要な点としては,以下のような点が明らかになった。

  • 学習指導要領や教科に沿ったコンテンツ提供,指導案やワークシートの提供。
  • 教科書に出てくるキーワードからの検索など,効果的・効率的に検索できる工夫。
  • 対面式の意見聴取など,利用者ニーズを把握する手段の整備。
  • 研修や出前授業による良質なコンテンツの普及。

 また,今後のデジタルコンテンツの在り方の可能性としては,以下のような点に留意すべきことが示されている。

  • 提供の少ない高校生向けデジタルコンテンツの研究。
  • 子ども自身が自分に適したデジタル教材を探し,主体的に学ぶことができる仕組みづくり,あるいはその指導。
  • デジタルコンテンツの作成,授業に即して検索できるきめ細かな検索方法の開発,指導案等の提案が,教職員や専門家等と協力して行われるような組織づくり。
  • 児童生徒の,写真,書簡等の未編集の資料を含めた資料の活用能力の育成。

 「国際子ども図書館調査研究シリーズ」は,全国の都道府県立図書館や関係機関に配布している。また,既刊の号は全て,国立国会図書館デジタルコレクションに全文を掲載しており,国際子ども図書館ウェブサイトからも閲覧できる。御参照いただければ幸いである。

Ref:
https://www.kodomo.go.jp/about/publications/series/index.html
https://doi.org/10.11501/11334848
CA1857
CA1785
CA1863
CA1943