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カレントアウェアネス
No.326 2015年12月20日
CA1863
動向レビュー
欧州の文化遺産を統合するEuropeana
一般社団法人情報科学技術協会:時実象一(ときざね そういち)
1.はじめに
近年、Europeanaへの関心が高まっている。文化庁の文化関係資料のアーカイブに関する有識者会議の「中間とりまとめ」(2014年8月27日)(1)においては、「文化関係資料のアーカイブの将来的な全体像」の中核が「文化ナショナルアーカイブ(日本版ヨーロピアーナ)」であると書かれており、Europeanaが日本が目指すべきモデルと取られていることがわかる。また、2015年1月20日には、国立国会図書館において国際シンポジウム「デジタル文化資源の情報基盤を目指して:Europeanaと国立国会図書館サーチ」が開催され、Europeana執行委員のニック・プール(Nick Poole)氏らが講演した(2)。アーカイブに関する書籍でもEuropeana について論じられることがある(3)。このようにしばしば語られるEuropeanaであるが、その実態についてはあまり知られていない。
Europeanaの概要については古山氏のレビュー(CA1785参照)がある。また鈴木氏らは、孤児著作物に関するEUの動向(CA1771参照)を解説する中でEuropeanaの生い立ちについて解説している(4)。
筆者は、2015年6月11日に、オランダにあるEuropeanaの本部を訪問し、Europeana Foundation副所長ハリー・フェアウェイエン(Harry Verwayen)氏らに面会して、ヒアリングを行った。本稿では、そのヒアリングもふまえ、Europeanaの最近の状況に焦点をあてて紹介する。
2.Europeanaの歴史
Europeana はGoogle Booksプロジェクトに対する欧州の危機感、特にフランスの危機感から生まれた。当時フランス国立図書館長であったジャン・ノエル・ジャンヌネー(Jean-Noël Jeanneney)氏によれば(5)、ジャンヌネー氏が2005年1月にルモンド紙に「グーグルがヨーロッパに挑むとき」という記事を書いたが、その後フランスのシラク大統領は彼に面会を求め、彼の運動を支援するつもりだと述べたという。その結果が4月28日にシラク大統領の書簡となったのである(表1)。
表1 Europeanaの歴史(6)
年月日 | 出来事 |
2005/04/28 | フランスのシラク大統領の他、ドイツ、スペイン、イタリア、ポーランド、ハンガリーの各首脳が欧州委員会(EC)のバローゾ委員長に書簡を送り、欧州の仮想図書館建設を提言 |
2005/09/30 | ECがデジタル図書館の建設の提言、”i2010:Digital Libraries”を欧州議会に提案 |
2006/02/27 | ECは高官レベルの検討委員会を設置 |
2006/08/24 | ECは欧州の文化遺産のデジタル化と公開についての提言を採択 |
2006/11/13 | ECが欧州の文化遺産のデジタル化と公開についての結論を採択 |
2007/09/27 | 欧州議会が欧州デジタル図書館の設立を決定 |
2008/02/01 | フランクフルトの会議でEuropeanaの最初のモデルが提示される |
2008/11/20 | Europeanaが公開 |
2009/08/28 | ECがEuropeanaの次期計画提案を承認 |
2010/05/10 | 欧州議会がEuropeanaの次期計画結論を採択 |
2011/10/27 | ECが文化資産のデジタル化と公開とデジタル保存についての勧告を採択 |
2012/05/10 | 欧州議会がECの勧告を採択 |
2014/07/03 | Europeana Strategy 2015 – 2020を公表 |
2014/07/22 | ECが欧州の文化遺産のための統合的戦略を欧州議会に提案 |
なお、Europeanaのプロジェクトは、当初European Digital Library Network (EDLnet)と呼ばれていた(7)。当初の開発にはEUから200万ユーロ(2009-2011年)の資金が投入された(8)。Internet ArchiveのWayback Machine(9)には、Europeanaのベータ版が2007年3月28日に記録されている。プロトタイプの正式な公開は2008年11月20日で450万件のコンテンツが提供された。しかし、1時間に1,000万件ものトラフィックが殺到したので即日ダウンし、一旦閉鎖して12月に再オープンした(10)。
Europeanaの正式版Europeana v1.0開発プロジェクトは2009年2月1日に開始され、2011年10月に公開されて(11)、現在に至っている。
3.Europeanaの運営
3.1 運営
Europeanaの運営はEuropeana Foundationによって行われている(12)。Europeana Foundationは主として欧州委員会(EC)の予算で運営されている。
Europeana Foundationの本部はオランダのデン・ハーグにあり、約60名の職員がいる。フェアウェイエン氏によれば、デン・ハーグに事務所を開いたのは、開設当時オランダ政府が大変協力的だったためで、この事務所も格安で借りているとのことであった。
Europeana Foundationはいわばネットワーク組織である。理事会は17 名からなり、図書館・博物館などの代表からなっている(13)。
理事会の下に執行委員会があり、そこが日常の運営に責任を持っている(14)。
3.2 予算
年次報告によれば(15)、2014年の収入は約506万ユーロである。ほとんどがEU等からの補助金であり、事業収益というものはない。また、おそらく経理上の仕組みと思われるが、剰余金や年次繰越金は記載されていない。
また2014年の支出の内訳は、プロジェクト費用約475万ユーロ、人件費約32万ユーロ、管理費約19万ユーロなどである。ただし、ほとんどの職員の人件費はプロジェクトの費用でカバーされており、詳細は年次報告からは読み取れない。
なお、フェアウェイエン氏によれば、Europeanaが受け取っている2015年の資金は約890万ユーロで、そのうち270万ユーロは27のパートナーに配られているとのことであった。パートナーの例としては、European Film Gateway(16)やArchives Portal Europe(17)などがある。European Film Gatewayはその資金で映画のデジタル化を行っている。
4.Europeanaの仕組み
Europeanaは一種のポータルである。デジタル・コンテンツはEU各国にあるコンテンツ・プロバイダが保有しているが、そのメタデータをEuropeanaが収集し、APIを用いてウェブで公開している。データ提供者は2015年7月現在152機関ある(18)。こうして集められたメタデータの数は2014年現在、約3,600万件となっており(19)、2008年の約450万件から順調に増加している。
Europeanaでのメタデータ収集はOAI-PMH(CA1513参照)によっておこなわれている(20)。OAI-PMHは米国デジタル公共図書館(Digital Public Library of America:DPLA;CA1857参照)でも使われている(21)。Europeanaのメタデータについては、塩崎氏らが国立国会図書館サーチとの比較で論じている(22)。本稿では、コンテンツ・プロバイダから収集したメタデータの流れを中心に解説したい。
Europeanaにおけるデータの流れは大変複雑である(図1)。すなわち、博物館・文書館・図書館などのデータ提供者(Memory Institution)は、国や地域単位のアグリゲータ (National/Regional Aggregator)、博物館・文書館・図書館など、館種別のアグリゲータ(Domain Aggregator)、ファッション・食品・飲料など主題別のアグリゲータ(Thematic Aggregator)など、さまざまなルートでEuropeanaにデータを提供している(24)。
図1 Europeanaにおけるデータの流れ(23)
たとえばルーブル美術館の所蔵品のデータは、フランスの国立アグリゲータであるmoteur Collections経由で搭載されているので、提供者としてのルーブル美術館は見つからない。一方直接Europeanaにデータ提供しているところもある。有名なところでは、オラ ンダのアムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)がある。
こうした柔軟性により、Europeanaは多数のデータを集めることができているが、一方、複数のルートから集められるためデータの重複が頻繁に生じることが問題である。また、これらアグリゲータの中には、後述のAthena、AthenaPlusのようにプロジェクトとして構築されたものもあり、その場合は予算が切れるとサイトが閉鎖される可能性もある。そうした場合のデータやリンクの継続性も課題である。
国単位のアグリゲータは提供データ数も大きく、また永続性もある程度保証されているので、Europeanaの核ということができる(表2)。
表2 データ提供者の分布(25)
データ提供者 | 機関数 | メタデータ数 (2014/12) |
国単位アグリゲータ | 34 | 12,528,959 |
館種別アグリゲータ | 4 | 9,441,012 |
EUプロジェクト(主題別) | 33 | 13,097,791 |
その他のアグリゲータ | 5 | 119,282 |
館が直接提供 | 37 | 935,722 |
合 計 | 113 | 36,122,766 |
また2014年におけるコンテンツの種類別の割合は、“Image”が約6割、“Text”が約4割などとなっている(26)。
同様に、主要国の国別のコンテンツ数は、ドイツ、オランダ、フランス、スペインのコンテンツ数が400万前後で拮抗しており、スウェーデン、英国、イタリアが300万前後でこれに次ぐ(27)。
以下主要なアグリゲータを紹介する。
The European Library
The European Library(CA1556参照)は欧州国立図書館協会(Conference of European National Libraries : CENL)が運用する欧州48の国立図書館および研究図書館の共同プラットフォームで、これら図書館のメタデータやコンテンツをインターネットで提供している(28)。Europeanaの立ち上がりを人的・技術的に支援し、現在でも協力が続いている。現在でも、各国の国立図書館のデジタル・コンテンツをEuropeanaへ提供するアグリゲータとなっており(29)、1,074万件のデータを提供するEuropeana最大のアグリゲータである。現在の主要なプロジェクトのひとつは欧州の新聞のデジタル化である(30)。
ATHENA(Access to Cultural Heritage Networks across Europe)
Europeanaにデータを提供しようとする博物館等のためのアグリゲータとしてEUのeContentplusプログラムの中で構築されたプロジェクトである(31)。2008年に開始し、2011年に終了したので、ATHENA自体はデータを公開していない。その後2013年3月にAthenaPlusプロジェクト(32)が開始されたがこれも2015年10月に終了した。
Digitale Collectie
Digitale Collectie(33)はオランダの図書館・博物館等7館のコンソーシアムで、現在、Europeanaには263万件のデータを提供している。
Hispana
スペインの図書館と博物館のデジタル化プロジェクトのディレクトリで、Europeanaの国単位アグリゲータとなっている(34)。現在、239万件のデータを提供している。
European Film Gateway(EFG)
フランス、ハンガリー、ドイツなど15か国、16のフィルム・アーカイブの協力プロジェクトで、2008年に結成された(35)。2012年現在で、Europeanaに約55万件のデータを提供している。その90%は画像、5%がテキスト、5%が動画である。
moteur Collections
moteur Collections(36)はフランスの文化通信省が提供しているデジタル・アーカイブのポータルで、フランスの国立図書館、美術館・博物館 (ルーブル、オルセーなど)、文書館などのデジタル・データを提供している。現在、Europeanaには96万件のデータを提供している。
その他、Europeanaでは現在、Europeana Cloud(E1539参照)を開発中である(37)。小規模のアグリゲータは、Europeanaのためにサーバーを維持したり、メタデータを変換したりするのが大変である。これを支援するのがEuropeana Cloudである。ここでは、データの保存をおこなうほか、メタデータの変換やチェックのためのツール、研究者のためのツールなどを用意する予定である。
5.Europeanaの戦略方針
Europeanaは2011年から2015年までの戦略方針(38)に基づいて建設されてきた。これを引き継ぐ最新の戦略方針、Europeana Strategy 2015-2020(39)(E1620参照)は、次のように述べている。
欧州に存在すると推定されるアーカイブのうち、デジタル化されているのは10%程度だと思われる。さらにその内の12%、約3,200万件がEuropeanaに登録されている。さらにその中で、再利用可能なものは35%である(これにはパブリック・ドメイン、クリエイティブ・コモンズ(Creative Commons : CC)ライセンスのCC0、CC BY、CC BY-SAなどが含まれる(40))。フェアウェイエン氏によれば、目標はその比率を48%まで高めることである。
プラットフォームとしてのEuropeanaは、一般利用者、専門職(図書館、博物館等の文化機関の関係者)、開発者の3つのグループをサポートしている(図2)。専門職はデータを提供し、トラフィックを享受する。開発者は新しいAPIや機能を開発し、Europeanaの再利用を促進する。一般利用者に対しては、使いやすいようにテーマ毎のビューを提供したり、教育のための利用を促進する。
この中心となるのが“Core”とよんでいるメタデータのデータベースである。
具体的な目標として以下の3点を掲げている。
(1)データ品質の向上
メタデータの品質を向上させ、かつオープンなコンテンツを増やす。
(2)データのオープン化
コンテンツの再利用のためデータのオープン化を促進する。
(3)パートナーの利益の創造
パートナー機関の可視性が向上し、コストも削減できるよう努力する。
フェアウェイエン氏によればEuropeana Foundationの組織もこの3つのグループに対応するように組織されている。
図2 プラットフォームとしてのEuropeana
出典: Europeana. ‘We transform the world with culture’: Europeana Strategy 2015-2020. p. 11.
6.現在進行中のプロジェクト
6.1 語彙の補強
Europeanaでは、コンテンツにキーワードを付与するため独自の語彙(vocabulary)を持っているが、同時に他所で開発されている語彙を活用して補強している。Europeanaが活用している語彙には、GeoNames(場所)、GEMET(概念)、DBpedia(概念・エージェント)、Semium Time(時間)のようなものがある(41)。
6.2 多言語対応
大きな問題としては、多言語対応がある。Europeanaには30の言語の資料がある。たとえば、「眼鏡」についてのコンテンツを探そうとして英語で“glasses”と入力しても、ドイツ語で“brill”、あるいはフランス語で“lunettes”と記載されていると、現在は見つけることができない。このために外部で利用できる典拠データベースを利用して、Europeanaのメタデータを強化することを考えている(42)。現在利用できる典拠データベースには、VIAF(Virtual International Authority File)(43)(CA1521参照)、GeoNames(44)、Wikidata(Wikipediaで利用可能なデータベースを提供するプロジェクト)(45)などがある。
絶対数からいえばVIAFの方がWikidata/DBpedia(Wikipediaから抽出された構造化データ)より多いが、Wikidataの方がより多言語である。したがってWikidataを利用している。VIAFの方は同じ言語における綴りの違いが多く収録されている。
またWikidataには概念データもある。たとえば「食品と飲料」という概念についてWikidataには6,600もの「食品」の概念がある。またWikipedia全体には「食品」に関連する記事は60万から120万件あると思われる。
Wikidataには現在1,400万件のデータが登録されており、APIで利用できるほか、オープンデータとしても利用可能である。今後VIAFとWikidataの連携が進められる方向である。EuropeanaとしてはWikidataを用いて、セマンティックの充実を行うとともに、EuropeanaのコンテンツをWikidataにリンクすることを考えている。Wikipediaの記事をつくらなくとも、Wikidataにエントリーを作成することは可能で、自動的に登録することができる。
6.3 API
フェアウェイエン氏によれば、EuropeanaはポータルというよりはAPIのかたまりであるという。このポータルはAPIを使って作られている。メタデータのデータベースはクラウドにある。コンテンツについては直接リンク、またはサイトへのリンクを要求しているが、API開発のためにはAPIがトップページなどでなくコンテンツに直接リンクできないと意味のある表示ができない。
現在APIキーは2,000件発行している。その成果はEuropeana Labs(46)で見ることができる。
6.4 Googleとの協力と競合
フェアウェイエン氏によれば、Googleとの関係については、Google Virtual Exhibition(47)などでGoogle Cultural Institute(E1477参照)と協力している。
一方Google Art Project(48)については競合関係にある。Google Art Projectは主として大美術館を相手にしているが、Europeanaはより広範な美術館・博物館を対象とすることで差別化したいとのことであった。
6.5 Wikipediaとの協力
Wikipediaとは協力を強めている。一つは前述のWikidataの利用である。もう一つはコンテンツのアップロードである。WikipediaのGLAM-Wikiツールを使うとコンテンツをWikimedia Commonsに簡単にアップロードできる(49)。メタデータはXMLで用意する必要がある。
6.6 DPLAとの協力
Europeanaとしばしば並び称されるアーカイブ・ネットワークであるDPLAとはさまざまな協力関係にある。特にメタデータ標準についてはEuropeanaが開発したメタデータ・スキーマ(Europeana Data Model: EDM)(50)をDPLAも利用することとし、これを基礎にしてDPLA Metadata Modelを開発した(51)。フェアウェイエン氏によれば、DPLAではEuropeanaとの同時検索のためのアプリをすでに開発し(52)、Europeanaでは、Europeana、DPLA、Digital New Zealand(ニュージーランド国立図書館の電子図書館ポータル)を横断検索できるツールを開発中である。このような横断検索の実現のためにもメタデータの標準化が必要である。
また著作権などの権利情報の記述についても協力している(後述)。さらにGoogleに対抗するためにVirtual Exhibitions(53)などに使用されるソフトの共同開発も行っている。フェアウェイエン氏によれば、これはSPOTLIGHTというオープンソースのツールを使っている。
7.コンテンツの権利情報
先に述べたように、Europeanaではコンテンツの再利用に力を入れている。再利用ができなければAPIを使ったアプリでコンテンツを表示・加工することも制限され、教育での利用などが広がらない。再利用のためには、正確な権利情報の記述が必要となる。現在Europeanaで再利用可能を明示するために使われているものは、Public Domain Mark(PDM)、Out of copyright – non commercial re-use(OOC-NC)、CC0やCC BYなど、合計9種類である(54)。
Europeanaは権利関係の記述についてもDPLAと協力して標準化をすすめている。その報告書(55)では、CCライセンスに加えて著作権が保護されているもの、パブリック・ドメインのものなど11種類の権利表示を提案している。
8.終わりに
EuropeanaはEUの強いイニシアチブと、各国の博物館・文書館・図書館の積極的な協力により影響力のあるアーカイブ・ネットワークに成長した。DPLAとの協力も進展し、合わせて西欧文化の壮大なパノラマを提供している。わが国で学ぶべきことは次のような取り組みであると考える。
1.政府と各機関の協力の仕組みを構築する
Europeanaは多数の国家の統合体であるEUの中で、政治的な思惑を超えて、国あるいは民間の機関との連携によって構築されたという点が画期的である。理念を先行させてエゴイズムを克服した点が成功の鍵であったと考えられる。
2.コンテンツの公開に対する文化機関の消極性・閉鎖性を打ち破る
この点はEuropeanaでも必ずしも成功しているとは言い難い。大美術館・博物館の多くは、コンテンツの独自公開、もしくはGoogle Art Projectなどに注力しており、Europeanaへの協力は十分とはいえない。コンテンツの再利用についてもまだまだ消極的である。このことはわが国でも同様である。
3.APIを中心としたシステムを中央でも地方でも構築する
わが国のシステム開発、特に図書館システムを含む公的システムにおいては、伝統的なパッケージ開発が中心である。EuropeanaはデータベースのまわりにAPI群を開発し、インタフェースはAPIを利用して自由に作成できる仕組みをとっており、外部のボランティアがどんどん便利なツールを開発できる。このようなオープンな仕組みがデジタル・アーカイブには好ましい。
4.メタデータのCC0による公開を促進する
CC0とは、著作者が著作権を放棄することを示す。Europeanaではコンテンツを記述する情報(キーワードなども含め)はCC0と規定しており、誰でもAPIなどで自由に利用できる。わが国ではまだそのコンセンサスがない。
5.若い人の力を活用する
EuropeanaではAPI開発を中心にさまざまなワークショップがある。各国の図書館や博物館、大学生などが参加して活発な活動をおこない、それがシステムに反映されている。企業に丸投げしたシステムと異なり、いわば「開発者の顔が見える」システムである。わが国でもCode4Libなどの活動があるので、これらの力を借りることが望ましい。
わが国では「産学官」の協力ということがしばしば語られる。Europeanaは、「国、図書館・博物館・文書館、ギーク(ITに関する高い知識と技術力を持つ人々)」の協力の結実ということができよう。わが国とは置かれた環境が異なるものの、学ぶところは多い。
(1) 文化庁. “文化関係資料のアーカイブに関する有識者会議 中間とりまとめ”. 2014-08-27.
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/bunka_archive/pdf/torimatome.pdf, (参照 2015-11-18).
(2) “国際シンポジウム「デジタル文化資源の情報基盤を目指して:Europeanaと国立国会図書館サーチ」”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/20150122sympo.html, (参照 2015-11-18).
(3) 福井健策. 誰が「知」を独占するのか−デジタルアーカイブ戦争. 集英社, 2015, p. 39-44.
時実象一. デジタル・アーカイブの最前線. 講談社, 2015, p. 163-164.
(4) 鈴木雄一, 玉井克哉, 村上愛. EU における電子図書館構想と著作権-孤児著作物問題の検討をかねて. 研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP). 2013, 2013-EIP-62(3), p. 1-8.
(5) ジャン・ノエル・ジャンヌネー. 佐々木勉訳・解題. Googleとの闘い 文化の多様性を守るために. 岩波書店, 2007, 166p.
(6) “Timeline of digitisation and online accessibility of cultural heritage”. Digital Agenda for Europe.
https://ec.europa.eu/digital-agenda/en/news/timelinedigitisation-and-online-accessibility-cultural-heritage, (accessed 2015-11-18).
(7) Ximin Mi. “Europeana- Europe’s largest digital library”. Glocal Notes. 2014-04-20.
https://publish.illinois.edu/iaslibrary/2014/04/20/europeanaeuropes-largest-digital-library/, (accessed 2015-11-18).
(8) “Now Online: “Europeana”, Europe’s Digital Library”. European Commission. 2008-11-20.
http://europa.eu/rapid/press-release_IP-08-1747_en.htm?locale=en, (accessed 2015-11-18).
(9) Wayback Machine.
https://archive.org/web/, (accessed 2015-11-04).
(10) The European Library. “Questions following Europeana Launch?”. Facebook. 2008-11-25.
https://m. facebook.com/notes/the-european-library/questions-following-europeana-launch/40381672623/, (accessed 2015-11-18).
(11) “Europeana v1.0 Project Summary”.
http://www.ait.co.at/images/Europeanav1.0%20Project%20Summary.pdf, (accessed 2015-11-18).
“New look Europeana launches”. Europeana Pro. 2011-10-14.
http://pro.europeana.eu/press/press-releases/new-lookeuropeana-launches, (accessed 2015-11-18).
(12) Europeana Pro. “How we work”.
http://pro.europeana.eu/about-us/how-we-work, (accessed 2015-11-18).
(13) Europeana Pro. “Foundation Governing Board”.
http://pro.europeana.eu/about-us/how-we-work/foundationgoverning-board, (accessed 2015-11-18).
(14) Europeana Pro. “Europeana Foundation Executive Committee”.
http://pro-beta.europeana.eu/page/executive-committee, (accessed 2015-11-18).
(15) Europeana Pro. “Annual Report for 2014”.
http://pro.europeana.eu/files/Europeana_Professional/Publications/New%20Frontiers%20Annual%20Report%202014.pdf, (accessed 2015-11-18).
(16) European Film Gateway.
http://www.europeanfilmgateway.eu/, (accessed 2015-11-18).
(17) Archives Portal Europe.
https://www.archivesportaleurope.net/, (accessed 2015-11-18).
(18) Europeana. “Providers”.
http://www.europeana.eu/portal/europeana-providers.html, (accessed 2015-11-18).
(19) Europeana Pro. “Annual Report for 2014”.
http://pro.europeana.eu/files/Europeana_Professional/Publications/New%20Frontiers%20Annual%20Report%202014.pdf, (accessed 2015-11-18).
(20) “D5.3.1 – Europeana OAI-PMH Infrastructure – Documentation and final prototype”. Europeana Connect. 2010-10-11.
http://www.europeanaconnect.eu/documents/01_Europeana_OAI_PMH_Infrastructure.pdf, (accessed 2015-11-18).
(21) 時実象一. 米国デジタル公共図書館 (Digital Public Library of America: DPLA). 図書館雑誌. 2013, 107(2), p. 118-120.
(22) 塩崎亮, 菊地祐子, 安藤大輝. 国立国会図書館サーチのメタデータ収録状況 − Europeana との比較調査. 情報管理. 2014, 57(9), p. 651-663.
http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.651, (参照 2015-11-18).
(23) Henning Scholz. “D1.1: Recommendations to Improve Aggregation Infrastructure”. Europeana Pro. 2015-03-03, p. 9.
http://pro.europeana.eu/files/Europeana_Professional/Projects/Project_list/Europeana_Version3/Deliverables/EV3%20D1_1%20Aggregation%20Infrastructure.pdf, (accessed 2015-11-18).
(24) Europeana. “Providers”.
http://www.europeana.eu/portal/europeana-providers.html, (accessed 2015-11-18).
(25) Henning Scholz. “D1.1: Recommendations to Improve Aggregation Infrastructure”. Europeana Pro. 2015-03-03, p. 10.
http://pro.europeana.eu/files/Europeana_Professional/Projects/Project_list/Europeana_Version3/Deliverables/EV3%20D1_1%20Aggregation%20Infrastructure.pdf, (accessed 2015-11-18).
(26) Europeana Statistics Dashboard. “Content”.
http://statistics.europeana.eu/content, (accessed 2015-11-18).
(27) Ibid.
(28) The European Library.
http://www.theeuropeanlibrary.org/, (accessed 2015-11-18).
(29) Valentine Charles, Nuno Freire, Antoine Isaac. “Links, languages and semantics: linked data approaches in The European Library and Europeana”. IFLA 2014 Lyon.
http://ifla2014-satdata.bnf.fr/pdf/iflalld2014_submission_Charles_Freire_Isaac.pdf, (accessed 2015-11-18).
(30) Nienke van Schaverbeke. “The European Library & Europeana”. EROMM. 2015-06-01.
http://www.eromm.org/_media/pdf:documents:eromm_sc_meeting_2015_the_european_library_and_europeana.pdf, (accessed 2015-11-18).
(31) Athena.
http://www.athenaeurope.org/, (accessed 2015-11-18).
(32) AthenaPlus.
http://www.athenaplus.eu/, (accessed 2015-11-18).
(33) Digitale Collectie.
http://digitalecollectie.nl/, (accessed 2015-11-18).
(34) María Luisa Martínez-Conde. “Hispana”.
https://confluence.ontotext.com/download/attachments/30836293/aggregators_forum_2012.ppt, (accessed 2015-11-18).
(35) Julia Welter. “Pan European Single Domain Aggregator – EFG and EFG1914”.
https://confluence.ontotext.com/download/attachments/30836293/EFG1914_AggregatorMeeting_TheHague_20120927_A.pdf, (accessed 2015-11-18).
(36) moteur Collections.
http://www.culture.fr/Ressources/Moteur-Collections, (accessed 2015-11-18).
(37) Europeana Pro. “Europeana Cloud”.
http://pro.europeana.eu/structure/europeana-cloud, (accessed 2015-11-18).
(38) Europeana Pro. “Strategic Plan 2011-2015”.
http://pro.europeana.eu/publication/strategic-plan-2011-2015, (accessed 2015-11-18).
(39) Europeana. “‘We transform the world with culture’: Europeana Strategy 2015-2020”.
http://strategy2020.europeana.eu/, (accessed 2015-11-18).
(40) “Europeana Business Plan 2014”. Europeana Pro.
http://pro.europeana.eu/files/Europeana_Professional/Publications/Europeana%20Business%20Plan%202014.pdf, (accessed 2015-11-13).
(41) Valentine Charles, Hugo Manguinhas, Antoine Isaac, Vladimir Alexiev. “Wikipedia, a target for Europeana’s semantic strategy”. SlideShare.
http://www.slideshare.net/valexiev1/wikidata-a-target-foreuropeanas-semantic-strategy-glamwiki-2015, (accessed 2015-06-17).
(42) Ibid.
(43) VIAF (Virtual International Authority File).
https://viaf.org/, (accessed 2015-11-18).
(44) GeoNames.
http://www.geonames.org/, (accessed 2015-11-18).
(45) Wikidata.
https://www.wikidata.org/, (accessed 2015-11-18).
(46) Europeana Labs.
http://labs.europeana.eu/, (accessed 2015-11-18).
(47) Europeana Blog. “New Virtual Exhibition: “To My Peoples!””. 2014-07-23.
http://blog.europeana.eu/2014/07/new-exhibition-to-mypeoples/, (accessed 2015-11-18).
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[受理:2015-11-18]
時実象一. 欧州の文化遺産を統合するEuropeana. カレントアウェアネス. 2015, (326), CA1863, p. 19-25.
http://current.ndl.go.jp/ca1863
DOI:
http://doi.org/10.11501/9589935
Tokizane Soichi.
Europeana – Integrating European Cultural Heritage.