図書館はいかにして精神疾患を持つ人々の避難場所になったか(記事紹介)

ウェブ日刊誌Slateと米・アリゾナ州立大学によるメンタルヘルスに関するウェブページ“Slate of Mind”に、2022年9月22日付で記事“How Libraries Became Refuges for People With Mental Illness”が掲載されました。

記事では、これまで図書館が精神疾患を持つ人々を迎え入れ、彼らの避難場所としてどのように機能してきたかについて、実例を挙げて述べられています。これまでの米国における精神疾患を巡る医療政策等に触れつつ、精神疾患を持つ人々にとって図書館が魅力的な場所であるとしています。そして、図書館が「社会インフラ」として、本や資料に加えて、居心地の良い空間と人間の交流を提供しているとした社会学者の言葉を紹介しています。また、状況に対応するため、現在多くの図書館がソーシャルワーカーや精神保健の専門家を雇用し、必要に応じて介入しているとしています。訓練を受けた図書館員がオピオイド過剰摂取者に拮抗薬を投与することで命を救った例もあるとしています。

他にも、学術図書館が自閉症スペクトラムの利用者にワークショップを提供したり、大学図書館が家族学習スペースを設置したり、また瞑想室を設置する図書館も増えてきているとしています。LGBTQの利用者に対しては、彼らがしばしば直面する差別やヘイトクライムを考慮した、図書館が実践できる取組を紹介しています。

How Libraries Became Refuges for People With Mental Illness(Slate, 2022/9/22)
https://slate.com/technology/2022/09/libraries-mental-health-support.html

参考:
米・シアトル公共図書館、職員がオピオイド拮抗薬を投与することを許可
Posted 2022年10月3日
https://current.ndl.go.jp/node/46926

図書館はホームレスの解決策の一部であるべきか(記事紹介)
Posted 2022年9月20日
https://current.ndl.go.jp/node/46853

米・ジョージア州の図書館とホームレスの人々のニーズ(文献紹介)
Posted 2022年8月10日
https://current.ndl.go.jp/node/46638

オーストラリア・メルボルン市、市立図書館でフルタイムのソーシャルワーカーを雇用
Posted 2019年9月10日
https://current.ndl.go.jp/node/38988

2018年の米国の“Library of the Year”が発表される:サンフランシスコ公共図書館
Posted 2018年6月6日
https://current.ndl.go.jp/node/36114

薬物使用の場として利用される米国の公共図書館(記事紹介)
Posted 2016年9月13日
https://current.ndl.go.jp/node/32529

米・オレゴン州マノトマ郡立図書館システム、ホームレスに対応するため、ソーシャルワーカーと契約(記事紹介)
Posted 2016年5月12日
https://current.ndl.go.jp/node/31576

E1016 – ホームレス支援のため図書館がソーシャルワーカーを雇用(米)
カレントアウェアネス-E
No.165 2010.02.03
http://current.ndl.go.jp/e1016

鈴木尊紘. 欧米の図書館における精神障害者向けサービス. カレントアウェアネス. 2022, (352), CA2023, p. 24-28.
https://current.ndl.go.jp/ca2023