2022年8月1日付で、米・Southeastern Library Association(SELA)の季刊誌“The Southeastern Librarian”の70巻2号に“Georgia’s Libraries and the Needs of Patrons Experiencing Homelessness: An Exploratory Study”が掲載されました。著者はAnne Blood氏です。
本論文では、COVID-19により図書館が閉館等の影響を受ける前の2020年春に実施された、米・ジョージア州の10の図書館におけるホームレスの人々へのサービスについてのサンプル調査が紹介されています。ジョージア州は近隣の州と比較するとホームレスの割合が高いとされ、調査は州内のアトランタのような大都市から小規模な農村地域に至る様々な規模の図書館がホームレスの人々とどのように関わっているのかを示すケーススタディとなっているとあります。
調査では、ホームレスの人々を支援するためのベストプラクティスに関する先行研究と、過去の試みを検証に基づき以下の設問が設定され、これに対する回答結果が検証されています。
・ホームレスの人々による図書館サービスの利用を難しくする障壁があるとすれば、それはどういったものか。
・図書館はすべての利用者が図書館施設を利用して「歓迎されている」と感じることができるように、サービスのベストプラクティスの基準に従っているか。
・図書館の立地とサービスの間に相関関係があるとすれば、それはどういったものか。
・ウェブサイトでどのようにホームレスの人々を支援し、また彼らのニーズについて一般の人々に周知しているか。
調査結果を踏まえて、ジョージア州の図書館には有望なプログラムと実践が多くあるものの、さらなる改善は可能だとし、様々な対応策などを提示しています。また、図書館がホームレスの人々に手を差し伸べたいと望むなら、両者の間の障壁は排除される必要があるとしています。そして、目標は、ホームレスの人々を単に許容するのではなく、彼らが「歓迎されている」と感じられるようにすることであるべきだと述べています。
Blood, Anne. Georgia’s Libraries and the Needs of Patrons Experiencing Homelessness: An Exploratory Study. The Southeastern Librarian. 2022, Vol. 70, Issue 2, p.20-36.
https://digitalcommons.kennesaw.edu/seln/vol70/iss2/4/
参考:
米・ラスベガス-クラーク郡図書館区、低所得者やホームレスへのスマートフォンの貸出プログラムを開始
Posted 2022年4月27日
https://current.ndl.go.jp/node/46055
ホームレスの人々へのサービス:新型コロナウイルスによる休館中にできること(米国)
Posted 2020年3月24日
https://current.ndl.go.jp/node/40582
米国の公共図書館はホームレス問題への取組みの最前線にある(記事紹介)
Posted 2014年7月18日
https://current.ndl.go.jp/node/26604
E1016 – ホームレス支援のため図書館がソーシャルワーカーを雇用(米)
カレントアウェアネス-E No.165 2010.02.03
https://current.ndl.go.jp/e1016
E1322 – ザグレブ市図書館のホームレス社会復帰支援(クロアチア)
カレントアウェアネス-E No.220 2012.08.09
https://current.ndl.go.jp/e1322
CA1809 – 動向レビュー:ホームレスを含むすべての人々の社会的包摂と公共図書館 / 松井祐次郎
カレントアウェアネス No.318 2013年12月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1809