建築に関する情報を発信する王立英国建築家協会(RIBA)のウェブサイト“RIBA Journal”の2020年7月29日付け記事で、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて図書館施設に求められる変化が紹介されています。筆者は建築デザインを行うIF_DOのディレクター兼共同設立者であるThomas Bryans氏です。
まず、これまでの図書館施設では、広いスペースを提供して多くの人々が集まれるようにすることが重視されていたとし、図書館等の公共スペースは新型コロナウイルスからの社会的回復の鍵となる一方、その特性には変化が求められていると指摘しています。
図書館施設の設計に関し、パンデミック後に浮上した最大の教訓の一つとして、図書館スペースにおける柔軟性向上の必要性を挙げています。図書館には公共スペースを最大化しバックヤードを最小化する傾向があるものの、今や利用された資料を一定期間隔離するためにバックヤードに十分なスペースが必要となっているとし、利用者エリア・スタッフエリア間の空間比率を柔軟に調整できること、導線を一方通行とするために棚のレイアウトを迅速に変更できることが不可欠となったとしています。
また、記事中では、IF_DOが図書館の支援を行う慈善団体である英国のLibraries Connected(以前の名称は英国図書館長協会)と協力し、安全な図書館再開館のための工夫を分かりやすく図で示したガイド“Covid-19 Safer Libraries guide”を作成したことも紹介しています。同ガイドはスペース・(設備等の)表面・換気の3点に焦点を当てており、これらの要素は将来の重要な考慮事項にもなると述べています。
Coping with Covid: How library design will need to change(RIBA Journal, 2020/7/29)
https://www.ribaj.com/intelligence/safer-libraries-if-do-report-covid-safer-spaces-if-do
Covid-19 Safer Libraries guide(Libraries Connected)
https://www.librariesconnected.org.uk/resource/covid-19-safer-libraries-guide
参考:
英・Libraries Connected、図書館サービスの再開のためのガイド“Library service recovery toolkit”を公開
Posted 2020年7月3日
https://current.ndl.go.jp/node/41408
日本図書館協会(JLA)資料保存委員会、「図書館資料の取り扱い(新型コロナウイルス感染防止対策)について-人と資料を守るために-」を公表
Posted 2020年7月8日
https://current.ndl.go.jp/node/41449
E2269 – 地域の拠点としての図書館施設:国立国会図書館の調査研究
カレントアウェアネス-E No.392 2020.06.11
https://current.ndl.go.jp/e2269
No.18 地域の拠点形成を意図した図書館の施設と機能
https://current.ndl.go.jp/report/no18