カレントアウェアネス
No.233 1999.01.20
CA1231
米国第105議会第2会期の状況
米国の第105議会第2会期で審議された図書館に関連する法案の成立状況等を紹介する。
WIPO(世界知的所有権機関)著作権条約施行法《成立》
データベース保護法案《廃案》
著作権保護期間延長法《成立》
以上3法(案)についてはCA1232を参照。
一括予算法案のフィルタリングソフト・ブロッキングソフト導入義務化条項《廃案》
政府の補助金やe-rate(料金割引によるインターネット接続等の利用支援制度)の適用対象となることの条件として,図書館や学校のコンピュータにフィルタリングソフト・ブロッキングソフトといった有害情報遮断ソフトの導入を義務づける条項は予算法案から削除された。同予算法案に関する両院協議会では,この条項に関する2つの修正を廃案にすることで合意していたが,議会上層部間の交渉で,予算法案に付加するべく修正のうちのひとつが再度本格的に審議された。しかし,図書館等の強力な反対運動によって修正は廃案となった。
チャイルドオンライン保護法《成立》
もとの法案は「未成年者に有害な」ものをネット上で未成年者に対して提供することを禁止する内容であったが,アメリカ市民自由連合(ACLU)等がこの法案に反対して訴訟を提起している。しかし,すかさず上院に同種の法案がインターネット課税猶予法の修正として提出されて圧倒的多数で可決され,一方下院はもとの法案を可決した。
インターネット課税猶予法《成立》
インターネットに対して州税または地方税を課すことを3年間猶予するという内容であるが,「未成年者に有害」条項によって,有料プロバイダーが有害な情報と知りながら未成年者の利用を可能な状態にしていた場合には,課税猶予の対象とはならない。
チャイルドオンラインプライバシー保護法《成立》
アメリカ図書館協会(ALA)等が表明していた,子どものインターネットの情報アクセス権を侵害するのではないかという懸念に配慮した見直しを加えて成立した。子ども向けの有料サイトに個人情報を入力する際,事前に親の同意が義務づけられる年齢を12歳以下とした。ただし,非営利団体はその規制対象外とされている。
政府刊行物改革法案《廃案》
議会が休会に入ったため廃案となってしまったが,アメリカ法律図書館協会(AALL),ALA等各種図書館協会の代表をメンバーとする政府情報政策に関する共同活動グループ(IAWG)が,議会側スタッフと合同で合衆国法典第44編の改正,連邦寄託図書館プログラムの強化及び市民の利用促進を目的とする当法案の実現に尽力した(CA1220参照)。
図書館・学校に対するe-rate制度
議会審議は順調であった。学校・図書館協会(Schools and Libraries Corporation:SLC 所定のe-rate適用申請書式を配布し申請内容の適否を判断することを目的に連邦通信委員会の指示により設立された非営利法人)が一刻も早く予算の実行に着手することが望まれている。連邦通信委員会の命令により,当制度適用の申請期間中に受け付けた中で電気通信及びインターネット接続料金の割引の申請をして承認された団体を最優先とし,内部接続料金の割引を希望する団体を次順位とした。
図書館に対する郵便料金
米国郵政審議会が,1999年1月10日から実施する郵便料金の改訂を発表し,定量3ポンド書籍小包の図書館優遇料金が現在の1.96ドルから2.03ドルへと3.6%値上げされることになった。郵政公社の申請では26.5%の値上げを要求していた。新しい郵便料金は官報に公示される。
眞子 ゆかり(まなごゆかり)
Ref: Summary of end of session developments 105th Congress, second session. ALAWASH 7 (139) 1998.11.9 [http://www.ala.org/washoff/alawon/index.html] (last access 1998.12.21)
日本経済新聞 1998.11.17
読売新聞 1998.10.21;1998.10.22