カレントアウェアネス
No.246 2000.02.20
CA1301
米国第106議会第1会期の状況
米国連邦議会の第106議会第1会期(1999年)で審議された図書館関連法案等について概要を紹介する。第1会期では図書館関連の歳出予算法案の審議に多くの時間が割かれ,他の大半の法案は第2会期(2000年)に持ち越された。
・データベース保護法案(審議中,委員会審査終了)
今会期には,付加価値の高いデータベースやオリジナリティの高いデータベースに対し,著作権法による保護に加えさらなる保護を目的として2法案が提出された。コーブル(Coble)下院議員提出のCollections of Information Antipiracy Actはデータベースの内容について著作権と同種の所有権を与える法案である。アメリカ図書館協会(ALA)は対案である,ブライリー(Bliley)下院議員提出のConsumer Investor Access to Information Actを支持している。
・公正利用ルール策定明確化法案(成立)
1998年デジタル新時代著作権法(DMCA)に基づく米国議会図書館(LC)の公正利用規則制定手続きを明確化する法案である(CA1232参照)。
・フィルタリングソフト・ブロッキングソフト義務化法案(審議中)
前議会に引き続き今議会でも,図書館や学校のコンピュータにフィルタリングソフト・ブロッキングソフト(有害情報遮断ソフト)搭載を義務化する法案が複数提出されている(CA1231参照)。上院ではマッケイン(McCain)議員提出のChildren's Internet Protection Actは委員会審査を終了し,共和党のハイテク・タスクフォースも次会期での通過に向け最優先法案と位置づけている。また上院ではサントラム(Santroum)議員によるNeighborhood Children's Internet Protection Actも提出されている。これはe-rate(割引料金によるインターネット接続)を利用している図書館や学校のみにブロッキングソフト等を義務化する内容で,マッケイン議員提出法案の合理的な代替案とみなされている。下院では,フランク(Frank)議員が同種の法案を提出しているが,委員会審査は行われていない。イスツゥック(Istook)下院議員提出の法案は廃案となった。
・議会調査局法案(提出済み)
LC議会調査局(CRS)作成のCRSレポートやイッシューブリーフ等,議員に広く公開されている情報をインターネットを通じて国民にも公開(ただし議員に公開してから30日以降40日以内)することを目的とする法案である。現在これらのCRS刊行物は一般国民には公開されておらず,議員を通じて入手するか,あるいは議会委員会等のホームページに一部掲載されているものを利用できるのみであった。様々な政策分野の問題を分かり易く簡潔にまとめたものが多いことから,研究者等を中心に国民からの需要も高い。
上下両院にほぼ同内容の法案が提出されたが,両法案とも委員会審査には入っていない。前議会にも同種の法案が提出されたが,公聴会が開催されただけで廃案となった。
・地域への危機管理情報公開法案(審議中)
ブライリー下院議員提出のChemical Safety Information and Site Security Actは,化学工場から環境保護庁が危機管理計画の一環として収集した情報を一般にも公開する法案である。ALAは全面的な情報公開を支持している。
・NTIS廃止法案(法案未提出)
本号CA1302参照。なお,商務省で起草された法案はいまだ議会に提出されていない。
廣瀬 淳子(ひろせじゅんこ)
Library of Congress. Thomas. Bill summary & status for 106th Congress. H.R. 654, S393.