カレントアウェアネス
No.246 2000.02.20
CA1302
NTIS閉鎖をめぐる動き
米国商務省(U.S. Department of Commerce)が昨年8月,国立技術情報局(National Technical Information Service: NTIS)の閉鎖プランとそのプランの承認を米国議会に求めることを発表して以来,NTISの今後に対する関心が高まっている。
筆者は,昨秋の米国出張の折NTISを訪問し,この問題について事情聴取を行った。この内容についても簡単に報告する。
米国商務省の発表
米国商務省の付属機関であるNTISは,首都ワシントンD.C.の郊外,ヴァージニア州スプリングフィールドにあり,米国政府研究開発リポートなどの連邦政府情報を,紙やマイクロフィッシュ,CD-ROMなどの形態で有料提供している。
しかし,商務省の発表によると,最近6年間でNTISの売上げは激減しており,また,1993会計年度以降は利益を上げていない。その背景には,電子技術の発達によりインターネットで無料で政府情報を入手できるようになったことが挙げられる。
このため商務省は,これらクリアリングハウスとしてのサービスはもはや必要ないとし,NTIS所管資料を米国議会図書館(LC)に移管することを提案した。
下院公聴会
これを受けて,昨年9月14日,米国議会下院で初めての公聴会が開かれた。下院科学委員会の技術小委員会(Subcommittee on Technology of the House Science Committee)で行われたこの公聴会では,商務副長官のロバート・マレット(Robert Mallett)氏や,NTIS諮問委員会委員長のケン・アレン(Ken Allen)氏など数人の証人がそれぞれの意見を述べた。
どの証人も,NTISを閉鎖することやその重要機能をどのようにして存続させるか,また,政府情報へのパブリックアクセスをどう保証するかなどの問題について,注意深く体系的に取り組む必要性に言及した。
NTIS訪問
筆者は,昨年10月初旬,灰色文献国際会議出席後,米国内のいくつかの機関を訪れたが,その一環として,10月7日にNTISにも訪問する機会を得た。閉鎖問題と,国立国会図書館でも数多く受入れているテクニカルリポートなどの販売の見通しを尋ねるのが主な目的であり,第一回目の公聴会から約3週間後のタイムリーな訪問となった。
マイクロフィッシュなどの製造工程の見学の後,担当者に話を伺ったが、閉鎖については,議会のヒアリングが続行しており未だ先が見えない状況だとしながらも,閉鎖の可能性については否定的であった。また,製品の販売に関しても,すぐに打ち切ることはないと言明していた。
上院公聴会
昨年10月21日に,今度は上院の科学技術宇宙小委員会(Subcommittee on Science, Technology and Space of the Senate Committee)で公聴会が開かれ,数人の証人が証言した。
その中でも,ロバート・マレット氏や政府出版局(Government Printing Office: GPO)のマイケル・ディマリオ(Michael DiMario)氏は,先の下院公聴会に引き続き意見を述べた。
また,これに合わせて,LCのビリントン(James H. Billington)館長はStatementを発表し,LCはNTISの提案について今後も国立公文書館やGPOなどの関連機関との協議を続けていくことを表明した。
この公聴会では,GPOが,その業務におけるNTISとの類似性から,NTISの役割を引き継ぐ考えを示したが,いずれにしても,この閉鎖問題は,今後も引き続き議論に付されることになった。
本田 千春(ほんだちはる)
Senate Conducts hearing on proposed closing of NTIS. Alawon 8 (108) 1999