CA1051 – LCの機構改革:政策決定過程の簡素化 / 千代由利

カレントアウェアネス
No.198 1996.02.20

 

CA1051

LCの機構改革−政策決定過程の簡素化−

ビリントン館長は,1987年の館長就任と同時に着手した一大機構改革を,多くの職員,図書館界が異議を唱える中,1989年に決行したが,6年を経た1995年9月15日,再び機構の見直しを行うと発表した。緊縮予算という当面の緊急課題に対処すると共に,図書館運営における管理者の責任体制の確立およびコレクションの安全確保が目的である。

機構の改編に加えて,政策決定過程の簡素化も彼の狙いである。米国議会図書館(LC)の決定は今まで,図書館管理チームに依存してきた。館長以下18名からなる管理チーム(注)全員の意見を反映させながら,全ての政策を決定するこれまでのやり方は,民主的ではあるが,往々にしてタイムリーな決定を妨げたり,使命や組織の優先順位を館全体というより個々のサービス単位の必要性に委ねてしまうことにもなった。こうした弊害を除去し,迅速な決定と結果に対する責任を明確にするために,今後は5人の上級管理者からなる執行委員会が決定権を持つ。メンバーおよびそれぞれの責任は次のとおりである。ハイラム・デービス副館長(図書館問題全般),スザン・ソーリン総務部長(管理業務全般及び国立電子図書館プログラム),ウィンストン・タブ新図書館サービス担当館長補佐(図書館サービス全般),ダニエル・P.マルホーラン議会調査局長(議会関係全般),ジョー・アン・ジェンキンズ多様性担当上級アドバイザー(雇用問題全般)。ただし,旧管理チームは,引続きデービス副館長の下で,重要な問題について意見交換を行うことになっている。

機構改革の第1段階として,11月に,別々のサービス部局だった,コレクション・サービス,利用者サービスおよび文化関係の3つの部門が,1つの新サービス部門『図書館サービス』に統合され,収集,整理,利用者サービスがひとつにまとめられる。現在コレクション・サービス担当館長補佐であるタブ氏がその責任者になる。

議会調査局,著作権局及び法律図書館は,そのまま存続する。

第1段階では,部局の統廃合と共に,現在空席のポストを埋めていくことになる。職員の異動については,十分な話合いが行われるというが,職員や組合からの反発も予想される。

一方,LCの全管理部門及び支援サービス部門の責任はまもなく,ソーリン総務部長に移行する。総務系統の業務責任を上級管理者一人に統合することによって,管理責任の改善を図ろうとするものである。機構改革の第2段階として,1996年春,管理支援部門が創設される予定である。

こうした機構改革および図書館業務の合理化への動きは,管理強化の必要性からのみならず,議会が立法府に対し経費削減策を打ち出した影響によるところが大きい。

ビリントン館長は,「益々厳しくなる財政状況に対処し,図書館サービスを維持していくためには,図書館運営の改善と合理化を図り,機構改革を通して効率化を達成しなければならない」とのべた。

9月6日に下院で承認され,現在上院の決定を待つ1996年度予算は,立法府において2,600人の常勤職員のポストが失われるという厳しいものである。図書館総予算としては,2,770万ドルの支出権限を含む3億5,239万9千ドルが見込まれ,図書館の一般支出は150万ドル減るにとどまる。このうち300万ドルは,国立電子図書館プログラム(CA1001)に,1,560万ドルは,人件費の増加分と物価の上昇分にあてられる。

ソーリン総務部長は,「1994年秋の予算削減以来,管理職者間で図書館運営をいかにより効率的に行うか,改修工事後のジェファーソン及びアダムス館の再開計画をどうするか議論してきた」と語り,デービス副館長と共に,機構改革案を館長に提示した。改革は,1995年11月に始まり,1996年春に完了の予定である。

千代 由利(ちよゆり)

(注) 旧(図書館)管理チームの構成
正メンバー)館長,副館長,総務部長,資料サービス担当館長補佐,議会調査局長,利用者サービス担当館長補佐,著作権局長,文化局長,人材開発局長,法律図書館長,/(準メンバー)アファマティブ・アクションおよび特別プログラム室長,情報技術サービス局長,コミュニケーション室長,議会連絡室長,顧問,監査役,総合サポート・サービス局長,財政サービス局長
Ref: Streamlining the decision-making process: the Librarian announces a staff reorganization. LC Inf Bull 54 (18) 411-412, 425, 1995. 10. 2
Annual Report of Librarian of Congress, 1994ほか