CA1060 – KORMARC 開発から普及へ(2) / 大和田孝志

カレントアウェアネス
No.200 1996.04.20

 

CA1060

KORMARC 開発から普及へ(2)

NCLの図書館ネットワーク支援事業

今日KORMARCは,フォーマットが単行本用,逐次刊行物用とも国家規格として制定・公布され(単行本用は1993年,逐次刊行物用は1994年),1991年以来遡及入力も行われており,1994年6月末現在約67万件のデータが蓄積された。さらにこれはデータ通信網を通じ,海外からのオンライン検索も可能となるなど,すでに開発の段階から全国的,国際的普及の段階を迎えているといえる。

今日韓国国立中央図書館(NCL)内では,CENTLAS(Central Library Automation System)というトータルシステムが稼働している。収集から全国書誌発行までの10個の業務をシステム化したものである。

また全国図書館情報ネットワークとしてKOLIS-NET(Korean Library Information Service Network 韓国名:図書館情報電算網)を開発中である。これは全国24個の地域センターと468の単位図書館をひとつのネットで結ぼうという計画で,1997年の完成をめざし1991年からはじめられたものである。(注1)

KORMARC普及のための活動として,KOLASの開発・頒布と全国書誌のCD-ROM化がある。KOLAS(Korean Library Automation System)は全国の図書館が自館の業務をトータルシステムとして処理できるようにした標準ソフトウェアの名称である。韓国の全国書誌『大韓民国出版物総目録』のCD-ROM版をダウンロードし,ローカル情報が入力できる。頒布を希望する図書館は行政電算網用コンピュータを確保したあと,申請するとPC用にはフロッピーディスクで,大型用には磁気テープで,無償で提供される。これによって,各図書館が独自にシステムを開発しデータを入力する経費が節約され,KORMARCフォーマットの標準化された形で書誌情報が蓄積されるため,ネットワークの形成に資するものと期待されている。1993年6月よりヴァージョンアップされたものが655館の図書館に提供されている。(注2)

このCD-ROM版は「韓国文献情報」の名で,1994年7月試作品として作成・頒布され,国立国会図書館にも国際交換資料として送付された。収録件数は,1945年から1994年7月末までにNCLが作成した一般図書と碩士・博士学位論文の書誌情報432,152件である。1995年に完成品がつくられ,毎年2回更新されるといわれているが未入手である。このCD-ROMを使うには,MS-DOS 3.3以上を搭載したパソコンが必要である。(注3)

現在,国立国会図書館ではKORMARCのデータを検索することは可能だがプリントアウトやダウンロードはできない。アジア資料課ではこれをレファレンスのみならず,整理作業にも応用すべく実験計画をたてている。

KORMARC普及の意義と今後の課題

KORMARCを広く普及させるためにはのりこえなければならない障壁と課題も多い。

韓国内では納本率のアップ,タイムラグの解消,『記述規則』の完成,「件名標目表」「著者名典拠録」「アクセスポイントのための規則」などの早急な整備・作成が課題となっている。(注4)

我が国では,ハングル資料の整理に関する基準や方法の確立。ほかに,標準文字セットの開発やハングルを扱えるシステムの開発など技術的な問題の解決である。

近年,公共図書館を中心にハングル資料を収集し提供する図書館が多くなっており,コンピュータ処理もふえてきている。しかし標準的な方法や文字セットがないため,各図書館ごとに既存のコンピュータシステムの中で,様々な工夫をこらして,ハングルを「翻訳」する,ローマ字で「翻字」するなどして処理されているのが実情である。PCによるシステムを開発している図書館も見られるようになった。つまり標準化されていない書誌情報が蓄積されはじめているという問題が生じているのである(注5)

KORMARCがわが国で普及することは大きな意義を持っている。そうした中で国立国会図書館の果たすべき役割も大きいものがあると思われる。

大和田 孝志(おおわだたかし)


1. Oh, Dong-geun (呉東根). Comparative analysis of MARC in Korea, Taiwan and Japan. Program 29(2) 123-134, 1995
Oh, Dong-geun. KORMARC: Its characteristics and influence on the library automation in Korea. Int Inf Libr Rev 24(4) 341-352, 1992
申恵淑ほか 林昌夫ほか訳 KORMARCの現況 東アジア学術情報交流の高度化に向けて 第1巻 学術情報センター 1990
国立中央図書館要覧 1994/95 ソウル 国立中央図書館 [1994] 38p(ハングル版,英語版)
Lee, Too Young (李斗栄). Korea national networking projects for education and research.東アジア学術情報交流の高度化に向けて 第2巻 学術情報センター 1991
2. 国立中央図書館編 図書館界1992.3・4,1993.3・4,1993.5・6(本文,タイトルともハングル)
3. 韓国文献情報 ソウル 国立中央図書館 1994 57p(本文,タイトルともハングル)(CD-ROMのマニュアル)
図書館界 1994.9
4. Oh, Dong-geun 前掲書
この事情については本稿(1)(CA1057)を参照されたい。
5. ハングル資料研究会「ハングル資料の収集・整理・奉仕に関する調査」結果概要 図書館雑誌 88(3) 173-176, 1994.3
ハングル資料調査報告 1993年 学術情報センター編 学術情報センター 1994 68p (UL633-E7)