CA1070 – 台湾国立中央図書館における機械化の進展 / 中川透

カレントアウェアネス
No.202 1996.06.20


CA1070

台湾国立中央図書館における機械化の進展

1994年10月1日,台湾国立中央図書館(以下NCL)の情報ネットワークシステムが活動開始し,そのセレモニーが行われた。これはNCL業務機械化のメルクマールとなるものである。そこで本稿ではNCLにおける機械化の流れと現状について,特に中国語資料データベースを中心に簡単に紹介したい。

NCLにおける本格的な業務機械化は,1980年の行政院による「図書館自動化作業計画」決定に始まる。まず機械化の前提となるChinese MARCや応用ソフトの開発が進められ,その後WANG-VS100をホストコンピュータとする中国語図書のオンライン目録システムが採用された。これによって1983年以後,各種目録の機械化が進められた。また1991年には「全国図書資訊網路系統」が成立し,1993年には,台湾学術網路(TANet)と接続したオンライン上での総合目録作業が開始された。この他にもフルテキスト影像(日本でいう「画像」)システムや各データベースのCD-ROM版の開発も進められた。これらの努力の結果,1994年6月末現在,7種のデータベースシステムが構築されている。

  1. 国立中央図書館館蔵目録査詢系統
    国内出版図書の目録データ約35万件を収録。CD-ROM版(中華民国出版図書目録光■)有り。[■は石偏に蝶の旁]
  2. 中華民国期刊論文索引系統
    国内出版の逐次刊行物に収録された論文索引データ約31万4千件を収録。CD-ROM版(中華民国期刊論文索引光■)有り。[■は石偏に蝶の旁]
  3. 中華民国政府公報索引系統
    中央及び地方政府が刊行した公報の法規・条約名など約7万8千件を収録。
  4. 当代文学史料影像全文系統
    現代の著名作家600人余りを収録し,その経歴・作品目録・評論目録・評論全文を収録。
  5. 中華民国政府出版品目録系統
    政府刊行物の目録データ約1万7千件を収録。
  6. 行政院所属各機関人員因公出国報告書光■影像系統[■は石偏に蝶の旁]
    出国報告約4万件の篇目を収録。
  7. 全国図書資訊網路系統
    TANetと接続し,現在23ヵ所の公私立大学及び公共図書館との総合目録データ約80万件 (刊行前に書誌情報を提供するCIPのデータも含む)を収録。その他,ISBNデータ約11万件も検索可能。

このような1980年以来の急速な機械化に伴い,NCLは多くの分立したシステムを抱えることとなり,機械化の全体像が把握し難くなってきた。そのため,1992年の第二期自動化計画においては,館内LANの設置・機械化された各システムを統合する新システムの開発・全国図書資訊網路系統の発展といった目標が掲げられた。これに基づき,1993年6月末,「国立中央図書館区域網路系統」が架設された。この結果,それまで分立したシステム下にあったどの端末からでもLANを経由することによって,各種データベースを利用し,さらにはTANetやInternetに接続することが可能となった。続いて1993年10月,ホストコンピュータとしてNCR3550を,図書館自動化システムとしてURICAをそれぞれ購入した。この新システムの下では,情報通信能力のアップとE-mailの開設の他,収集・目録・貸出・館蔵目録案内(OPAC)の各システムの統一管理や,データのダウンロード・バーコードの利用・ローマ字ピンインの自動付与なども可能となった。その後,旧式化したWANGシステムをこの新システムに変換する作業が進められている。

これらの作業を経て,1994年10月1日,LAN上におけるデータベースの提供が始まり,「中央図書館資訊網路系統」が成立した。この結果,合計170万件近くの中国語目録データが無料で提供されることとなった。来館利用者は,閲覧室の情報検索コーナーに置かれた22台の端末により自由にデータが検索できる。一方,非来館利用者は,電話回線やTANet・Internetを通して本ネットワークに入り,各データベースを自由に検索し,また逆に本ネットワーク経由でTANetやInternetに入ることもできる。

これまで述べてきたように,NCLの機械化は,10年余りの間にデータベースの作成から館内LANの架設・情報ネットワークの形成にまで発展してきた。これに伴ってNCLの役割も変化しつつある。NCLの曽済群館長はセレモニーの中で,図書館が単に本を貸し借りするだけの場所ではなく重要な情報ステーションであることを指摘し,情報界との協力を深めて,図書館の情報ネットワークを「情報スーパーハイウェイ」を走る「知識の輸送車」とすべきことをアピールしている。

中川 透(なかがわとおる)

Ref:宋建成 中央図書館資訊網路系統■用 国立中央図書館館訊 16(4) 1-3, 1994欧陽崇栄 漫談中央図書館第二期自動化 国立中央図書館館訊 17(1) 9-11, 1995 [■は啓の口が小さく、ボクニョウが大きい字]
曽済群 建構「資訊高速公路」(Information Superhighway)図書館応扮演的角色 国立中央図書館館訊 16(3) 1-7, 1995