カレントアウェアネス
No.208 1996.12.20
CA1100
BNBMARCヒット率調査
−イギリスにおけるMARC サービスのモニターと改善−
MARCの役割には大きく分けて,
1) レファレンス・ソース2) コピー・カタロギング・ソース
の2点があるが,後者の評価指標はヒット率として数値化されている。英国図書館(BL)は1980年以来全国的なBNBMARCヒット率を継続してモニターしている(CA270参照)。
ヒット率は,イギリスの図書館名鑑から選択された12館(大学,公共各6館)が毎月目録作業時点(1988年からは発注時点も)で無作為抽出した10タイトルのデータシートをバース大学のUKOLN(UK Office for Library and Information Networking)に送付し,そこでBNBMARCを検索して測定される。対象資料は1974年以降刊行の国内出版物である。参加館は6カ月で別の図書館に入れ替わる。1995年までに276館が参加した。
目録作業時点でのヒット率の推移は以下のとおりである。カッコ内はCIPレコード(出版前に出版社が提供したデータで作成した簡略な書誌レコード)のヒット率。
1981年1月 | 63(21)% |
1988年1月 | 62(23)% |
1989年1月 | 74(18)% |
1990年1月 | 79(18)% |
1991年1月 | 75(18)% |
1992年1月 | 80(19)% |
1993年1月 | 80(20)% |
1994年1月 | 83(25)% |
1995年1月 | 85(14)% |
1996年1月 | 81(14)% |
1996年9月 | 84(19)% |
1989年からヒット率が向上しているのは1988年に始まったBLのCurrency with Coverageプログラムによるものである。これは,BNBMARCレコードの約半数をしめる近代英文学,児童書,DDC2類(宗教),5類(科学),6類(技術),32頁未満の資料のレコードをAACR2の第1レベルに簡略化して,ヒット率85%を目標にMARCのタイム・ラグを改善しようとするものであった。1995年には目標を一応達成した。なおその後,利用館の要望により,副書名,出版地,件名標目(LCSH)も入力されるようになった。
CIPレコードのヒット率は20%前後であり,最近は14%に低下している。しかしBLは,CIPで作成したレコードのうち出版後に大幅な訂正が必要ないものについては,納本後に訂正・付加を加えて「前CIPレコード」として使用しており,こうした「前CIPレコード」のヒット率は,
1983年12月 | 14% |
1986年12月 | 29% |
1990年12月 | 45% |
1995年1月 | 49% |
と年々増大している。このことはCIPが納本後の完全レコード作成タイム・ラグ短縮にも寄与していることを示している。なお,BLは1990年からCIPレコード作成を外注化している。
CIPの有無やMARCの利用状況など国情が異なるので,BLの個々の施策を模しても意味はない。重要なことは,国立図書館がMARCサービスにも明確かつ客観的な評価指標を導入してモニターし,サービスの水準を維持するだけでなく,改善に役立てていることである。また,指標がコピー・カタロギングの対象とならない資料も含むBL側の「作業期間」ではなく,あくまで利用者側に立った「ヒット率」である点にも留意すべきであろう。
こうした姿勢は,定評あるBLのドキュメント・サプライ・サービスが「充足率」や「速度」を指標として高水準のサービスを行ってきたこと,またわが国における中小リポート以後の公共図書館が「人口1人あたりの貸出冊数」を指標として発展してきたことと共通するものがある。サービスを真に改善するためには,現行のサービス水準とその決定要因,さらに改善策を施した後の達成度を把握するための客観的評価指標とその継続的モニターが不可欠である。
福島 寿男(ふくしまひさお)
Ref: Chapman, Ann. National library bibliographic record availability: a longterm survey. Libr Resour Tech Serv 39(4) 345-357, 1995
Chapman, Ann. Why MARC surveys are still a hot bibliographic currency. Libr Assoc Rec 94(4) 248-254, 1992
最新のBNBMARCヒット率調査結果はUKOLNのホームページで閲覧できる。http://ukoln.bath.ac.uk/ukoln/bnbmarc/summary.html