カレントアウェアネス
No.140 1991.04.20
CA733
図書館員はよい職業?
−米国の図書館員の賃金と就職事情−
アメリカの図書館員の年俸は,1982年から88年まで年平均4.5%の堅実な上昇ぶりを示してきたが,89年の上昇率も引き続き高いことがALAの調査でわかった。
調査の対象になったフルタイムの専門職図書館員の年俸は,職種によって9〜15%もアップした。これは一般勤労者の賃金の上昇率及び消費者物価上昇率をはるかに上回るものである。
表に見るように,館種で比較すると大規模公共図書館(人口10万人以上)あるいは総合大学の図書館員の年俸が高い。また単科大学では4年制より2年制の大学図書館の職員のほうが高給との結果が出ている。もっとも上昇率の高かった職種は児童・ヤングアダルトサービス部門で,前年に比べて15%のアップ。またアメリカ国内でも地域差があり,西部および南西部の図書館員の年俸が高く,最低は南東部との結果が出ている。
ALAでは毎年,ALA認定図書館学校修了者の就職状況と初任給の調査を行なっている。89年度は53の認定校のうち43校が調査に協力し,3,356名(女2,374名,男701名,性別不詳281名)の修了者についての調査結果が出た。その中で図書館および関連する業種に就職したことが明らかな者は約65%の2,187名(女1,698名,男476名,性別不詳13名),うち常勤の専門職に就いた者が1,894名(女1,484名,男400名,性別不詳10名)で,全体の約56%であった。
求人件数は大学により300〜6,100件で,88年度と同じく需要が供給を上回る売り手市場であった。もっとも需要が高いのがカタロガーで,児童部門の図書館員も供給不足である。館種では,公共図書館に就職した者が587名でもっとも多く,大学図書館,専門図書館,学校図書館,その他の順になっている。
初任給は,フルタイムの専門職で平均年俸24,581ドル。88年度と比較して4.6%増である。調査では勤務時間などの条件は度外視されており,前歴のある者がかなりの部分を占めるためもあってか,最高100,400ドルから最低9,360ドルまでと個人差が大きい。
また女性の平均初任給は24,539ドル,男性は24,669ドルで男性のほうがやや高い。しかし,調査対象の43校のうち26校で女性の平均年俸のほうが高いとの結果も出ている。なお前歴のある者の平均年俸は26,105ドル,ない者は22,823ドルであった。認定校の修了者が増加を続け,賃金も安定した伸びを示す中で,新卒の専門職に対する求人数の方が求職数を上回る状態が続いていると多くの大学の就職担当者は報告している。
中井万知子(なかいまちこ)
Ref: Selsky, D. Library market outlook. Libr J 115 (17) 40, 1990. 10. 15
Learmont, C. et al. Placements & salaries 1989. Libr J 115 (17) 46-52, 1990
中規模公共図書館 | 大規模公共図書館 | 2年制単科大学図書館 | 4年制単科大学図書館 | 総合大学図書館 | |
館 長 | $36,077 | $54,453 | $41,846 | $36,172 | $51,678 |
副 館 長 | 29,886 | 43,847 | 36,091 | 28,103 | 44,111 |
部長・分館長 | 26,877 | 32,683 | 37,030 | 27,846 | 36,133 |
収集部門 | 25,349 | 31,358 | 36,903 | 31,980 | 34,886 |
整理部門 | 23,933 | 27,176 | 35,544 | 25,117 | 29,955 |
レファレンス部門 | 24,237 | 27,353 | 37,692 | 25,182 | 30,162 |
児童・ヤングアダルト部門 | 23,347 | 26,793 | 26,008 | − | − |