カレントアウェアネス
No.140 1991.04.20
CA734
CD-ROMにネットワーク化の波
CD-ROMデータベースは,そのソフトの他にCD-ROMドライブを購入すれば,手許のパソコンで手軽に大量の情報を検索することができるということで,製品,利用共に増えてきている。ただ,利用が多い場合でも一枚に対して一台のパソコンからのアクセスしかできないのが欠点であった。
そこで近年CD-ROMをネットワーク環境で利用する動きが出てきた。適切なネットワークを組めば,複数のワークステーションから一つのCD-ROMに同時にアクセスすることが可能で,しかも複数のCD-ROMドライブが接続できる。レスポンスタイムの問題も,キャッシュメモリの使用等によって解決できる。
CD-ROMネットワークを構築するためには,複数のワークステーションとそれらの結線を中心としたLAN(ローカルエリアネットワーク)のハードウェア,これを動かすためのLANソフ卜がまず必要であるが,LANソフトの中にCD-ROMをサポートするものはほとんどないので,多くの場合,さらにCD-ROMネットワークソフトが必要となる。そしてこの上に各CD-ROM毎のアプリケーションソフトを走らせることになる。
CD-ROMネットワークを導入する利点としては次のようなことが指摘できる。
- ワークステーション毎にCD-ROMを用意する必要がなく,複数のワークステーションから同時に一つのものにアクセスできるということで,コストダウンになる。
- CD-ROMを利用者から離れたところで管理できるので,安全性が高まる。
- ネットワークの製品によるが,14台とか21台とかいった単位でドライブを内蔵できるので,この範囲内の枚数ならCD-ROMを入れっ放しにできる。
一方,ネットワーク化には以下のような難点もある。
- LAN環境の複雑さ。利用したいCD-ROM製品の検索ソフトの特性を考え,これに合ったネットワークソフト,LANソフト,LANハードを選ばなければならない。この時,各ワークステーションのRAM(ランダムアクセスメモリ)の容量が充分かどうかを検討することも必要である。
- 導入費用の問題。多くの場合,検索用の他に,ネットワークファイルサーバー,CD-ROMサーバーとして2台のワークステーションが必要になる。各種ソフトの費用も大きい。
- CD-ROMの価格が,単一使用の場合より高くなることが多い。単一の場合と同価格のもの,2倍以上になるもの,接続するワークステーションの数によって評価されるものなどまちまちであるが,平均すると1.5〜2倍程度で,かなり高い。
ところで,ネットワーク化においては,単に複数のワークステーションの間でのCD-ROMデータの共有が可能というだけでは不充分である。さらに次のような機能が望まれる。
- 利用したいCD-ROMを選択するメニュー機能。DOS(コンピュータを動かす基本ソフト)のプロンプト(ユーザに入力を促す表示)に遭遇せずに選べることが望ましい。
- CD-ROM毎の利用頻度等の統計をとる機能。
- CD-ROM毎の同時利用者数の上限を設定する機能。
- CD-ROM毎のセッションタイムを限定する機能。
- 各CD-ROMに共通の終了(出口)キーを設定する機能。
- 電話回線によるアクセスをサポートする機能。
この他にも,モニタリングの機能,アプリケーションソフトを各ワークステーションのメモリに格納するのを簡単化する機能など幾つか考えられる。実は最近,これらの機能を具えたネットワークソフトが登場してきた。導入に当っては考慮に入れる必要がある。
国内で実際にネットワーク化に取り組んでいるところとして,東京工業大学附属図書館がある。文部省から電子図書館構想の実験館に指定されたことによるものであるが,学内LANへの接続を目標としつつ,当面は内線電話回線による接続を計画している。現在のところ,館内で3台の検索用ワークステーションをつないで利用に供している。利用されているCD-ROMは外国のものだけで,残念ながら国産のものはない。規格や日本語処理の複雑さの関係で,利用可能かどうか確認できているものはほとんどないようである。
CD-ROMネットワークの構築は簡単なことではない。しかし理詰でハードや各種ソフトの選定に当るならば,大きな成果が得られるであろう。実際(米国での話であるが)導入した図書館は増えており,導入した人々は一様に,そのメリットは努力に値すると報告している。
小林一春(こばやしかずはる)
Ref: Flanders, Bruce L. Spinning the hits : CD-ROM networks in libraries. American libraries 21 (11) 1032-1033, 1990
Pesch, Oliver. CD-RON network software. CD-ROM Librarian 5 (11) 9-16, 1990
大原寿人 CDサーバーの導入(東京工業大学附属図書館内部資料)