カレントアウェアネス
No.135 1990.11.20
CA701
図書館におけるCD-ROMの5年間
CD-ROMは1970年代におけるオンラインの出現以後,図書館における最も重要な技術革新の一つである。その理由としては,早く,効果的な検索が可能で,アクセスタイムが満足できるものである,といったことの他に,利用者にとっては使い易いことがあげられる。ヴァンダービルト大学で約600人の利用者を対象に調査したところ,非常に使い易い,あるいは使い易いが75%で,使いにくいと回答したものは0.5%であった。もう一つの支持される理由は,記録可能なデータの量で,600メガバイトもある。これは,1,200ボーの通信回線で46日かかる伝送量である。また,オペレータが入力するとき,毎日9時から5時半まで作業すると9年間の作業量に相当する。
<米国の現状>
CD-ROM市場は拡大を続けている。例えばThe CD-ROM Directory 1990を見るとCD-ROMのタイトル数と主題範囲の増加が目立っている。また,CD-ROMについて書いた文献も増加し,図書館員もその技術を認めている。1989年にCD-ROMドライブは20万台据えられていた。価格は年あたり15%下がっている。このCD-ROMの購入者の80%は大学図書館のようであった。
<ヨーロッパの現状>
米国より遅れているようである。その理由は,CD-ROMが高価格であることや,新技術への対応が伝統的に遅いことなどである。にもかかわらず,CD-ROM Directions最新号にしたがえば,月間約500台のドライブが英国で販売されている。1990年中に1600万ポンドが英国で販売されると予想している。英国のCD-ROM利用者は,50%以上が大学図書館で,公共図書館は2%以下である。MEDLINEはよく使われ,医学図書館がCD-ROMの利用をリードしている。
<図書館員にたいするインパクト>
新技術に興味を示し,試している図書館は多い。しかし,大学,企業などに比べ,公共図書館は保守的である。
<CD-ROMの利用法>
(1)オンラインの代替として
オンラインを最新情報の検索に専ら用い,CD-ROMを遡及検索に利用する,という使い方がある。オハイオ州立大学の調査では,CD-ROM導入により1985年初頭に月あたり230件あったオンライン検索が,1988年中頃には140件に減少した。その中で,10分以上かかるオンライン検索は急速にのびている。リバプール大学でもオンライン検索は40%も下降した。
利用者は印刷体索引誌よりも対応するCD-ROMの方を好む。販売面から見ると,CD-ROMはオンラインよりも印刷体抄録誌に影響するであろう。多くの図書館員は印刷体よりも対応するCD-ROMに利用者を案内する傾向がある。
(2)目録その他の利用
CD-ROMデータベースから,データの付加,削除を行ない,自身の目録に取り込んでいる。またオンライン閲覧目録(OPAC)としても利用されている。その他図書館間相互貸借,本の発注などでの利用もある。
<ネットワーク化と多重アクセス>
1台のパソコンでしか使えなかったCD-ROMの新しい発展形態として,CD-ROMのネットワーク化と多重アクセスの実現がある。1985年に図書館や研究機関にCD-ROMが導入された時点では,多重アクセスは考えられなかった。ネットワークでCD-ROMを利用すると応答時間に大きな影響があると信じられていた。しかし,今日では,応答時間が変らないとするネットワーク・システムが登場してきている。商業的に利用されているパッケージとして,OPTI-NET,CD Net,Multiplatterなどがある。これらは,複数のディスクに多数の利用者が同時にアクセスできる。Multiplatterはボストン大学のO'Neiell図書館に導入されている。通常の検索はもとより,使ったディスクの時間や利用者数,検索の平均時間などの統計データも得られる。
山口義一(やまぐちぎいち)
Ref: Thomas, Elen, et al. Five years of CD-ROM in libraries. Advanced Information Report. p. 1-4, 1990. 7.
SilverPlatter's CD-ROM network debuts at Boston College. The Electronic Library. 7 (4) 254, 1989.
Optinet 1. 10 supports lOO users. The Electronic Library 7 (4) 256, 1989.
Rosen, L. CD-Networks and CD-ROM: Distributing data on disk. Online 14 (4) 102-105, 1990.