CA1057 – KORMARC 開発から普及へ(1) / 大和田孝志

カレントアウェアネス
No.199 1996.03.20


CA1057

KORMARC 開発から普及へ(1)

はじめに

韓国国立中央図書館(以下NCL)は「国家代表図書館」(図書館及び読書振興法第15条)として,業務の電算化を通じ全国図書館ネットワークの形成に責任を負っている。その要となるのがKORMARC(韓国名:韓国文献自動化目録法)の開発である。

この小稿は,呉東根(注1),申惠淑(注2),玄圭燮(注3),松山巌(注4)諸氏の研究に拠って,ハングル資料の書誌的特徴を反映したフォーマットの構造,KORMARCの普及のためのNCLの活動と今後の課題について紹介するものである。

KORMARCフォーマット(単行本用)の構造

KORMARCフォーマット(韓国名:韓国文献自動化目録形式)は1993年12月韓国国家標準規格(KSC 5687)として制定され,工業振興庁より公布された(注5)

基本構造はISO-2709(書誌情報交換用磁気テープフォーマット)に則り,リーダー(Leader),レコードディレクトリー(Record directory),制御フィールド(Control field),可変長フィールド(Variable field)の4つの部分から成り立っている。

リーダーはレコードの長さ,状態,書誌レベルなどを表したもので24桁で構成された固定長フィールド,ディレクトリーは制御フィールド以下のデータをタグによって検索できるようにした要素で12桁で構成,制御フィールドはデータとフィールド終端記号(Field terminator)から成る固定長フィールドで,タグ001,005〜008が付与されている。可変長フィールドは3桁のタグ,数字2桁の指示子(Indicator)の次に文字コード2桁$a〜zの識別子(Identifier)をともなった数個のサブフィールドが続く。

内部構造ではタグにはLC/MARCとほぼ同じ番号を用いているが,サブフィールドの識別子には,UK/MARCやUNIMARCのそれを適宜とり入れるなど,ハングル資料の書誌的特徴を考慮したものとなっている。因みにJapan/MARC,Chinese/MARC(台湾),China/MARC(中国)のタグの番号はUNIMARCに拠っている。

またLCコントロールNo.や請求記号に対するフィールドを設けるなど,LC/MARCやUK/MARCなどとは「何ら障害なしに互換が可能」(玄圭燮)(注3)なことをねらっている。参考までにタグの意味を次の表に示す。

表 KORMARCのタグ

00X
制御フィールド
1XX
基本標目
20X〜24X
書名および書名関連事項
250〜29X
版次,発行等の事項
3XX
形態事項
4XX
シリーズ事項
5XX
注記事項
6XX
主題名副出標目
7XX
主題名,シリーズ名以外の副出標目
8XX
シリーズ副出標目など
9XX
ローカルフィールド

ここで,ハングル資料の書誌的特徴をどう反映しているか少し例をあげてみたい。

[記述]

記述で一番悩むのは,本書名の前に記載されている「……のための」などといった語句の扱いである。『日本目録規則(NCR)新版予備版』では本書名に含めているものである。NCRに相当するのは,本来は『韓国目録規則(KCR)』であるが,KORMARCではこれを採用せず独自に,『韓国文献自動化目録法記述規則 単行本用 予備ノート補完版(以下「記述規則」)』(1985年 NCL編・刊)(注6)を定めている。これによると,その語句が10字未満の場合を「冠称」とし,丸がっこに入れて本書名の前に記述。10字以上の場合を「冠題」として注記に落とす。KORMARCではそれぞれフィールド245(書名著者事項)とフィールド500(一般注記)に入れる。アクセスポイントにする,しないを指示子で指示している。ともにISBDに拠りながらも,『KCR 3.1版』(1983年 韓国図書館協会編・刊)(注7)とは処理の仕方が異なっている。

また英文書名などに対しては,「対等書名」としてフィールド245内にサブフィールド($x)を設けている。

NCR 87年版の「書名関連情報」に相当するものは「副書名」と「雑題」に分けて,フィールド245内にそれぞれ$a,$cのもとに入れる。

線装本(韓国では「東装本」)はフィールド300(形態事項)に$dのもとに入れる。

[アクセスポイント]

基本標目として採用された個人名はフィールド100(基本標目−個人名)へ。単一姓,複合姓,家族名,号などを指示子で区別。歴朝名,世系(第何代王など)などをサブフィールドに入れる。姓と名を区切らない。表記はハングルで行う。

外国人名の表記は『記述規則』巻末付録「外国人名表記の原則」に則って行われる。日本人名については,漢字表記の場合,漢字の韓国語読みをハングルで表記して基本標目にしている。最近では日本語読みを基本標目とし,その場合,韓国語読みを,ハングル表記でフィールド700に副出するという指摘もある(注4)

ところで,KORMARCは書名の読みのフィールドが与えられていない。韓国の漢字は例外もあるが日本語と異なり読み方は一通りである。KSコードでは同じ漢字でも読み方が異なるときは,異なるコードを割り当てているため,漢字コードが読みまで表しているからである。韓国の漢字コードについては李春澤の研究を参照されたい(注8)。(次号へ続く)

大和田 孝志(おおわだたかし)


1. Oh, Dong-Geun. KORMARC: Its characteristics and influence on the library automation in Korea. Int Inf Libr Rev 24 (4), 341-352, 1992
Oh, Dong-Geun. Comparative analysis of MARC in Korea, Taiwan and Japan. Program 29 (2) 123-134, 1995
2. 申恵淑ほか 林昌夫ほか訳 KORMARCの現況 [学術情報センター]1990 23p (学術情報センター共同研究「日本における国際書誌調整および実行可能性の調査分析」)(Typescript)
3. 玄圭燮 韓国文献自動化目録法(KORMARC)の特徴とその動向 現代の図書館 25(3)147-153,1987
4. 松山巌ほか KORMARCの分析[199?]24枚(Typescript)
5. 韓国文献自動化目録形式 単行本用 1993 国立中央図書館編刊 264p(UL31-K4)(書名,本文ともハングル)
6. 韓国文献自動化目録法記述規則日本語訳(単行本用)予備ノート補完版 国立中央図書館電算室編 学術情報センター[編訳] 学術情報センター 1992 191p(UL633-E7)
7. 韓国目録規則3.1版日本語訳 未定稿 韓国図書館協会目録委員会[編] 学術情報センター[編訳] 学術情報センター 1990 190p(UL633-E6)
8. 李春澤 韓国標準規格と日本工業規格の漢字について 学術情報センター紀要 (3)21-47,1990