カレントアウェアネス-E
No.158 2009.09.16
E973
Googleブックス和解案への意見書が相次ぐ
Googleブックスをめぐる訴訟の和解案(E857,E906,E918参照)については,2009年10月7日にニューヨーク南部地区連邦地裁でその成否が判断されるが,それを前に,和解案からの離脱表明が2009年9月4日に,異議申立て・意見書の提出が同9月8日に締め切られた。意見書提出の動向を中心に,関連する情報をまとめる。
8月27日には,Amazon.com社,Yahoo!社,Microsoft社等の企業や,独自のデジタル化事業を手がけている非営利団体Internet Archive,ニューヨーク図書館協会等が参加する“Open Book Alliance”(OBA)という団体が結成された。OBAは,書籍のデジタル化は開かれた競争的な環境で行われるべきだとし,和解案はデジタル化書籍へのアクセス・流通・価格設定を独占するものだと批判している。OBAとしての意見書は,Microsoft社の独占禁止法問題にも関わった弁護士によりまとめられている。
欧州からは,ドイツとフランスが国として意見書を提出している。ドイツ政府の意見書は,和解案の問題点として,ドイツ及び欧州連合(EU)の著作者・出版社・デジタル図書館に悪影響を与えること,私的な交渉に基づくものであること,ドイツの国内法に反すること,影響は米国内にとどまらず著作権についての国際的な基準等にも影響を与えうること等を挙げている。フランス政府の意見書も同様の内容であるが,「文化の多様性」への影響にも言及したものとなっている。
また,この問題をめぐる会議・公聴会も開催されている。EUの執行機関である欧州委員会は,書籍のデジタル化についての会議を9月7日・8日に開催し,Google社からのヒアリング等が行われた。国際図書館連盟(IFLA)もこの会議において和解案に対する見解を表明し,米国と米国外でのアクセスの格差の解消,価格設定への図書館の関与等の課題を指摘している。米国では,9月10日に連邦議会下院の司法委員会で公聴会が開催され,和解案当事者のGoogle社,著作者団体を始め,視覚障害者団体,消費者団体等の関係団体からの出席者8名が意見を述べた。賛否それぞれの立場からの証言が行われたが,特に注目されたのは,米国議会図書館の著作権局長による証言で,デジタル化のメリットは認めつつも,議会による法制化ではない方法で著作権制度に大きな影響を与えることを問題視し,反対姿勢を示した。
日本からも日本ペンクラブのメンバー等から異議申立てが提出されるなど,和解案は国際的に大きな関心を集めている。提出された意見書では反対意見が多いが,賛成意見も,アクセス拡大を評価する障害者団体や教育関連機関等から表明されている。また,独占禁止法の観点から調査をしていた米国司法省が9月18日までに見解を示すとされており,10月7日の成否決定まで,引き続き目が離せない展開となりそうである。
Ref:
http://www.openbookalliance.org/mission/
http://thepublicindex.org/docs/letters/germany.pdf
http://thepublicindex.org/docs/letters/french_republic.pdf
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/09/376&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en
http://www.ifla.org/en/news/ifla-statement-to-the-european-commission
http://judiciary.house.gov/hearings/hear_090910.html
http://www.japanpen.or.jp/news/guide/post_197.html
http://thepublicindex.org/documents/responses
https://sites.google.com/a/pressatgoogle.com/googlebookssettlement/
E857
E906
E918