E933 – ミシガン大,Googleとの資料デジタル化に関する協力体制を拡大

カレントアウェアネス-E

No.151 2009.06.10

 

 E933

ミシガン大,Googleとの資料デジタル化に関する協力体制を拡大

 

 ミシガン大学とGoogle社は,図書館の所蔵資料のデジタル化を目的とした協力体制(E403E543参照)を拡大するために契約を2009年5月19日付けで修正することで合意した。契約修正は,Googleブック検索をめぐるGoogle社と米国の著作者団体・出版社との和解案がまとまったこと(E857E918参照)を受けたものである。ミシガン大学は「今回の契約修正は,所蔵する印刷物資料への広範なパブリックアクセスというミシガン大学のビジョンの実現を保証する,重要なステップとなる」としている。

 契約の修正事項には主に下記のようなことが含まれる。

  • ミシガン大学の所蔵資料へのパブリックアクセスの拡大
     これまではパブリックドメイン(著作権存続期間が終了した図書)のデジタル複製物のみが提供の対象であったが,裁判所が和解案を承認するとともに,それ以外の書籍にまで対象を拡大する。全米の図書館利用者は,Google社がスキャンしたミシガン大学の所蔵資料に,機関単位の定期購読形式などでアクセスすることが可能になる。
  • 他図書館との資料共有サービスのサポート
     Google社がスキャンし,ミシガン大学に渡されたデジタルデータを,“HathiTrust”(カリフォルニア大学やミシガン大学などによる,デジタルコレクションの共同リポジトリ)のような共同プロジェクトに提供することを認める。
  • ミシガン大学の機関定期購読料への助成
     Google社がこれまでにスキャンしてきたデジタル複製物にアクセスするためには,Google社と定期購読契約を結ぶことが必要となるが,ミシガン大学がデジタル化の対象となるコンテンツをGoogle社に提供するなどの条件を満たす限りにおいて,原則として契約後25年間は無料,その後も提供コンテンツ数に応じた助成を受ける。これによって,ミシガン大学は,世界の29の図書館からGoogle社がデジタル化したほとんどすべての書籍に無償でアクセスすることができるようになる。
  • 定期購読の価格を検査する仕組みの確立
     Google社がスキャンしたデジタル複製物にアクセスするための定期購読の価格が,全米の大学,図書館,その他の機関が利用するのに十分に適正な額であるかどうかを検査する権利がミシガン大学と他の協力館に与えられる。それらの館で,価格は適正でない,低くするべきだとの判断に至った場合には調停を通して異議申し立てし,Google社に価格を調節するよう要求することができる。

 このうち,定期購読の価格については,かねてより米国図書館協会(ALA)等が懸念を示していた(E918参照)。New York Times紙の報じるところによると,ALAの関係者は,今回の動きを受けて,新しい契約は正しい方向に向けた第一歩であるが,デジタルコレクションに対してGoogle社が人為的に高値を設定することはないと保証するには不十分であるとし,全ての図書館が価格見直しを要求できるようにするべきだとの見解を示している。

Ref:
http://www.ns.umich.edu/htdocs/releases/story.php?id=7162
http://www.lib.umich.edu/mdp/amendment.html
http://www.lib.umich.edu/mdp/Amendment-to-Cooperative-Agreement.pdf
http://www.libraryjournal.com/article/CA6659681.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA6656242.html
http://www.nytimes.com/2009/05/21/technology/companies/21google.htm
E403
E543
E857
E918