E918 – Googleブック検索の和解案への意思表示期限が4か月延長

カレントアウェアネス-E

No.149 2009.05.13

 

 E918

Googleブック検索の和解案への意思表示期限が4か月延長

 

 Googleブック検索をめぐっては,2008年10月にGoogle社と米国の著作者団体Authors Guild,米国出版社協会(AAP)との間で訴訟の和解案の合意がなされ(E857参照),和解案に参加しない著作権保持者等は,不参加の意思を表明しなければならないこと(opt-out)となっている。当初,その意思表明や異議申し立て,意見提出の期限は2009年5月5日とされていたが,約4か月延長され,9月4日までとなった。これに伴い,最終的に和解の成否を決定するための公聴会の開催日も,当初の6月11日から10月7日に変更となった。

 期限延長の決定は,2009年4月28日に,この訴訟を担当しているニューヨーク南部連邦地方裁判所のチン(Denny Chin)判事が示したものであるが,この直前に,延長を求める複数の動きがあった。まず,4月24日にスタインベックの権利継承者らを含む著作者グループが,和解案の検討には時間が不十分であるとの理由で4か月の延長を求めた。同日,Google社等の訴訟当事者が,4か月ではなく60日間程度の延長を要請した。さらに,4月27日にはカリフォルニア大学バークレー校のサミュエルソン(Pamela Samuelson)教授らの学術著者グループが,6か月の延長を求める書簡を提出した。これらの要請を踏まえて,上記のように延長が決定された。

 Google社は,ブック検索により利用者の利便性が高まることをアピールしているが,4か月の期間延長により,和解案に慎重な見方が強まるとの見解もある。さらには,ブック検索をめぐり司法省が独占禁止法の点から関心を示しているとの報道もあり,今後の動向がますます注目される。

 なお,5月4日には,米国図書館協会(ALA),大学・研究図書館協会(ACRL),北米研究図書館協会(ARL)の3団体が,和解案に関する意見を連邦地方裁判所に提出した。3団体は,和解自体には反対していないが,和解案が実施された際に危惧される点を指摘し,裁判所に対し,和解後の動向について監視することを求めている。具体的には,競争相手が実質的に不在であることによる利用価格の高騰の可能性,利用者のプライバシーが守られない恐れ,検索対象から除外される作品が出ることによる知的自由の制限の可能性,等が問題となりうると指摘している。そして,和解案の影響の全貌は現時点では予測不能であるが,出版産業の再構築や図書館の役割の劇的な変化をもたらす可能性もあるとし,裁判所に公共の利益の観点から必要な監視措置をとるよう求めている。

Ref:
http://www.publishersweekly.com/article/CA6654845.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA6655519.html
http://www.scribd.com/doc/14741799/SDNY-Order-Extending-Deadline-to-September-4
http://googlepublicpolicy.blogspot.com/2009/04/google-book-search-settlement-will.html
http://www.reuters.com/article/internetNews/idUSTRE53R8DO20090429
http://www.nytimes.com/2009/04/29/technology/internet/29google.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA6656242.html
http://wo.ala.org/gbs/wp-content/uploads/2009/05/googlebrieffinal.pdf
http://www.ala.org/ala/newspresscenter/news/pressreleases2009/may2009/wogooglebooks.cfm
E857
E906