E919 – これからのオンライン目録に求められること―OCLCの調査から

カレントアウェアネス-E

No.149 2009.05.13

 

 E919

これからのオンライン目録に求められること―OCLCの調査から

 

 近年,高度な検索機能や,資料の全文へのナビゲート機能を実装し,他の情報サービスとの連携を強化するなどした,次世代のOPAC(CA1685CA1686E566参照)が注目を集めている。こうしたなかOCLCは,同組織が提供するオンライン総合目録WorldCatのデータの今後の品質プログラムについて検討する材料とするため,WorldCatの利用者(エンドユーザと図書館員)がオンライン目録のデータの「質」として,何を求めているかを明らかにすることを目指す調査を実施し,その結果を公表した。

 調査は,エンドユーザと図書館員(本報告書では,司書とそれ以外の図書館スタッフを意味する)を対象とする2種類が実施された。主な調査結果には下記が挙げられる。

  • エンドユーザが求めること
    • オンラインコンテンツへの直接リンク
    • 抄録や目次など資料を評価するためのコンテンツ
    • 検索結果の適合度ランキング表示
    • 資料の利用可能性と資料の入手方法に関する情報
    • 高度な検索オプション付きのシンプルなキーワード検索
  • 図書館員が求めること
    • 重複レコードの統合
    • 誤植の修正
    • 簡略な書誌レコードの内容の充実化
    • 目次,抄録,表紙画像など資料を評価するためのコンテンツ

 また,エンドユーザと図書館員がオンライン目録のデータの「質」として求めることを比較した結果,

  • エンドユーザはオンラインコンテンツへのリンクを,図書館員は重複レコードの統合を最重要視している。
  • 図書館員はISBNなど既知資料探索に関連するデータ要素を,エンドユーザは要約など情報を評価するためのデータ要素を,求める資料の発見に必須だと考えている。
  • 目次と要約の充実は両者ともに重視しているが,その他に,目録データの質の要件とするものは異なる傾向にある。
  • エンドユーザがオンライン目録の「質」として求めるものは,人気のある検索エンジン等における情報組織化の方法に影響を受けており,図書館員のそれは,情報組織における図書館界の古典的な原則に大きな影響を受けている。今求められているのは,オンライン目録の「質」を新たに定義し,両者の利点を統合することである。

といったことが明らかになった。

 調査結果を踏まえ報告書は,想定読者であるオンライン目録の改善に係る実務者に向けて,「書誌業務,目録管理,リンク機能,コンテンツ(目次や抄録)の充実に対する図書館の投資を分析・比較し,エンドユーザのニーズを満たすよう再調整する」「データマイニング,APIの利用,出版社やベンダーとの協力,図書館の共同プロジェクトを通じた,コンテンツの充実方法を模索する」「オンライン目録における適合度ランキングを改善するための研究を適切な組織に依頼する」「エンドユーザをサポートする,図書館の配達サービスやデータ要素の活用にもっと注意を払う」といった8つの提言を行っている。

Ref:
http://www.oclc.org/reports/onlinecatalogs/default.htm
http://www.oclc.org/reports/onlinecatalogs/fullreport.pdf
CA1685
CA1686
E566