カレントアウェアネス-E
No.147 2009.04.08
E906
Googleブック検索和解,日本の権利者にも影響
2009年2月24日,『朝日新聞』『読売新聞』両紙の朝刊の広告欄に,「書籍の著者,出版社,または書籍や執筆物の著作権を有しているその他の人物である場合には,貴殿の権利に,グーグルの書籍および執筆物のスキャンおよびその使用に関する集団訴訟の和解案が影響することがあります。」と題する,Google社による「法定通知」が掲載された。
これは,Googleブック検索(Book Search)に関する,Google社と米国の著作者団体Authors Guild,米国出版社協会(AAP)との和解案(E857参照)を受けて出されたものである。同和解案には,(1)米国で著作権保護期間内にある書籍(および挿入物)のスキャン,データベース化,検索可能化,書誌情報の表示等(Google社の用語では「非表示使用」)をGoogle社が非独占的に行えること,(2)米国で市販されていない書籍(絶版の書籍)または権利者が許可した販売中の書籍についてはさらに,Google社が「表示使用」と呼ぶ,個別の書籍へのアクセス権や組織によるデータベースの利用権の販売,公共図書館や非営利高等教育機関の利用者向けの(端末台数限定の)無償閲覧提供,最大20%のプレビューの提供,書籍のページへの広告掲載,抜粋表示等をGoogle社が非独占的に行えること,という内容が含まれている。これらの和解の効力が及ぶ利用者(すなわちサービスの対象利用者)は,米国内に限定されているものの,和解の当事者(和解集団)には,日本で出版された書籍および挿入物の権利者も含まれる。米国は1989年にベルヌ条約に加盟(CA642参照)しており,同じくベルヌ条約に加盟している日本で出版された書籍も,米国での出版実績にかかわりなく米国における著作権を有している。また今回の和解に先立つ訴訟が,米国における著作権保持者のクラスアクション(集団代表訴訟)として起こされたことから,国籍や居住地にかかわらず,米国における著作権保持者のすべてが和解集団に含まれている。ゆえに,日本で出版された書籍および挿入物の権利者にも「和解案が影響する」として,Google社が通知したのである。
今回の和解の対象となっている,2009年1月5日以前に出版された書籍および挿入物(注:各々の定義はGoogle社の和解に関するウェブサイトを参照のこと)の権利者は,たとえ米国での出版実績がなくても,意思表明を起こさない限り,書籍をスキャンし,非表示使用することをGoogle社に認めることになる。さらに,「米国で市販されていない」と判断された書籍および挿入物は,同じく意思表明を起こさない限り,表示使用の対象となるのである。
なお,和解に参加する場合,表示使用で得られた収益のうち63%,また2009年5月5日までにGoogle社が許可なくスキャンした書籍についてはその補償金が,権利者に分配されることになっている。
この和解に参加しないことを希望する権利者は2009年5月5日までに書面で,和解からの除外を申し立てる必要がある。申し立てない場合,自動的に和解に参加することになる。また,和解に参加した上で,一部の条件に異議申し立てを行うこと,一部または複数の書籍を表示使用の対象外とすることもできる。このような意思表明手続きに関して,日本書籍出版協会が会員各社向けの説明資料,国際出版連合(IPA)による和解合意に関する報告書の日本語訳,該当書籍を検索する簡便な方法およびIPAへの質疑に対する回答を公開している。また日本文藝家協会も,意思表明手続きを会員に代わり代行すると報じられている。
今後,Googleブック検索がどのように進展するのか,また日本の出版・電子出版にどのような影響が生じるのか,行方が注目される。
Ref:
[Google]. 法定通知. 朝日新聞. 2009-02-24, 朝刊13版. p. 30.
[Google]. 法定通知. 読売新聞. 2009-02-24, 朝刊13版. p. 27.
http://books.google.com/intl/ja/googlebooks/agreement/
http://www.googlebooksettlement.com/intl/ja/
http://www.googlebooksettlement.com/help/bin/answer.py?answer=118704&hl=ja
http://it.nikkei.co.jp/business/netjihyo/index.aspx?n=MMITs2000028112008
http://it.nikkei.co.jp/business/netjihyo/index.aspx?n=MMITs2000008122008
http://www.kottolaw.com/column_090210.html
http://www.kottolaw.com/column_090323_2.html
http://www.jbpa.or.jp/pdf/documents/google-wakai1.pdf
http://www.jbpa.or.jp/pdf/documents/google-ipa.pdf
http://www.jbpa.or.jp/pdf/documents/googlekensaku-ipakaito.pdf
http://news.braina.com/2009/0303/judge_20090303_001____.html
CA642
E857