カレントアウェアネス-E
No.158 2009.09.16
E974
図書館の内部におけるデジタルデバイド問題
2009年8月13日,米国図書館協会(ALA)の出版部門の1つであるALA TechSourceのブログ“ALA TechSource Blog”に「図書館の内部におけるデジタルデバイド」と題された記事が掲載された。対利用者業務担当と技術担当のライブラリアンの間で生じているデジタルデバイドを取り上げたこの記事を書いたのは,コネティカット州のダリエン図書館で知識・学習サービス部門の長として働いているシーハン(Kate Sheehan)氏である。なお,シーハン氏自身はテクノロジー部門とレファレンス部門の両方で働いた経験を持つ。
シーハン氏は記事の冒頭で次のような問題提起をしている。図書館はますます,テクノロジーに詳しいライブラリアンや技術専門のスタッフを必要としており,レファレンスなど対利用者業務に携わっているライブラリアンにもテクノロジーに関するスキルが求められている。では逆に,技術系のスタッフは対利用者業務の経験を身に付けなければならないのだろうか。
上記のような問題提起をした上でシーハン氏は,現状では,対利用者業務で必要なスキルが軽視され,テクノロジー偏重の傾向があると指摘する。技術担当は,対利用者業務担当が,新しい情報技術を身に付けられないことや,利用者からの反応を気にして何事にも慎重な姿勢を取ることに苛立ちを感じ,彼らの話にあまり耳を傾けないという。しかし,両者は利用者に最善のサービスを提供するという同じ目的の下で働く同僚であり,また,どちらの業務も図書館にとって重要である。ライブラリアンにテクノロジーに関する知識が求められることは間違いないが,利用者は図書館の中心的存在であり,利用者と関わる仕事は図書館で働く人の態度を形作るものである。今後は双方が互いの考え方に歩み寄り,協調していく必要があると,著者は主張している。
シーハン氏のこの記事は注目を集め,様々な館種・規模の図書館で働くライブラリアンから「自分の図書館にも同じような状況はあるものの,担当業務を問わず大半の職員はテクノロジースキルを身に付けたいと考えている」「地方の図書館では,テクノロジー専門のスタッフを雇う金銭的余裕がなく,既存のスタッフで何とか新しいテクノロジーに対応しようとしている。このような形のデジタルデバイドも存在する」(E839参照)といった意見をはじめ,多数の書き込みがあった。どの書き込みもこの記事を高く評価しており,「図書館の中のデジタルデバイド」という問題に対する米国のライブラリアンの関心の高さをうかがわせる。
Ref:
http://www.alatechsource.org/blog/2009/08/the-digital-divide-inside-the-library.html
http://loosecannonlibrarian.net/?page_id=36
E839