カレントアウェアネス-E
No.146 2009.03.25
E905
NDL,電子書籍の流通・利用・保存に関する調査報告書を公表
国立国会図書館(NDL)はこのほど,2008年度に実施した「電子書籍の流通・利用・保存に関する調査研究」の結果を,『図書館調査研究リポート』No.11としてまとめ,公表した。本調査研究は,近年急速に市場が拡大し,社会的な注目も高まっている電子書籍について,その流通・利用・保存の実態を把握することを目的として実施したものである。
本調査研究では,各種統計や歴史的経緯の分析に加え,出版社へのアンケート調査,電子書籍に関連する事業者(出版,携帯電話通信,コンテンツ作成・配信等)へのインタビュー調査,NDL職員を対象とした電子書籍の利用に関するアンケート調査を行い,電子書籍の流通・利用・保存の現状と課題を,特に図書館との関わりに焦点を当てて取りまとめた。
また本調査研究の終了にあわせ,2009年3月9日に,調査研究に従事した調査研究会委員を講師とする報告会をNDL東京本館で開催した。本報告会はNDL関西館にもテレビ中継し,両会場で図書館関係者,出版・印刷・ITなど電子書籍に関連する業界の関係者など,およそ300名が参加した。湯浅俊彦・夙川学院短期大学准教授が調査研究の趣旨と電子書籍の概要,萩野正昭・株式会社ボイジャー代表取締役が電子書籍の流通の現状,北克一・大阪市立大学大学院教授が電子書籍の個人利用,図書館等での機関利用の実態と今後の展望,中西秀彦・中西印刷株式会社専務取締役が電子書籍の保存とその課題について発表し,質疑応答を行った。
本報告会では,電子書籍の定義・統計の困難さ,電子書籍を取り巻く環境の急速な変化,流通に関わる関係者(プレイヤー)の多様さ,出版社の電子書籍の長期保存に係る意識の希薄さと図書館の役割の重要性,電子データを一定期間ごとに最適な形式に変換して移し替える「電子式年遷宮」の必要性,今後の関係者間での議論の必要性などが提起された。質疑応答では,Googleブック検索の新しい展開(E857参照)の影響,国内外の電子書籍用読書端末(E894参照)の普及の差,電子書籍とユニバーサル・サービス等が議論に上った。
なお調査報告書および報告会の講演資料は,ウェブサイト「カレントアウェアネス・ポータル」で電子版を公開している。
Ref:
http://current.ndl.go.jp/report/no11
http://current.ndl.go.jp/fy2008_research
CA1648
E857
E894