E837 – 広報誌やウェブサイトで安心して写真を活用するために(米国) 

カレントアウェアネス-E

No.136 2008.10.01

 

 E837

広報誌やウェブサイトで安心して写真を活用するために(米国)

 

 図書館で開催したイベントの様子などを撮影した写真を,図書館広報誌に掲載する,図書館のウェブサイトで紹介する,さらにFlickrなどの写真共有ウェブサイトで公開するといったことは,米国では一般的に行われている。そういった媒体に掲載されている写真には,被写体の顔・姿かたちをはっきりと写したものも含まれることがある。しかし,写真に写っている人の肖像権,すなわち自分の顔や姿を他人に撮影されたり,公表されたりしない権利には,どのくらい注意が払われているだろうか。

 米国のInformation Today社がウェブで発行している“Marketing Library Services”の2008年9月/10月号に,図書館で撮影した写真を利用する際に,法的に注意を払うべきことをまとめた記事“Laws for Using Photos You Take at Your Library”が掲載されている。この記事は,米国の肖像権の法的考え方に基づき,被写体となった人物が特定可能な写真を必要な許諾を得 ずに無断で使用した場合,その人物から訴訟を起こされる可能性があることを指摘し,そうならないための対処法を,具体的に紹介している。

 米国では,写真の掲載に当たって被写体の許諾を必要とするかどうかは,個人を特定できる写真かどうか,何の目的で写真を使用するのか,という2点による。イベントの参加者全員を背後から撮影した写真など,個人が特定できない写真を使用する場合は,目的によらず,許諾を得る必要はない。つまり,十分な注意を払うべきは,個人を特定できる写真を使用する場合となる。記事では,(1)「●●というイベントが実施された」といったニュースを報告するために,写真を使用する場合,(2) 図書館サービスのプロモーション活動等のために写真を使用する場合,という2つのケースについて検討している。

 (1)のケースは,「ニュースを報告するため」である,という目的が重要なポイントとなる。報道の自由との関係から,ニュースメディアが最新のニュースに付随して写真を用いる場合は,被写体の許諾を得ずに,名前・肖像・画像等を公表してよいとされる。図書館が発行するニュースレターやブログ,ウェブサイトの「最近のイベント」のコーナーは,ニュースメディアの1つと見なしうるため,それが「実施済みイベントの報告」の範囲に収まる限りは,許諾なく写真を使うことができる。ただしこの場合も,写真の掲載期間に注意すべきであり,ニュース性を失ってしまった記事に付随する写真は削除しておくことが望ましいという。この観点からみると,イベントの記録の写真をFlickrなどにアップロードしたままにしておくのは問題があるのではないかと,記事の筆者は指摘している。

 (2)のケースでは,「プロモーション活動等」という目的がキーになる。ニュースメディアも含め,商業目的のために特定可能な人物を含む写真などの画像を無断利用することは認められない。図書館プログラムの宣伝や,図書館イベントのプロモーションなどを目的とする写真の使用についても同様とみなされる。商業目的での使用には,必ず被写体となった人の許諾が必要となる。記事では,被写体となった人との間で交わす許諾書について具体的に説明しており,盛り込むべき必須事項,書式の体裁,書式の保存期間などについて言及している。

 この記事が指摘しているように,写真や動画といった画像を利用した活動報告や広報は魅力的な手段であるだけに,その適切な利用方法,必要な手続き等について,改めて認識しておく必要があるだろう。

Ref:
http://www.infotoday.com/mls/sep08/Carson.shtml
E636
E814
E816