E499 – 米国でのインターネット・フィルタリングの現状 <文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.84 2006.06.07

 

 E499

米国でのインターネット・フィルタリングの現状 <文献紹介>

 

Brennan Center for Justice at New York University School of Law. Internet Filters: A Public Policy Report. 2nd ed. 2006, 80p. (オンライン), 入手先 < http://www.fepproject.org/policyreports/filters2.pdf >, (参照 2006-06-05).

 2006年5月,ニューヨーク大学ロースクールのブレナンセンターが,「表現の自由政策プロジェクト」の一環として,インターネット・フィルタリングの状況に関する報告書を発表した。この報告書の初版は2001年に刊行されたものであり,今回刊行された第2版は,2001年以後の状況について,フォローアップしている。

 報告書の導入部分では,「子どもをインターネットから保護する法律(Children’s Internet Protection Act: CIPA)」(CA1473CA1572参照)に関して,その経緯と,図書館の対応状況について解説している。米国図書館協会(ALA)や米国市民自由連合(American Civil Liberties Union:ACLU)の調査によれば,2003年に最高裁がCIPAを合憲とした(E098参照)ことを機に,大多数の図書館がフィルタリングソフトを導入したという。ロードアイランド州では,最高裁判決以前には4分の1以下の図書館しかフィルタリングソフトを導入していなかったが,2004年7月には,すべての図書館が州レベルのコンソーシアムが推奨するソフトを導入したという。ただし,最高裁判決で認められた,成人利用者の求めに応じてフィルタリングを無効化する措置については,十分に理解されておらず,対応していない図書館も少なくないという。

 本編では,19のソフトについて,概要を紹介するとともに,関連する既存の調査研究をレビューし,どのような問題点があるかを指摘している。ほとんどのソフトが,内容に問題がないと思われるものについてまで過剰にフィルタリングしており,中にはソフトを開発しているベンダーの思想が反映されていると思われるものもあったという。報告書は最後に,CIPAに基づいた適切なフィルタリングのためには,「過剰にフィルタリングするソフトは使わない」「設定変更が容易なソフトを使い過剰な設定を解除する」「利用者からの要求に応じて適切に無効化する」「利用者が見るトップページにフィルタリングに関する説明を掲載する」「インターネットに関する教育や性教育,メディアリテラシーといったインターネットの安全性に関する教育プログラムを開発する」といった対応を取るべきである,と提言を行っている。

Ref:
http://www.fepproject.org/policyreports/filters2factsheet.pdf
http://www.fepproject.org/press/Filters2.pdf
CA1473
CA1572
E098