E2745 – 韓国の第4次図書館発展総合計画(2024~2028)

カレントアウェアネス-E

No.490 2024.10.31

 

 E2745

韓国の第4次図書館発展総合計画(2024~2028)

関西館総務課・中村穂佳(なかむらほのか)

 

  韓国では、図書館法の規定に基づいて、図書館政策の基本方針等を内容とする「図書館発展総合計画」(以下「総合計画」)が、2009年以降、5年ごとに策定されている(E797E2135参照)。2024年5月、4期目の計画となる、第4次図書館発展総合計画(2024年~2028年)(以下「第4次計画」)が策定された。第4次計画は、4つの政策目標の下に設定された12の核心課題、さらにその下の推進課題、詳細の実行計画から成る。また、第4次計画では、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う社会の変容や、第4次産業革命と称される技術革新の動向等を踏まえ、これらに対応するような課題、計画等が含まれる。さらに、2021年12月及び2022年1月にそれぞれ公布された改正図書館法に沿った事項も含まれている。以下では、それぞれの政策目標に沿って、第4次計画の主な内容を紹介する。

●さまざまな立場の人の読書機会の保障

  1つ目の政策目標では、誰もが自由に利用できる図書館を掲げている。障害者サービスに関連して、現在は韓国国立中央図書館の建物内にある国立障害者図書館(E2619参照)の独立した施設の建設、国立障害者図書館と障害者生涯学習関連機関との交流の活性化、障害の種類に合わせた代替資料の製作拡大及び品質向上等を計画する。また、高齢者、視力の弱い人等のための大活字本の活用等を計画している。多文化サービスに関しては、外国にルーツを持つ家庭の学齢期の子どもを考慮した図書館サービスの提供、地域共同体プログラムの運営等が計画に挙げられた。さらに、特殊図書館(兵営図書館、矯正施設図書館、病院図書館)に関しては、兵営図書館及び矯正施設図書館の環境改善及び蔵書の拡充等、地域医療施設と公共図書館との連携・協力プログラムの開発等も計画している。

●図書館と共同体

  2つ目の政策目標は、地域共同体と図書館との連携等に関するもので、地域の特性等を反映して公共図書館を継続的に拡充すること、図書館と関連機関の協力を通じた、地域アーカイブの構築等が計画内容に含まれた。また、2022年1月の図書館法一部改正で、総合計画に含まれるべき内容として「図書館の感染症等に対する安全・衛生・防疫管理に関する事項」が追加されたことを受けて、感染症の流行、気候変動による影響、災害発生の際にも持続可能な図書館サービスを提供することができる環境の整備を計画する。さらに、地域協力及び社会貢献プログラムの強化等、図書館が持続可能な社会を先導するための、国家持続可能発展目標(K-SDGs)達成努力等も計画されている。

●韓国関連資料、地域資料の収集等

  3つ目の政策目標は、国の競争力強化としての知識資源構築に関するものである。韓国の近代文献、外国に所在する韓国関連資料、口述資料等の収集等を計画に入れたほか、広域自治体(特別市・広域市・特別自治市・道・特別自治道の17自治体)と基礎自治体(市・郡・区の226自治体)間の協力を通じた地域資料の収集及び保存体制を構築するとともに、広域自治体に指定又は設立される広域代表図書館への地域資料納本・保存センターの設置、自治体ごとの共同保存書庫の構築・運営指針の整備も計画に含まれている。収集・納本の制度に関しては、ウェブトゥーン、ウェブ小説等、資料の類型ごとのオンライン資料に関する補償金支給基準等の整備等を挙げる。

●新技術と図書館サービス

  4つ目の政策目標では、未来に向けた図書館の革新を掲げている。新技術との関連では、図書館業務の面で、業務用の生成型AIの適用の検討等が計画された。図書館サービスに関する計画では、モバイルサービスの拡大及びIoT、Bluetoothの活用等の非対面型サービス、仮想現実等の技術を活用した図書館実感型コンテンツの開発及び体験ゾーンの運営、メタバースサービスの活用等がある。AIを活用した図書館サービスに関しては、データ分析サービス、古文献テキストの翻訳・分析サービス、生成型AIの正しい活用法等に関する指針の作成・配布等が計画されている。

●新たな図書館体系の構築

  4つ目の政策目標には、図書館の体系等に関する核心課題及び推進課題も含まれる。2021年12月の図書館法改正で広域代表図書館の指定又は設立が規定され、公共図書館の登録制が導入される等、図書館体系が再編されたことに伴って、広域代表図書館の組織体制等の整備等を計画している。また、地域ごとの公共図書館の評価及びフィードバックシステムの開発、公共図書館の登録・評価についての指針及びマニュアルの配布等が計画に含まれた。

Ref:
“국가도서관위원회, “모두가 행복한 도서관”을 위한 첫 회의 개최”. 국가도서관위원회. 2024-05-29.
https://www.clip.go.kr/base/board/read?boardManagementNo=15&menuLevel=2&menuNo=16&boardNo=1746
“제4차 도서관발전종합계획(2024~2028) 확정·통보”. 국가도서관위원회. 2024-06-05.
https://www.clip.go.kr/base/board/read?boardManagementNo=8&boardNo=1754&searchCategory=&page=1&searchType=&searchWord=&menuLevel=2&menuNo=11
“도서관법(법률 제19592호)”. 국가법령정보센터.
https://law.go.kr/LSW/lsInfoP.do?lsiSeq=253555#0000
中村穂佳. 【韓国】図書館法の改正. 外国の立法. 2022, 291-1, p. 26-27.
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_12213283_po_02910111.pdf?contentNo=1
国内全館種対象の図書館発展総合計画(案)を発表(韓国). カレントアウェアネス-E. 2008, (129), E797.
https://current.ndl.go.jp/e797
武田和也. 私達の人生を変える図書館:第3次図書館発展総合計画(韓国). カレントアウェアネス-E. 2019, (368), E2135.
https://current.ndl.go.jp/e2135
田中福太郎. インクルーシブな情報社会実現に向けた韓国の取組<報告>. カレントアウェアネス-E. 2023, (461), E2619.
https://current.ndl.go.jp/e2619
根子あすか. 世界に羽ばたくKブック:韓国政府による作家・出版社への支援. カレントアウェアネス-E. 2023, (467), E2642.
https://current.ndl.go.jp/e2642