E2548 – 国立国会図書館によるオンライン資料の収集範囲拡大について

カレントアウェアネス-E

No.445 2022.10.13

 

 E2548

国立国会図書館によるオンライン資料の収集範囲拡大について

収集書誌部収集・書誌調整課納本制度係

 

  2022年6月1日,国立国会図書館法等の一部を改正する法律が公布され,2023年1月1日から,国立国会図書館(NDL)がオンライン資料収集制度(国立国会図書館法第25条の4)に基づき収集するオンライン資料の範囲が拡大することとなった。

●オンライン資料収集の経緯

  NDLが収集対象とするオンライン資料とは,特定のコード(ISBN,ISSN,DOI)が付与されているもの,又は特定のフォーマット(PDF,EPUB,DAISY)で記録された電子書籍・電子雑誌等(インターネット等で出版(公開)される電子情報)を指す。

  NDLでは2013年7月1日から,民間発行の無償かつ技術的制限手段(DRM)のないオンライン資料をオンライン資料収集制度に基づき収集・保存している(E1464参照)。その後,収集範囲を広げるため,館長の諮問機関である納本制度審議会において,収集や補償のあり方について検討を重ねてきた。この間,2015年12月には収集及び長期的な保管・利用の技術的検証と電子書籍・電子雑誌ビジネスへの影響の検証のために電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業を開始し(2020年1月まで),2018年7月には国立図書館が出版物の収集と保存のために果たしていく役割を考える納本制度70周年記念国際シンポジウム(E2055参照)を開催するなど,NDLにおいて出版社等関係者の理解を得るための取組も行った。

  2021年3月25日に同審議会から,附則によりこれまで収集してこなかった,民間発行の有償又はDRMの付されたオンライン資料(以下「有償等オンライン資料」)の制度収集の在り方について答申を得た。この答申を踏まえ2022年5月,第208回国会に国立国会図書館法等の一部を改正する法律案が提出され,審議の上成立した。

  なお,オンライン資料収集制度においては,ファイルの複製や必要最小限のメタデータ付与等,NDLへの送信作業に係る費用は軽微であるため,複製に関する費用については補償を要しないものとしている。発行者が記録媒体に格納して送付する場合の媒体の購入に要する費用と送料は補償する。

●オンライン資料の収集について

  今回の法改正により,2023年1月1日以降に発行された民間の有償等オンライン資料が新たに収集の対象となる。発行者がDRMのない状態とし,メタデータを付したものを収集することとなる。

  なお,機密扱いのもの,申請書式等簡易なもの,以前にオンライン資料として収集されたものから内容に増減・変更がないもの,既に納本されている図書または逐次刊行物と同一の版面であることの申し出を受け館長が確認したもの,機関リポジトリ収録資料のように長期間にわたり利用可能であり特段の理由なく消去されないもの等は収集の対象外となる。発行者と頒布者(電子書店等)が異なる場合は,原則として発行者が提供義務者となる。

  同一のコンテンツが複数のフォーマットで提供されている場合は,PDFを優先して収集する。EPUBについてリフロー型と固定型がある場合は,リフロー型を優先する。

  オンライン資料の収集方法は,これまで同様,自動収集,NDLウェブサイトからの送信,記録媒体に格納して送付の3種類となる。

●オンライン資料の利用について

  収集したオンライン資料は,国立国会図書館デジタルコレクション(デジコレ)で提供する。原則としてNDLの館内でのみ利用が可能で,図書館送信(E1540参照)や個人送信(E2529参照)は行わない。また,有償等オンライン資料は,紙など有形の資料と同様,1つの資料を同時に閲覧できる人数は1人に制限する。なお,収集した資料のメタデータには,資料が公開されたサイトへのリンクも設ける。

  オンライン資料の複写サービスは, 既に収集されているものも含め,2023年1月中旬から著作権法等の範囲内で開始する予定である。デジコレにおいて,収集根拠が「オンライン資料収集制度」であるPDFフォーマットのもののみが複写の対象となる。

●ご協力のお願い

  オンライン資料収集制度により収集した資料は,2022年9月末現在,約10万9,000件である。収集範囲の拡大とともに,実効性ある制度となるよう,NDLも制度の周知に努めていく。発行者のみなさまには納入についてご協力をお願いしたい。なお,10月26日にはオンライン資料の出版に関わる方々に対して制度収集の概要及び収集方法に関する説明会を開催する予定である。

Ref:
“議案情報”. 参議院. 2022-06-01.
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/208/meisai/m208090208038.htm
国立国会図書館法.
https://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/laws/pdf/a1102.pdf
“納本制度審議会”. NDL.
https://www.ndl.go.jp/jp/collect/deposit/council/index.html
納本制度審議会. オンライン資料の制度収集を行うに当たって補償すべき費用の内容について. 2021, 28p.
https://www.ndl.go.jp/jp/collect/deposit/council/s_toushin_8.pdf
国立国会図書館法によるオンライン資料の記録に関する規程.
https://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/laws/pdf/a4108.pdf
“オンライン資料収集制度(eデポ)”. NDL.
https://www.ndl.go.jp/jp/collect/online/index.html
国立国会図書館法第二十五条の四第四項に規定する金額等に関する件.
https://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/laws/pdf/a4109.pdf
国立国会図書館デジタルコレクション.
https://dl.ndl.go.jp/
“個人向けデジタル化資料送信サービス”.NDL.
https://www.ndl.go.jp/jp/use/digital_transmission/individuals_index.html
“説明会「有償等オンライン資料(電子書籍・電子雑誌等)の制度収集開始について」”.NDL.
https://www.ndl.go.jp/jp/event/events/online_20221026.html
関西館電子図書館課. オンライン資料収集制度(愛称:eデポ)の開始. カレントアウェアネス-E. 2013, (242), E1464.
https://current.ndl.go.jp/e1464
佐藤菜緒惠. 納本制度70周年記念国際シンポジウム<報告>. カレントアウェアネス-E. 2018, (353), E2055.
https://current.ndl.go.jp/e2055
小坂昌. 図書館向けデジタル化資料送信サービス開始から1か月. カレントアウェアネス-E. 2014, (255), E1540.
https://current.ndl.go.jp/e1540
木村祐佳. 個人向けデジタル化資料送信サービスの開始. カレントアウェアネス-E. 2022, (441), E2529.
https://current.ndl.go.jp/e2529