カレントアウェアネス-E
No.255 2014.03.06
E1540
図書館向けデジタル化資料送信サービス開始から1か月
国立国会図書館は,2014年1月21日,図書館向けデジタル化資料送信サービス(図書館送信)を開始した。
国立国会図書館がデジタル化した資料は2月21日現在で約230万点に上る。著作権保護期間が満了したものや著作権者から許諾を得たもの等,デジタル化資料の約2割はインターネットで公開しているが,それ以外は図書館送信が開始されるまでは国立国会図書館の施設内での利用に限られていた。図書館送信では,今まで国立国会図書館内限定とされていたデジタル化資料のうち,絶版等の理由で入手困難な約131万点の資料(著作権保護期間内のものを含む)が利用可能である。
図書館送信を利用する図書館は,国立国会図書館に利用承認を申請していただく。1月21日時点で承認を受けた図書館は21館だったが,3月4日現在,23都道府県の58館で利用可能となっている。その内訳は,都道府県立図書館23館,政令指定都市立図書館20館,市町村立図書館9館,大学図書館5館,その他1館である。また,このほかに約100館から承認申請が提出されており,図書館送信の参加館は順次増加している。
サービス開始から1か月間の利用統計を見ると,全参加館合わせて1日平均約150点の閲覧,約60点の複写が行われている。利用が多い図書館では1日平均30点以上の資料が閲覧されている一方で,数日に1回程度の利用にとどまっている図書館もあり,差異が大きい。図書館の規模や立地の違いに加えて,各図書館が利用者や報道機関への広報をどのように行ったかも影響していると思われる。特に,地域のテレビ局や新聞を通じた広報は効果が大きいようである。
利用された資料の主題を調べると,図書は歴史・地理に関する資料や文学作品,雑誌は経済や産業に関する資料が多い傾向が見られる。ただし,現時点では大学図書館の参加が少なく,今後大学図書館における学術研究のための利用が増加すると利用傾向が変化する可能性が考えられる。
国立国会図書館では,図書館送信に関する専用の問い合わせ窓口(電話および電子メール)を設置し,これまでに300件以上の問い合わせを受け付けている。繰り返しいただく質問については,「デジタル化資料送信サービスについてよくあるご質問」として国立国会図書館ホームページに掲載している。
これから承認申請することを検討している図書館からは,システム(グローバルIPアドレス,端末,ソフトウェア)の要件や,申請手続きに必要な書類に関する問い合わせが多い。閲覧・複写に関する規則,司書の配置,ブラウザのバージョン等について要件を満たさないことが判明した場合は,書類の再提出やブラウザのバージョンアップをお願いすることがあるため,不明な点があれば事前に問い合わせ窓口にご連絡いただきたい。
承認申請中の図書館や,既にサービスを開始した参加館からは,利用者に閲覧や複写を提供する際の実務に関する質問が寄せられている。特に複写においては,著作権の判断や複写料金の収受について対応に迷っている場面が多いようである。また,各図書館でのサービス開始日前後には,館内掲示ポスターの作成,報道機関からの取材対応等の広報に関する相談が増加している。
図書館送信の利用承認申請は今後も受け付けている。国立国会図書館では,より多くの地域でデジタル化資料が利用できるよう,引き続き広報活動を行い,参加館の拡大を図る予定である。また,参加館での利用状況を把握し,課題の分析を行うことで,より良いサービスに改善するよう努めたい。まだ参加館になっていない図書館では,ぜひ申請をご検討いただきたい。
利用者サービス部サービス企画課・小坂昌
Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/library/service_digi/
http://dl.ndl.go.jp/ja/about_soshin.html
http://www.ndl.go.jp/jp/library/service_digi/faq.html