E1541 – 第10回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>

カレントアウェアネス-E

No.255 2014.03.06

 

 E1541

第10回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>

 

 2014年2月17日,第10回レファレンス協同データベース事業フォーラムが,「教育と図書館の未来―レファレンス協同データベースと生み出す力」をテーマとして,国立国会図書館(NDL)関西館で開催された。このフォーラムは,専門家の講演,参加館の実践報告等を通じて事業への認識を深め,併せて関係者相互の情報交換,交流の場とすることを目的として毎年開催されているものである。

 午前の部では,NDLからの2013年度事業報告に続き,山梨県立図書館長の阿刀田高氏から「情報社会と図書館の未来」と題した基調講演が行われた。講演では,国民の読書力の向上には,学校図書館の充実が肝要であるとし,専任職員の配置の重要性を指摘した。また,図書館は必要な情報を得るところというだけでなく,くつろぎの場でもあることの大切さを指摘した。探したい情報が決まっているときは電子情報が便利だが,ものごとを創造するときによく行うぼんやり考えるという行為には,思いがけない情報が手に入る紙情報も便利であり,IT化がどれほど進んでも,図書館は,データベースなどの電子情報と併せて紙の本も提供していくべきであると述べた。そして,本と利用者をつなぐのが図書館員であり,その役割こそが重要であると述べた。

 午後の部では,神奈川県立横浜南陵高校図書館の田子環氏,同志社大学学習支援・教育開発センター助教の岡部晋典氏,豊中市立図書館の石田ひろ氏,国立教育政策研究所教育研究情報センター教育図書館の鈴木由美子氏から実践報告が行われた。

 2013年7月からレファレンス協同データベース事業(レファ協)の参加規定を改正し,学校図書館等を参加館種として追加した。このことを踏まえ,田子氏からは「高校図書館でレファ協を使い倒すために」と題し,高校図書館ならではのレファレンスサービスの傾向(絵や写真が多く掲載されているもの,高校生がわかる資料を提供することが多い等)が紹介され,同氏が所属する神奈川県学校図書館員研究会では具体的にどのようにレファ協の運用をされているかについての報告があった。

 岡部氏からは,司書課程の授業やラーニング・コモンズでのレファ協活用事例について発表があった。レファ協はもはやインフラであり,レファ協を使えば,楽しくて役立つ講義デザインが簡単にできる旨の報告がされた。上手なレファレンスサービスの実例を紹介したり,レファ協の参加館向けの機能を利用できる研修環境で学生自身にレファレンス事例を登録させるなどして,レファ協を活用したとのことである。

 石田氏からは豊中市立図書館のレファ協への取り組みや,豊中市での「とよなかブックプラネット事業」について報告があった。豊中市に関するレファレンス事例をレファ協で公開することは地域のPRにもつながること,豊中市立図書館登録事例へのアクセス数が多いのは,豊中市民の「問いを立てる力」が評価されているということなのでは,という分析が提示された。また,レファ協を活用し図書館から情報を発信することで,レファレンス質問を活発化し,結果的に豊中市の教育行政が目指す「学びの循環」を作ることができるのでは,との考えが示された。  

 鈴木氏からは教育図書館におけるレファ協の効果について報告があった。参加前から期待していた効果として,知識の共有・継承,業務の効率化が,予想していなかった効果として,教育図書館の認知度の向上,不特定多数の人への情報提供ができる点,図書館広報への活用が挙げられた。

 続いて,青山学院大学教授の小田光宏氏をコーディネーターに,実践報告者の田子氏,岡部氏,石田氏,鈴木氏をパネリストに迎えて,パネルディスカッションが行われた。教育と図書館の関係を一層良いものにするために,レファ協をどのように活用できるかについて話し合われ,それぞれの立場からの活発な討議が行われた。レファ協のどのような仕組みが学校図書館に役立つのか,レファ協が館種横断的であることは,学校教育(学校図書館)にとって,どのような価値があるかなどの問いが立てられた。レファ協にはネットワークを形成する機能もあるので,学校図書館が加わることによって,新たなコミュニティが作られるのではないか,との意見も出された。

 基調講演,様々な館種等からの実践報告,そしてパネルディスカッションでの意見交換は,参加者にとって有意義だったのではないだろうか。

 なお,本フォーラムは,インターネットを通じても中継された。また,Twitterで中継を行い(ハッシュタグ“#crdf2014”),インターネット上でも意見交換が行われた。

関西館図書館協力課・レファレンス協同データベース事業事務局

Ref:
http://crd.ndl.go.jp/jp/library/forum_10.html
http://togetter.com/li/631149