カレントアウェアネス-E
No.301 2016.04.14
E1788
第12回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>
2016年2月18日,第12回レファレンス協同データベース事業(レファ協)フォーラムが国立国会図書館(NDL)関西館で開催された。本フォーラムは,レファ協に関心を持つ人々を対象として,専門家の講演,参加館の実践報告等を通じて事業への認識を深め,あわせて関係者相互の情報交換,交流の場とすることを目的として2004年度から毎年度開催されている。2015年度は事業の本格化から10周年を迎え,「レファ協の10年:これまでとこれから」をテーマに,活動を総括し,今後の展望を語り合う場となった。
第1部は,漫画家・イラストレーターの埜納(ののう)タオ氏による基調講演「『夜明けの図書館』とレファ協」であった。レファレンスサービスを題材とした漫画『夜明けの図書館』(E1252参照)の執筆に至る経緯や,図書館訪問や図書館員への調査を重ねて人物設定や各話の内容を膨らませていく過程等が語られた。後半は,NDL職員の兼松芳之との対談形式で,レファ協が登場する『夜明けの図書館』第14話が紹介された。また,これからも理想の図書館像を描いていきたいという想いや,国民の誰もが信頼・活用できるデータベースとしてレファ協を一般の方にもっと知ってほしいという期待が述べられた。
第2部では,まず事務局から2015年度の事業報告があり,続いてパネルディスカッション「レファ協の10年:これまでとこれから」が行われた。青山学院大学の小田光宏氏をコーディネーターに,一般財団法人大阪府男女共同参画推進財団の木下みゆき氏,千葉経済大学短期大学部の齊藤誠一氏,福井県立こども歴史文化館の宮川陽子氏,兼松の4名をパネリストとした。
最初に各パネリストから,自身のレファ協との関わりや想い出に残るエピソード,ターニングポイント等が述べられた。立川市図書館勤務時代からレファ協に携わっていた齊藤氏からは,「レファ協の事例から当時の世相を知ることができる」「図書館員としては,過去の事例はあくまでその時点のものであることを認識して,新情報が出ていないか調べることが必要」との指摘があった。また,宮川氏からは,かつて福井県立図書館でレファ協に携わり,また現在,学芸員業務を担当しているという双方の経験から「情報の確度の高さという点でレファ協に大きな期待をしている。事例データを一般公開することの意義は大きい」との発言があった。木下氏からは,専門図書館である大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)情報ライブラリーでレファ協に関わってきた経験を踏まえて,レファ協の利用が図書館業務の効率化や改善につながることが具体例を挙げて紹介された。兼松からは,事務局としてレファ協に関わった経験等から,登録事例件数が10万件を突破した時のことと,レファ協のエッセンスが「たのしみ・つながり・ひろがり」である旨が述べられた。
その後,今後のレファレンスサービスと,それに対するレファ協の貢献の可能性について議論がなされた。「大学の司書課程の授業で,学生に調べる楽しみを伝えるのにレファ協が役立っている」(齊藤氏),「レファレンスサービスの認知度を上げ,図書館には力があるということをもっと人々に知らせるとよい」(宮川氏),「図書館外へ図書館員が身一つで出向いていくような出張レファレンスを想定した際,資料をすぐ利用できない場所でもレファ協があれば役立つのではないか」(木下氏),「レファ協そのものはシステムでしかなく,作る人や使う人がそこにどんな想いを乗せていくかが重要」(兼松)といった発言があった。
また複数のパネリストから,図書館のPRにレファ協が有用であるという意見や,レファ協への参加には初期投資が不要で,他の図書館や一般の方から情報提供等を受けることもできるため,人員や資料の少ない小規模館にこそメリットがあるという意見が述べられた。
その後の質疑応答では,フロアから学校図書館での活用法,海外へのレファ協の紹介,レファ協の多言語対応,事例として古いデータを残しておくべきか更新するべきか等について意見が出された。
まとめとして,小田氏から,さらなるデータの蓄積とデータの二次・三次利用の促進が重要との指摘があった。また,レファ協は,結論ありきではなく方向性を考えながら先に進んできた経緯があり,今後もそのように進んで行くのではないかとの考えが示され,「人間が問いを持つということがレファレンスサービスを存続させる。いろいろな問いに携わっていけることがレファ協の醍醐味である」と述べられた。最後に,漫画『夜明けの図書館』の舞台である架空の図書館「暁月市立図書館」をレファ協の名誉参加館としてはと発言があり,多くの拍手がわき起こった。
なお,本フォーラムはTwitterで中継を行い(ハッシュタグは“#crdf2016”),活発な意見交換が行われた。
関西館図書館協力課・レファレンス協同データベース事業事務局
Ref:
http://crd.ndl.go.jp/jp/library/forum_12.html
http://togetter.com/li/939902
E1252