E2371 - 図書館に関する意識:新型コロナウイルス感染症の影響

カレントアウェアネス-E

No.411 2021.04.22

 

 E2371

図書館に関する意識:新型コロナウイルス感染症の影響

総務部企画課・渡邉由利子(わたなべゆりこ)
電子情報部電子情報企画課資料デジタル化推進室・川島隆徳(かわしまたかのり)

 

 国立国会図書館(NDL)では,2014年および2019年に「図書館利用者の情報行動の傾向及び図書館に関する意識調査」を実施した(E1667E2225参照)。公共図書館に関する意識や情報行動の変化を把握するために,数年に一度程度の頻度でこのような調査を行うことを想定していたが,2020年,新型コロナウイルス感染症の流行により人々の意識や行動に大きな変化が生じたことが推測されたため,2019年に続けて2020年12月11日から15日にかけて調査を実施した。

 調査方法はこれまでの調査と同じくオンライン調査とし,対象は調査受託会社のインターネットモニターから抽出した20歳以上の日本在住者(有効サンプル数5,000人)で,地域(11ブロック)・性別(男女)・年代(20代,30代,40代,50代,60代以上)で区分した比率と近似するようにした。設問については,基本的には前回調査を踏襲しつつも,新型コロナウイルス感染症に関する設問を加え,大きな変化が予測されない項目については削除したため,2019年と同じく45問となっている。

 本記事では,2019年調査と2020年調査の結果を比較し,情報行動のうち読書全般の変化および新型コロナウイルス感染症に関係する点をいくつか紹介したい。なお,本文中に記載しているパーセントの数値は小数第二位を四捨五入したものである。また回答者の属性については,2019年調査から概ね変わらない(年収は,厚生労働省の2019年「国民生活基礎調査」に比べ,200万円未満,1,000万円以上がやや少なく中間に寄っている。学歴は,2015年度国勢調査の結果と比べ,大卒以上が多い)。

●読書全般

 感染症対策のために,自宅で過ごす時間が増えた人が多いことから,家で行える趣味として,読書をする人が増えると予測した。しかしながら,「あなたの趣味を教えてください。(複数回答可)」という質問に対して,「読書」と回答した人は29.1%から28.7%に微減した。

 読書冊数については大きな変化はなかった。しかし紙,電子,ウェブのいずれの媒体で読んだのかを見てみると,小説,小説以外,雑誌,マンガの各項目で「読んでいない」と回答した人の割合が紙では微増し,電子,ウェブでは微減していた。また,各項目のいずれも読んでいない人は紙では微増し,電子,ウェブでは微減した。紙から電子やウェブへの移行が見られると断言するにはささやかな変化ではあるが,今後注目していくべきポイントである。

●公共図書館の利用

 2020年4月から5月にかけての緊急事態宣言発出期間は,休館していた公共図書館が多かったことも影響して,一年間で公共図書館を利用した人は2019年調査の結果と比較して,8.1ポイント減少して33.4%となった。

 全体のうち「利用したいと思っていたが利用できなかった」と回答した人の割合にはほとんど変化がなかったものの,「利用したいと思わなかったので利用しなかった」と回答した人が7.9ポイント増加し48.3%となったことには注意が必要と思われる。

●図書館休館の影響

 公共図書館を過去一年間に使ったと回答した人でも「あなたが普段使っている図書館は休館しましたか。休館した場合どのような影響がありましたか。」という質問には36.9%が「休館したが特に困らなかった」と回答した。一方「休館したためとても困った」と回答したのは全体の17.5%であった。「休館したためとても困った」と回答した人たちは,紙の本の読書冊数が多く,インターネットで情報を調べていて,情報が足りずに,本や雑誌を調べたことの頻度が高い傾向にあった。また会社員や学生の割合が多く,図書館で本を使い何らかの研究や調査等を行っている人などがイメージされる。

●緊急事態宣言中に利用したかったサービス

 「緊急事態宣言が出されている間,公共図書館にあれば利用したかったと思うサービスはありますか。(複数回答可)」という質問に対して,「スマートフォンやタブレットで図書館の本を閲覧できるサービス」と回答したのは45.0%,「本を自宅まで郵送するサービス」と回答したのは41.1%であり,全体の半数近くが公共図書館に行くことなく本を読めるサービスを求めていた。

●ポストコロナ

 この一年に数回でも公共図書館を使った人に対して行った「新型コロナウイルス感染症の流行が収束した後のあなたの行動についてあてはまるものを選んでください。」という設問に対して,「公共図書館には以前と同じように行くと思う。」と答えた人は65.3%と過半数を超えたが,「公共図書館には以前ほど行かなくなると思う。」と答えた人が27.6%も存在した。このように回答をした人は,紙の本を読まない傾向にある。また,公共図書館の利用については,「年に数回程度利用した」を選んだ人が多く,頻繁に利用していない人は,コロナ禍を経て公共図書館から離れてしまう可能性がある。また,「あなたの最もよく利用する公共図書館の新型コロナウイルスの対策についてどう思いますか。」という質問に対して「対策が足りないと思う」と回答した人も「公共図書館には以前ほど行かなくなると思う。」と回答する傾向にあった。

 一方で「公共図書館には以前よりも行くようになると思う。」と答えたのは一年に公共図書館を使った人のうちの7.1%であった。このように回答した人たちには,利用目的として「図書館で勉強する(図書館の本は使わない)」を選び,「図書、視聴覚資料やその他の図書館資料を借りる・返す」を選ばない傾向にあった。

 以上,アンケート結果のうち新型コロナウイルス感染症が公共図書館の利用や読書に与えた影響と思われる点についていくつか紹介をしたが,分析の視点はほかにも多数考えられる。データは公開しているため,活用いただければ幸いである。

Ref:
“図書館利用者の情報行動の傾向及び図書館に関する意識調査”. カレントアウェアネス・ポータル.
https://current.ndl.go.jp/FY2014_research
“図書館利用者の情報行動の傾向及び図書館に関する意識調査(令和元年度)”. カレントアウェアネス・ポータル.
https://current.ndl.go.jp/FY2019_research
“図書館利用者の情報行動の傾向及び図書館に関する意識調査(令和2年度)”. カレントアウェアネス・ポータル.
https://current.ndl.go.jp/FY2020_research
関西館図書館協力課調査情報係. NDL,情報行動の傾向及び図書館に関する意識調査の成果を公開. カレントアウェアネス-E. 2015, (279), E1667.
https://current.ndl.go.jp/e1667
川島隆徳, 渡邉由利子. 図書館に関する意識:2014年,2019年の調査結果から. カレントアウェアネス-E. 2020, (384), E2225.
https://current.ndl.go.jp/e2225