カレントアウェアネス-E
No.279 2015.04.09
E1667
NDL,情報行動の傾向及び図書館に関する意識調査の成果を公開
「インターネット元年」と称された1995年から約20年,われわれの情報環境は,劇的な変化を遂げてきている。この変化の中で,これからの図書館はどのようにサービスを展開していけばよいのだろうか。その在り方を検討するには,現在の図書館利用者だけでなく,図書館を利用していない潜在的な利用者も対象として,図書館が果たすべき役割についてのニーズや図書館利用も含む広い意味での情報行動の傾向を把握する必要がある。
国立国会図書館(NDL)はこのような問題意識のもと,図書館政策立案者,各図書館の運営や実務に携わる人々,図書館情報学研究者等に対し,今後の図書館の在り方の検討に資する基礎的な情報を提供することを主な目的として「図書館利用者の情報行動の傾向及び図書館に関する意識調査」を実施した。
この調査は,NDL関西館図書館協力課が企画および全体調整を行い,楽天リサーチ株式会社に委託して実施した。調査票の設計に際しては,日本図書館情報学会のNDL調査研究協力チーム(同会の特命事項担当常任理事である筑波大学松林麻実子講師を主査とし,筑波大学池内淳准教授,慶應義塾大学倉田敬子教授,筑波大学歳森敦教授を構成員としてこの調査への協力のために組織された)の協力を得た。
調査対象は,楽天リサーチ株式会社のモニターから抽出した20歳以上の日本在住者(有効サンプル数5,000名)で,オンラインにより調査を実施した。調査対象者の抽出は,地域(11区分)・性別・年代で区分した日本の人口比率と近似するように行った。調査期間は2014年12月12日から12月17日である。
質問項目は,調査対象者の割り付けのために使用した3問(年齢,性別,市区町村までの居住地)を含め全40問で構成した。内容は,「情報行動の傾向」,「公共図書館の利用状況」,「公共図書館への意識」の三つを柱とした。「情報行動の傾向」では,テレビやインターネットなどでどの程度情報を取得しているのか,ブログやメールなどでどの程度コミュニケーションを行っているのか,また情報・ニュースの種類ごとに,そのニーズと実際に探した頻度等を尋ねた。「公共図書館の利用状況」では,最寄りの公共図書館の認知度,最寄りの公共図書館までの所要時間と主な交通手段,直近1年間の公共図書館の利用の有無,利用頻度,利用目的,利用しなかった場合の理由等を尋ねた。「公共図書館への意識」では,公共図書館の役割に関する意識,地域の公共図書館が閉鎖された場合の本人とその家族への影響度,地域の公共図書館が閉鎖された場合の地域への影響度,公共図書館のサービスの重要度等を尋ねた。「公共図書館への意識」を分析するには,地域やコミュニティに対する意識の観点も必要であると考え,居住歴,地域への帰属意識,地域の活動への参加頻度も尋ねた。このほか,NDLのサービスの認知度,利用状況についても質問項目に含めた。また,職業,世帯年収,最終学歴,同居者の有無とその種類など,回答者の属性も尋ねており,さまざまな観点からの分析を可能としている。
オンライン調査という手法,モニターからの調査対象者の抽出という点で,この調査の回答には一定程度の偏りが存在するが,全国の人々がどのような情報行動の傾向を持ち,どのように図書館を利用しているのか,いないのか,また,図書館に対してどのような意識をもっているのかを明らかにする基礎的な情報を得ることができた。調査の成果として公開する集計レポートでは,単純な集計結果の簡易な分析に留め,さまざまな人々が,多様な観点から,その課題解決の助けとなる情報を得られるよう,この調査により得られた回答データそのものを,カレントアウェアネス・ポータルで公開している。ぜひご活用いただきたい。
関西館図書館協力課調査情報係