E1660 – あやかりの杜図書館 冬の特別企画「夜の図書館」

カレントアウェアネス-E

No.278 2015.03.26

 

 E1660

あやかりの杜図書館 冬の特別企画「夜の図書館」

 

 2015年1月・2月の毎週金曜日に,あやかりの杜図書館(沖縄県北中城村)において,冬の特別企画として「夜の図書館」を開催した。この企画は,開催期間中に地元紙や一部報道番組に取り上げられたこともあり注目を集めた。小さな村の図書館のひとつの取り組みとしてここに紹介したい。

 北中城村は沖縄県本島中部に位置する人口約17,000人,東に太平洋,西に 東シナ海を望むなだらかな丘陵地帯にあり,あやかりの杜図書館はその高台 に2008年8月に指定管理者制度を導入して開館した。風そよぐ深緑と田園風 景に,世界遺産「中城城跡」や「中村家」などの文化史跡に囲まれた豊かな風情ある環境に恵まれており,館内からの眺望は自慢のひとつである。大きく開かれた南窓からは陽光が降り注ぎ館内を明るく満たし,雨天時には白霧が立ちこめ,水族館のような雰囲気に包まれる。夜には眼下に広がる集落群や米軍基地キャンプ瑞慶覧に明かりが灯り,高速道路の車の連なりがキラキラと瞬く。「夜の図書館」はその素晴らしい眺望を利用者の皆様と共有したく企画した。

 この企画は閉館後の消灯チェック巡回の際に職員が思いついたものである。この時の着想を活かし「夜の図書館」では,通常の図書館業務終了後の20時に主要灯をおとした状態で窓側のデスクライトのみを点灯し,夜景とともに読書ができる場所を確保した。本を探す際は,懐中電灯を持って静かに移動する楽しみもある。またプロジェクターを使用し,所蔵する映像資料等を大窓一面のブラインドへ投影した上映会や,BGMにJAZZやボサノヴァ等の音声資料を流すなど図書館が所蔵する資料の紹介を兼ねて,大人の雰囲気を意識した空間づくりを心掛けた。「夜の図書館」では,この特性を活かし,図書館の職員配置数を増やすことなく,22時まで開館時間を延長し、閲覧のみのサービスを行った。その他,館外ロビーにおける有料コーヒーサービスや電池式のキャンドルライトを配置し,大人のための読書時間を演出した。

 今回の企画では,期間中(閉館後の20時~22時×8回)約280名の方が利用され,来館された多くの方に好評であった。仕事を終えた利用者同士がリラックスできる空間を共有したことで,不思議な一体感が生まれ集中して読書を楽しめたとの嬉しい意見もあり,実際にクレーム等は皆無であった。

 課題として,夜型社会が問題視されている沖縄県に於いて,ご家族連れで小さなお子様を伴う来館者が見受けられ,「夜の図書館」の主旨を明示するとともに対象年齢を事前に告知する必要性があったことが挙げられる。その他にもメディアに取り上げられたことにより夜間の来館者数が急増し,駐車場等のキャパシティが不足した,といった問題点が浮上した。

 今後も図書館が本来もつ特性や機能を最大限に活かし,地域に親しまれ利用されるよう,従来の枠にとらわれない様々な企画を提案していきたい。進化するあやかりの杜図書館に注目いただきたい。

北中城村あやかりの杜図書館(指定管理者:NPO法人あやのふぁ)・與那原千晴