E2225 - 図書館に関する意識:2014年,2019年の調査結果から

カレントアウェアネス-E

No.384 2020.01.30

 

 E2225

図書館に関する意識:2014年,2019年の調査結果から

総務部企画課・川島隆徳(かわしまたかのり),渡邉由利子(わたなべゆりこ)

 

 国立国会図書館(NDL)では,2014年に「図書館利用者の情報行動の傾向及び図書館に関する意識調査」を実施した(E1667参照)。それから約5年が経過し,最新の情報行動の傾向を把握することでNDLを含む今後の図書館の検討に資することを目的としてNDL総務部企画課では2019年に前述の調査の後継調査を実施した。

 調査方法は2014年調査と同じくオンライン調査とし,対象は調査受託会社のインターネットモニターから抽出した20歳以上の日本在住者(有効サンプル数5,000人)で,地域(11区分)・性別・年齢層で区分した日本の人口比率と近似するようにした。設問については,基本的には前回調査を踏襲しつつも,情報行動関連の質問を詳細化する等の修正を加えた結果,40問から46問に設問数は増えた。

 本記事では,NDLが行った分析の中から,公共図書館に関する興味深い点をいくつか紹介したい。なお,本文中に記載しているパーセントの数値は小数第一位を四捨五入したものである。

 まず全体的な利用の傾向だが,1年間で1回でも公共図書館を利用した人の割合は,2014年の40%から2019年では41%に増加した。1%ではあるが増加しており,図書館離れが進んでいるという傾向は見られない。

 年齢層ごとの利用割合についても,大きな変化は見られなかった。例えば,2014年では20代の利用が他の年齢層に比べて少なかったが(34%),5年経過して30代の利用が減少するということもない(43%)。このことから推測されるのは,図書館の利用の有無には,年齢層よりも仕事,子育て,余暇など,年齢層によるライフスタイルの変化が影響をしているということである。ただしこの点を確認するには,さらに時間をあけて調査を行うことが必要であろう。

 公共図書館を利用した人の利用目的を調査した結果,最も変化が大きかったのは図書館資料を借りたり返したりするための利用で,図書館利用者のうち,当該利用目的を選んだ人の割合は81%から75%に減少している。近年本の貸出に留まらないサービスを提供する図書館が増えているという傾向には合致しているものの,展示やイベントへの参加も7%から5%に減少し,勉強や仕事のための利用が12%から14%に増えていることから,図書館資料の利用やイベント等への参加よりも,空間利用が増えているという傾向が見える。

 地元の図書館が閉鎖されたときに,回答者や家族に与える影響については,2014年から2019年で,「大きな影響がある」と「影響がある」の合計は47%から39%,「あまり影響はない」と「影響はない」の合計は45%から49%,「わからない」では8%から13%への変化があった。2019年調査では,図書館の利用者中で「影響はない」と回答した利用者が26%もおり,利用しない人が「影響はない」,と回答しているだけではないことが伺える。「影響はない」回答者の属性は多様だが,読書をしない比率は相対的に高い(「影響がある」回答者の24%に対して35%)。また,図書館利用者でかつ「影響はない」場合,そのうちの58%しか利用目的として資料の貸出を挙げていない。貸出を目的としない利用者は,図書館の価値を低く見積もる可能性がある。

 図書館を利用しなかった人について,2019年調査では,「利用したいと思わなかったので、利用しなかった」(40%),「利用したいと思っていたが、利用できなかった」(18%)の二つの区分で回答を得ている。「利用したいと思わなかったので、利用しなかった」回答者については,「興味がない」(43%),「近くにない」(27%)というのがその理由となっており,「利用したいと思っていたが、利用できなかった」回答者については,「忙しかったため」(51%),「近くにない」(31%)が理由であった。潜在的なニーズを探るため,「近くに図書館があったら使ってみたい設備・サービス・イベント」についても聞いている。このうちの利用希望率が上位のものは,図書館利用の有無によって大きな違いはなく,「本やCDなどの貸出」,「読書や勉強をするための場所」,「インターネットが利用できるパソコン」,「文化講座」等であった。この「いずれかの」サービスを利用したいと回答した人は,回答者全体の91%に達する。ここに,「レストラン・カフェ」,「映画の上映会」を追加すると96%にも到達するため,手軽に行くことができさえすれば,現代の図書館(施設)サービスに利用者は潜在的に満足しうるということが推測される。

 「近くにない」ため,利用しなかった人達にはどのようにリーチできるだろうか。ニーズ調査の項目として図書館のウェブサービスについても聞いているが,調べものサポートや,類似の本の推薦サービスは,それぞれ回答者全体の28%,26%のニーズがあり,図書館利用有無に限らず,施設・サービス等の利用希望率のトップ10に入っている。電子図書館等の有料のウェブサービスを地域に対して提供する,便利なサービスの紹介や使い方のレクチャーを行う等の方策は考えられるかもしれない。なお,「利用したいと思わなかった」人は,そもそも図書館とそのサービスを認識していないとも考えられるため,広報戦略も重要であろう。

 以上,アンケート結果についていくつかの視点から分析を試みたが,視点はほかにも多数考えられる。データは公開しているため,今後の企画の検討などに役立てていただければ幸いである。

 

年齢層ごとの公共図書館の利用人数及び割合

 

図書館の利用有無ごとの,「使いたい」と回答したサービス(比率が多い順トップ10)

 

Ref:
https://current.ndl.go.jp/FY2019_research
https://current.ndl.go.jp/FY2014_research
E1667