E212 – 情報提供のデジタル化が民主主義を脅かす?−元ALA会長の報告書

カレントアウェアネス-E

No.39 2004.07.07

 

 E212

情報提供のデジタル化が民主主義を脅かす?−元ALA会長の報告書

 

 情報提供の急速なデジタル化は民主主義の中核を脅かす危険をはらんでいる−6月8日に自由な表現政策プロジェクト(注)から発表された,米国図書館協会(ALA)元会長クラニッチ(Nancy Kranich)氏の報告「情報コモンズ(The Information Commons)」は,情報提供のデジタル化の傾向に対してこう警告している。

 クラニッチ氏は報告の中で,インターネットなどの新技術は無数の情報への自由なアクセスの機会をもたらした反面,メディア産業の強大化,ライセンス契約や著作権法等による情報の「囲い込み(enclosure)」も招いていること,新技術の複雑さや費用面の問題から情報へのアクセスが制限される人も少なくないことを挙げて,このままでは民主主義の発展に欠かせない情報への自由なアクセスが保証されなくなると述べている。その上で,PLoS(CA1433参照),DSpace(CA1527参照)等,情報を共有財産として扱おうとする活動の例を示しながら,情報や知識への自由なアクセスを保証する情報コモンズ(E166参照)の概念を確立させる必要があると主張している。

(注)Free Expression Policy Project(FEPP):検閲に関わる問題を調査・分析し,表現の自由,情報へのアクセスの自由に合った解決策を求めることを目的に,2000年に設立された団体。2004年5月には,ニューヨーク大学ロースクールのブレナン公正センター(Brennan Center for Justice at New York University School of Law)の一部門となった。

Ref:
http://www.libraryjournal.com/article/CA426111
http://www.fepproject.org/policyreports/InformationCommons.pdf
http://www.brennancenter.org/presscenter/releases_2004/pressrelease_2004_0608b.html
E166
CA1433
CA1527