E849 – 世界各国で「オープンアクセスの日」開催

カレントアウェアネス-E

No.138 2008.10.29

 

 E849

世界各国で「オープンアクセスの日」開催

 

 2008年10月14日,世界規模のイベント「オープンアクセスの日」が開催された。これは,SPARC(CA1469E111参照),PLoS(CA1433E046参照),および知的財産・情報通信技術政策における公共の利益を追求する活動を行っている国際的な学生組織“Students for Free Culture”の3団体の呼びかけによるもので,オープンアクセスの認知度・理解を広め,その意義を伝えることを目的としたものである。

 この日の目玉企画として行われたのは,1993年にノーベル生理学・医学賞を受賞したロバーツ(Richard Roberts)氏と,PLoSで雑誌の編集長も務めている研究者のボーン(Philip E. Bourne)氏による,オープンアクセスが研究に与えるインパクトについての講演である。この講演,および,「なぜオープンアクセス活動に参加しているのか」を研究コミュニティに属する人々が1分で語る動画シリーズ“Voices of Open Access Video Series”(事前に募集していたもの)が,インターネットを通じて同時配信(ウェブキャスト)され,この放映を核としたオープンアクセスに関するイベントも,世界各地の大学,図書館等で開催された。このほか,オープンアクセスについてのブログ記事コンテストや,記念グッズの作成なども行われた。

 公式サイトによると,世界28か国・地域(プエルトリコ,欧州全体を含む)で,この日に関連イベントが行われた。日本では,国立情報学研究所(NII)が国際学術情報流通基盤整備事業(SPARC Japan)の一環として,特別セミナー「日本における最適なオープンアクセスとは何か?」を開催した。学会の出版担当者,実践者,研究者合わせて4名が,各々の立場からオープンアクセスについて語った講演の映像と資料は,同事業のウェブサイトで公開されている。

 またこの日に連動した取り組みが,出版界・図書館界でも行われた。出版界では,オープンアクセス学術出版社協会(OASPA)が発足した。同協会は,オープンアクセス出版に取り組む出版社の利益を代表すべく,情報の交換,標準の策定,オープンアクセスに関するアドヴォカシー・教育活動の実施などを行っていくとしている。図書館界では米国図書館協会(ALA)が,この日を機に,機関誌“American Libraries”をオープンアクセス化するとともに,メールマガジン“American Libraries Direct”を会員以外でも購読可能とした。

 世界各地で同時に,オープンアクセス関係者がさまざまなイベントに関わったこの2008年10月14日は,オープンアクセスの歴史において特別な一日として,永く記憶されていくことであろう。

Ref:
http://openaccessday.org/
http://vimeo.com/oaday08/
http://www.nii.ac.jp/sparc/event/2008/20081014.html
http://www.oaspa.org/
http://www.ala.org/ala/newspresscenter/news/pressreleases2008/october2008/ALaccess.cfm
CA1433
CA1469
CA1543
E046
E111