E2096 – 研究データ同盟第12回総会<報告>

カレントアウェアネス-E

No.361 2019.01.17

 

 E2096

研究データ同盟第12回総会<報告>

 

 「障壁なきデータ共有」をスローガンとする研究データ同盟(RDA;E2029ほか参照)の第12回総会は,“Digital Frontier of Global Science”をテーマに,2018年11月5日から8日にかけてボツワナ共和国のハボローネで開催された。今回の総会はInternational Data Week(IDW)2018として,データサイエンス全般を対象とするSciDataCon 2018と同時開催した。RDAには137の国・地域から7,000人以上が登録している(第12回総会時点)。本総会には820人が参加し,日本からは筆者を含め10人が参加した。参加者の属性は主にデータ共有に関する研究者,データ管理者,図書館員,行政関係者等である。はじめてアフリカで開催されたということもあり,参加者の6割程度がアフリカからの参加者であった。

 RDAはBirds of a Feather(BoF),Interest Group(IG),Working Group(WG)という3種類のグループから構成されており,議論の進度に応じて,BoF,IG,WGと段階が進む。第12回総会時点ではWGが32,IGが61設置されていた。総会では,全体会の他に各グループによる分科会での議論の時間が設けられている。また,グループ同士で協力することが推奨されており,複数のBoF,IG,WGが共催する分科会も開かれている。

 オープニングの全体会では,ボツワナ共和国のマシシ(Mokgweetsi Masisi)大統領からあいさつがあった。オープンデータとオープンサイエンスが知識の生産,経済の発展,国同士の協力をさらに推し進めていくことに対し,とりわけIDWが様々な利害関係者の協力によって開催されている点から,期待の言葉が述べられた。

 図書館との関連が深いグループとして,「研究データのための図書館」(Libraries for Research Data)IGの分科会がある。本IGは,研究データの利活用において図書館が果たすべき役割について議論している。今回の分科会では研究系の大学図書館からの話題提供が多かったこともあり,FAIR原則(E2052参照)に基づく研究データを作成するために図書館ができることが議論の中心であった。研究データの公開と利活用がどういった場合にうまくいくのか明らかにするために,図書館が研究データマネジメントで研究者に深く関与した事例研究を集めること,本IGが公表した,研究データ管理に役立つ無料オンラインリソースやツールを紹介する「23のやるべきこと」をFAIR原則に則ったデータを作るために分野ごとにより分かりやすく作成する取り組み,データスキルの教育を行っている団体であるCarpentriesと協力して図書館向けに講習を実施することについて登壇者から紹介があった。

 市民科学に関する事例の紹介も極めて興味深いものだった。専門家の支援などを受け協同することによって,市民が集めたものも十分に有用なデータソースとなることが,日本における放射線量の測定や,台湾での地域に関する自然や文化の情報蓄積の事例を通して紹介されていた。

 BoF Big Dataの分科会は議長が病欠したため,その場で自然発生的に臨時の議長が決まり,参加者が自分の事例を紹介し始めるといったコミュニティ型組織らしい一面も見られた。一方で,本総会を踏まえたオープンデータ・オープンサイエンスに関する宣言である,IDWハボローネ宣言の草案を巡って,どの言葉を入れるか応酬が交わされるなど国際的な基準を作っていく組織としての一面も見られた。

 研究データを主たる対象とするRDAだけでなく,SciDataConが同時に開催されたことと,まさに経済発展の途中にあるアフリカ諸国からの参加者が多かったことから,研究データの利活用促進だけでなく,データを利用した経済発展に強い関心が集まっていたことが今回のRDAの特色といえるのではないか。

 RDAが元来スコープとしたところではあるが,データを軸としたオープンサイエンスについての集まりという色合いもかなり強いものであった。まさに科学研究に力を入れ始めている途上国が従来の科学研究のモードではなくオープンサイエンスのモードによって進めることを選択しようとしているように見える中,既に科学研究の体制が確立した日本にあっては,既存の科学研究のモードをいかにオープンなモードに変えるか(もしくは変えないのか)という選択を迫られているように感じられた。

 次回(第13回)のRDA総会は2019年4月2日から4日まで,米国のフィラデルフィアで開催される。また,本総会のクロージングセッションでは,第14回総会が2019年の10月(RDAのウェブサイトでは10月23日から25日までの3日間の予定)にフィンランドのヘルシンキで開催されることが発表された。

電子情報部システム基盤課・田幡琢磨

Ref:
https://www.rd-alliance.org/plenaries/rdas-12th-plenary-meeting-part-international-data-week-2018-gaborone-botswana
https://www.scidatacon.org/
http://www.internationaldataweek.org/
https://www.rd-alliance.org/ig-libraries-research-data-rda-12th-plenary-meeting
https://carpentries.org/
https://www.scidatacon.org/IDW2018/sessions/211/
https://www.rd-alliance.org/big-data-how-data-science-can-be-serving-public-interest-rda-12th-plenary-meeting
https://www.rd-alliance.org/plenaries/rdas-14th-plenary-helsinki-finland
E2029
E2052