E2228 – 研究データ同盟第14回総会<報告>

カレントアウェアネス-E

No.385 2020.02.13

 

 E2228

研究データ同盟第14回総会<報告>

電子情報部電子情報企画課・中川紗央里(なかがわさおり)

 

 研究データ同盟(RDA;E2144ほか参照)第14回総会は,“Data Makes the Difference”(データが社会を変える)を全体テーマとして,2019年10月23日から25日にかけてフィンランドのヘルシンキで開催された。2019年10月時点で,RDAには137の国・地域から9,000人以上の個人会員が登録しており,本総会への参加者数は571人(うち日本からの参加者は15人)であった。参加者の属性は,主にデータ共有に関する研究者,データ管理者,図書館員,行政関係者等である。

 RDAはBirds of a Feather(BoF),Interest Group(IG),Working Group(WG)という3種類のグループから構成されており,議論の成熟度に応じて,BoF,IG,WGと段階が進む。第14回総会時点ではWGが32,IGが56設置されていた。本総会では,全体会の他に合計61の分科会が開かれ,その内訳は,WGが13件,IGが27件,BoFが13件,複数のWG,IG,BoFが共催する合同分科会が8件であった。

 オープニングの全体会では,ハナホー(Hilary Hanahoe)事務局長が,全体テーマに合わせて“RDA makes the difference?”と題し,RDAの概況について報告するとともに,RDAの成果物が様々な研究機関の施策に影響を与えていることを例に挙げながら,オープンデータの取組が社会の発展に繋がることへの期待感について述べた。また,欧州委員会情報社会・メディア総局から,オープンサイエンスを下支えする基盤として,欧州オープンサイエンスクラウド(EOSC;CA1921参照)の取組について紹介があった。

 図書館との関連が深いグループとして,「研究データのための図書館」(Libraries for Research Data)IGがあり,研究データの利活用において図書館が果たすべき役割について議論している。これまでの成果として,図書館員が研究データを管理する際に役立つ実践的な無料オンラインリソースやツールを23項目紹介した「「研究データの図書館」からの23のアドバイス」が公表されているが,今回の同分科会では,オランダのラドバウド大学から「23のアドバイス」を国内の状況に合わせて導入した事例報告があった。また,研究者・研究機関による研究データ管理(RDM)を推進するプロジェクト“Engaging Researchers With Research Data”の活動報告では,RDMに取り組む研究機関のベストプラクティスとして,ノルウェーのトロムソ大学における博士課程学生へのRDM教育の事例や,オランダのユトレヒト大学図書館でデータ管理者によるサポートチームを組織し,研究者へのデータ管理支援を行っている事例が紹介された。ユトレヒト大学の事例は,学内にサポートチームを置くことで,学内連携が容易である,継続的な支援が受けられる,外部のデータ管理者を雇用するよりも費用を抑えることができ,かつデータ管理者の勤務形態も柔軟に指定できる等のメリットがあることが報告された。なお,本総会では同プロジェクトを基にしたBoFが新たに立ち上げられた。

 このほかに筆者が参加した分科会から,研究データの多様化・分散化が進み,その管理コストが高まる中で,データの収集,管理,検索等のデータ管理作業全体を効率化・最適化するための手法やツールについて議論している「データファブリック」(Data Fabric)IGの分科会を紹介したい。同分科会では,国レベル・国際レベルでのデータファブリック実践事例として,中国国内で利用されている多様な識別子の相互参照性向上に向けた取組や,欧州連合(EU)の資金提供により欧州の研究データ管理サービスの統合を目指すプロジェクトが紹介された。同分科会後半には,機械学習やAIによる識別子の相互連携作業の自動化の可能性についても議論が行われた。

 本総会2日目の全体ディスカッション“Data as a game changer”(データが変革をもたらす)では,アクセス可能なデータが急増する中で,これらのデータを適切に扱うための法的枠組みの整備やデータリテラシーの向上,データの品質管理等が課題として挙げられた。パネリストからは,大量のデータを処理する技術こそがこれからの社会に大きな影響を与えるgame changerとなり得るのではないかの示唆もあった。日本国内のオープンサイエンス推進に当たっては,RDAをはじめとするデータコミュニティでの議論や事例報告からこのようなトレンドを知り,参考とすることが重要と思われた。

 次回のRDA総会(第15回)は2020年3月18日から20日まで,オーストラリアのメルボルンで開催される。また,本総会のクロージングセッションにおいて,第16回が2020年11月にコスタリカのサンホセ,第17回が2021年4月に英国のエディンバラで開催予定であることが報告された。

Ref:
https://www.rd-alliance.org/plenaries/rdas-14th-plenary-helsinki-finland
https://rd-alliance.org/about-rda
https://www.rd-alliance.org/research-data-alliance-%E2%80%93-first-five-years
https://www.rd-alliance.org/project-updates-presentations-topical-rdm-library-issues-and-discussions
https://rd-alliance.org/system/files/documents/23Things_Libraries_For_Data_RDA%EF%BC%BFjp.pdf
https://www.rd-alliance.org/engaging-researchers-research-data-what-works
https://www.rd-alliance.org/governance-and-implementation-intelligent-data-fabric
https://cordis.europa.eu/project/id/863353
https://www.rd-alliance.org/plenaries/rda-15th-plenary-meeting-australia
E2144
CA1921