E2029 – 研究データ同盟第11回総会<報告>

カレントアウェアネス-E

No.347 2018.05.31

 

 E2029

研究データ同盟第11回総会<報告>

 

 「障壁なきデータ共有」をスローガンとする研究データ同盟(RDA;E1972ほか参照)の第11回総会は,“From Data to Knowledge”をテーマに,2018年3月21日から23日にかけてドイツのベルリンで開催された。RDAには136の国・地域から6,700人以上が登録している(第11回総会時点)。本総会には661人が参加し,日本からは18人が参加した。参加者の属性は主にデータ共有に関する研究者,データ管理者,図書館員等である。

 RDAはBirds of a Feather(BoF),Interest Group(IG),Working Group(WG)という3種類のグループから構成されており,議論の進度に応じて,BoF,IG,WGと段階が進む。第11回総会時点ではWGが32,IGが61設置されていた。総会では,全体会の他に各グループによる分科会での議論の時間が設けられている。また,グループ同士で協力することが推奨されており,複数のBoF,IG,WGが共催する分科会も開かれている。

 オープニングの全体会では,冒頭でハナホー(Hilary Hanahoe)事務局長が,RDAの活動をオーケストラに例え,様々な経験,スキル,文化を持つ人々が集まって協力することで,すばらしい成果を生み出すことができると挨拶した。2日目の全体会では,複数のWGが最終提言や経過報告を行った。その中で,「国際的な材料資源レジストリ」(International Material Resource Registries)WGでは,研究データが増加するにつれてどのようなデータがデータベースに存在しているのか把握が難しくなるという課題があり,材料分野の研究データを容易に発見するためのレジストリを作成したと報告があった。レジストリの作成方法やツールは他の分野にも適用できるとしている。

 図書館との関連が深いグループとして,「研究データのための図書館」(Libraries for Research Data)IGの分科会がある。本IGは,研究データの利活用において図書館が果たすべき役割について議論している。これまでの成果として,図書館員が研究データを管理する際に役立つ実践的な無料オンラインリソースやツールを23項目紹介した“23 Things”が公表されている。本分科会では,米国のノースカロライナ州立大学,オランダのデルフト工科大学,オーストラリア国立データサービス(ANDS),欧州社会科学データアーカイブ協議会欧州研究基盤コンソーシアム(CESSDA ERIC)から報告があった。研究データの管理や利活用において,図書館員やデータ管理者が研究者を支援することが想定されており,図書館員のデータに関するスキルを向上させるための取組が紹介されていた。例えば,ノースカロライナ州立大学の報告では,データサイエンスの実施における図書館の役割について検討するための国際ワークショップを2017年5月に開催し,博士号を持った専門性の高い人材の必要性などが議論されたとのことである。その後,本IGの次の取組についてブレインストーミングが行われ,他のIGやWGとの連携に加え,研究データ管理のための方針やツールを提供するなど,戦略的なレベルで研究データ管理について議論すること等が提案された。

 このほか研究データに付与するメタデータの標準化,メタデータの要素やメタデータ語彙に関する議論を目的として,「メタデータ」(Metadata)IG,「文脈の中のデータ」(Data in Context)IG及び「メタデータ標準カタログ」(Metadata Standards Catalog)WG共催の分科会が開催された。本分科会では,「メタデータ標準カタログ」WGが,メタデータ標準の作成に必要な情報を提供する“Metadata Standards Catalog”について,過去の取組と比較して,情報量を増加させたほか,検索が可能になったことを報告した。その後,食糧・農業,海洋及び社会科学の各分野のメタデータ語彙の作成に関する取組の報告があった。現状では,各機関がそれぞれメタデータ語彙を作成しているため,データベース間のメタデータ語彙の相互運用性が課題として指摘された。

 今回のRDA総会では,国をまたいで複数の機関が共同事業を実施している事例が多く報告されていたほか,各分科会では共同事業への積極的な参加が呼びかけられていた。各機関が協力して研究データの利活用に向けた仕組みを構築するという雰囲気が強く感じられた。研究データの利活用を実現するためにはこうした国際的な連携が不可欠であり,日本も国際的な共同事業を実施して貢献することが今後重要であろう。

 次回(第12回)のRDA総会は2018年11月5日から8日まで,第2回International Data Weekの一環として,ボツワナのハボローネで開催される。アフリカでの開催は初めてとなる。また,本総会のクロージングセッションでは,第13回総会が2019年の3月もしくは4月(RDAのウェブサイトでは4月2日から4日までの3日間の予定)に米国のフィラデルフィアで開催されることが発表された。

利用者サービス部科学技術・経済課・小竹毅郎

Ref:
https://www.rd-alliance.org/plenaries/rda-eleventh-plenary-meeting-berlin-germany
https://www.rd-alliance.org/sites/default/files/attachment/4_International%20Materials%20Resource%20Registries%20WG%20-%20Raymond%20Plante%2C%20NIST.pdf
https://www.rd-alliance.org/ig-libraries-research-data-rda-11th-plenary-meeting
https://b2share.eudat.eu/api/files/c4530c79-d579-4a18-ae78-37d42c241ce1/23Things_Libraries_For_Research_Data_jp.pdf
https://rd-alliance.org/rda-11th-plenary-joint-meeting-ig-metadata-ig-data-context-wg-metadata-standards-catalog
http://d-scholarship.pitt.edu/33891/1/Shifting%20to%20Data%20Savvy.pdf
https://rdamsc.dcc.ac.uk/
E1972