E2005 – フランスと日本の目録動向:書誌調整連絡会議<報告>

カレントアウェアネス-E

No.343 2018.03.08

 

 E2005

フランスと日本の目録動向:書誌調整連絡会議<報告>

 

 2018年1月18日,国立国会図書館(NDL)収集書誌部は,「新しい目録規則は何をもたらすか:フランスと日本の書誌データ」をテーマに,平成29年度書誌調整連絡会議を開催した。この会議は,国内外の書誌調整に関する最新情報を関係者・関係機関等と共有することを目的とし,毎年行われているものである。今年度は,新しい目録規則の策定等に取り組んでいるフランスと日本における共通の課題や相違点を共有することで,日本の目録規則のよりよい改訂と運用を図ることを目的に,フランス国立図書館(BnF)からブレ(Vincent Boulet‏)氏を招へいし,広く一般に公開した。当日は,約90名の参加があった。

 はじめに,ブレ氏が,BnFとフランス高等教育書誌センター(Agence bibliographique de l’enseignement superieur:ABES)が共同で取り組む「書誌移行」(Transition bibliographique)計画について講演を行った。この計画の目的は,ウェブにおけるBnFのデータの可視性や利活用可能性の向上等である。ブレ氏は,計画の柱となる三つの取組を紹介した。一つ目は,データの自動処理やセマンティック・ウェブの技術標準を用いた目録のFRBR化(FRBRization)である。これは,既存の書誌データ及び典拠データを構造化し,FRBRのデータモデルに準拠させる取組である。この取組では,BnFの蔵書目録とデジタル資料を統合的にLinked Open Dataとして提供する“data.bnf.fr”のデータを用い,著作の典拠データと体現形のデータ(書誌データに相当)間のリンクの自動生成等を段階的に実施している。二つ目は,フランスにおける新しい目録規則“RDA-FR”の策定である。“RDA-FR”は,英米を中心に普及している目録規則RDA(Resource Description and Access)に,フランスの目録慣行やFRBRに対する解釈等を反映させたものである。策定作業と並行して,2015年から段階的に適用されている。三つ目は,こうした規則や基準,技術の進展等による大きな変化に関わるすべての関係者(図書館員,システムベンダー,エンドユーザ等)をサポートする国家的な体制の構築である。この体制の中で,図書館員に対する研修,図書館システムに関する技術情報やシステムベンダー等との意見交換の場の提供等が行われている。そして,ブレ氏は,これらの取組を進める中で,ウェブという新たな環境においても,図書館及び図書館員は,従来培ってきた目録作成技術や経験を改めて活かすことで,市民の情報アクセスの向上を図るという使命を果たし続けるだろうとの展望を述べ,講演を締めくくった。

 次に,日本図書館協会(JLA)目録委員会委員長・帝塚山学院大学教授の渡邊隆弘氏が,JLA目録委員会とNDLが連携して策定に取り組んでいる「日本目録規則2018年版」(仮称)(NCR2018)の策定状況や基本方針,全体構成等を説明した。また,NCR2018の三つの特徴(FRBRを基盤とすること,RDAとの相互運用性の担保,日本の出版状況や目録慣行等の反映等)を述べた。最後に,NCR2018の意義として,著作の典拠コントロールや機械可読性の向上を挙げ,これによる書誌サービスの向上や,データの利活用可能性の拡大に期待を寄せた。

 さらに,NDLからはNCR2018の適用に向けた取組状況として,2021年1月以降の適用開始を目指し,適用細則の検討を進めていること,並行して,入力システムのリニューアルの検討を進めていることを報告した。また,想定される適用事例を紹介し,体現形のデータの作成等では基本的に現在の運用と変わらないが,NCR2018の特徴の一つである著作の典拠コントロールを段階的に開始する想定であること等を説明した。

 最後に,“RDA-FR”に基づき作成された書誌データの国際的な相互運用性や,出版者等との連携及びBnFからの働きかけの状況等について,参加者から質問があった。

 会議を通して,フランスと日本には,RDAをそのまま適用せず,FRBRを基盤とし,自国の事情をふまえた規則を検討しているという共通点が確認できた。そして,ウェブにおける書誌データの利用や連携を進める中で,図書館が今後果たすべき使命や課題について参加者間で共有することができた。

 会議の概要と資料は,NDLウェブサイトの「平成29年度書誌調整連絡会議報告」に掲載している。

収集書誌部収集・書誌調整課・柴田洋子

Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/data/basic_policy/conference/2017_report.html
https://www.transition-bibliographique.fr/
http://www.jla.or.jp/committees/mokuroku/tabid/643/Default.aspx