E199 – 電子ジャーナル時代における冊子体利用統計の意義<文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.36 2004.05.19

 

 E199

電子ジャーナル時代における冊子体利用統計の意義 <文献紹介> 

 

Vaughan, K.T.L. Changing Use Patterns of Print Journals in the Digital Age: Impacts of Electronic Equivalents on Print Chemistry Journal Use. Journal of the American Society for Information Science and Technology. 54(12), 2003, 1149-1152.

 大学図書館に電子ジャーナルが導入されるようになって,10年が経とうとしている。電子ジャーナルの導入が図書館経営や利用者に与える影響は大きく,多くの研究がなされている。本論文もその一つであるが,著者は勤務先であったデューク大学化学図書館におけるScienceDirect導入後の冊子体の利用実態を報告している。

 冊子体と電子ジャーナルのどちらでも利用可能なエルゼビア刊行誌とその他出版社の刊行誌,そして冊子体のみで利用可能な刊行誌の3種類全てにおいて,冊子体の利用が30〜60%程度減少しており,特に電子ジャーナルでも利用可能な雑誌については,その減少が著しい。冊子体をいつ切り捨てるのかという局面がある一方で,雑誌価格の上昇と財政状況の悪化により,いつ冊子体のみの状態へと戻るかわからない状況も抱えている図書館にとって,冊子体利用の統計は看過できない問題である。

 現在,COUNTERプロジェクト,ICOLC,E-Metrics,NISOなど電子情報資源の利用統計策定の動き(CA1512参照)が活発になっている。図書館の電子化は不可避であり,新しい状況に対応することの意義は大きい。しかし,そうした状況だからこそ,いま一度冊子体が図書館やその利用者に対して持つ意味合いを明らかにする必要があるのではないだろうか。

(慶應義塾大学大学院:三根慎二)

Ref:
CA1512