E757 – 電子ジャーナルの利用統計<文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.123 2008.02.20

 

 E757

電子ジャーナルの利用統計<文献紹介>

 

Fowler, David C. ed. Usage Statistics of E-Serilas. Haworth Press, 2007. 297p.

 電子ジャーナルの利用統計は,2002年にCOUNTER(CA1512参照)の実務指針が出現するまで標準化が行われておらず,出版社を越えた利用統計の比較ができなかった。2008年1月現在,COUNTER実務指針に準拠して利用統計を提供する出版社やベンダーの数は99となっている。電子ジャーナルが普及し,標準的な利用統計が入手できるようになると,導入効果を計るために利用統計と購読経費の関連を出版社のパッケージ単位のみならずタイトル単位で比較しようする要求が強くなる一方で,多数の出版社から利用統計を取得し,処理する難しさも認識されつつある。

 このような時期に電子ジャーナルの利用統計について実務の面から広範囲に扱った論文集である本書が刊行されたことは非常に意味があるといえよう。収録されている論文は17編で,執筆者は15編が米国,残り2編がそれぞれドイツとイギリスである。なお,収録されている論文の執筆の時点は編者の序文によれば2005年のようである。論文は3つの部分に分けることができる。

 最初の6編は,利用統計の処理,標準化および配布に関する概説や個別の大学,コンソーシアムにおける事例報告の他,独自の利用統計の取得,大規模な利用統計の分析であるMaxDataプロジェクトの報告を収めている。

 次の5編の論文では,電子情報資源管理システム(ERMS;E362参照)の利用統計,研究所における蔵書構築の意志決定,電子政府刊行物の利用統計,利用統計と価格設定,利用統計と雑誌の更新・中止を扱っている。

 最後の6編は,利用経費と評価,マーケティング効果の測定,利用単価の新しい集計方法,今後の利用統計開発のための検討,包括的な評価における利用統計の役割,SUSHI(E419参照)の紹介を含んでいる。

(東北大学附属図書館:加藤信哉)

Ref:
http://www.projectcounter.org/compliantvendors.html
CA1512
E199
E362
E419