E2863 – 絵本専門士のこれまでとこれから:節目を迎えた絵本専門士養成制度が描く将来

カレントアウェアネス-E

No.518 2026.02.12

 

 E2863

絵本専門士のこれまでとこれから:節目を迎えた絵本専門士養成制度が描く将来

絵本専門士委員会事務局(国立青少年教育振興機構)・柴谷紗良(しばたにさら)

 

●絵本専門士とは

  絵本専門士とは、絵本に関する高度な知識、技能、および感性を備えた絵本の専門家である。絵本専門士の称号は、2014年に創設された絵本専門士養成制度の中で定められた講座を修了し、絵本専門士委員会から認定を受けて得ることができる。子どもの読書活動の重要性、とりわけ絵本と親しむことや絵本の読み聞かせの大切さが指摘されるなか、絵本の魅力や可能性を伝える指導者として大いに期待され、注目されている。

  絵本専門士の役割は、読み聞かせやおはなし会、ワークショップなど、実際に絵本を使って行う取り組み、絵本に関する知識を持って行う指導・助言、絵本に関する自らのネットワークを活かした人的・物的コーディネートなど幅広く、活動の場も幼稚園や学校から図書館、医療機関まで多様である。2025年6月時点では、全国で717名の絵本専門士が活躍している。

●養成制度の成り立ち

  絵本専門士養成制度は、2012年に、有識者による絵本に係る専門家の養成に関する検討会が立ち上げられたことに始まる。子どもたちの健やかな成長を促す絵本の可能性やその活用方法を、学校や家庭のみならず地域社会全般に普及させるとともに、実際に絵本の読み聞かせやワークショップをはじめ、子どもたちの読書活動の推進に携わる絵本の専門家(絵本専門士)を養成する必要があることから創設された。2014年度から絵本専門士養成講座が開設され、国立青少年教育振興機構において実施している。2024年には、第1期の絵本専門士が誕生してから10周年を迎えた。

  また、2019年度には、子どもの読書活動を力強く推し進めていくために、若い人々にもっと関心を持ってもらい、活動に参画し、牽引してもらうため、絵本専門士委員会により認定絵本士養成制度が創設され、その養成講座(認定絵本士養成講座)が大学・短期大学・専門学校などで開設されている。教育課程に位置付けられた授業科目の中で、開設された授業科目の単位を修得することにより、認定絵本士の称号を得ることができる。認定絵本士の認定後は、地域や職場で絵本の魅力や可能性を伝え、地域の読書活動を充実させる役割が期待されている。さらに、認定後、一定の実務・実践経験を積み、資質・能力がふさわしいと絵本専門士委員会に認められることにより、「絵本専門士」として認定される。

●絵本専門士養成講座

  本講座は、絵本専門士となるために必要な3つの領域(「知識を深める」「技能を高める」「感性を磨く」)を身につけるための講座であり、30コマの授業と修了課題により構成されている。

  授業は、絵本や子どもに関する知識、おはなし会やワークショップを運営する技能、絵本の創作や編集に要する豊かな感性などを、バランスよく修得できるような内容となっている。

  また、絵本に関わる多様な領域の専門家や実践家を講師として招き、講義、演習などのさまざまな形態で授業を実施するとともに、1クラスあたり35名を定員として、きめ細かい指導を行うことを特長としている。なお、本講座は絵本に関する一定の知識や経験を備えた人を対象としている。

●今後の取り組みについて

  先述のとおり、絵本専門士養成制度は、第1期が認定されてから2024年度で10周年を迎えた。これを機に、本制度の現状と課題を見直し、取り組むべき方策を明確にするため、「絵本専門士将来ビジョン 専門家がひらく絵本の魅力と可能性 ~すべてのひとに伝え続けるために~」(2025年3月27日絵本専門士委員会)が策定された。

  この中で、人材については、絵本専門士の在住地域や年齢による偏在性を解消していくことや次世代育成を見据えて講師を確保すること、認定絵本士養成講座の受講生の定員充足率を向上させることが課題として挙げられた。また、子どもだけでなく幅広い年齢層を対象とした活動を展開していくこと、絵本専門士を組織化するとともに様々な関係団体と協働していくこと、講座修了後の体系的な学習機会が欠如していることも課題とされた。

  こうした現状を踏まえ、絵本専門士委員会では、今後取り組むべき主な方策として次の3つを柱として進めている。1つ目は絵本専門士の活動の拡充、2つ目は絵本専門士や認定絵本士の養成の充実、3つ目は絵本専門士の活動を支える仕組みの構築である。

  特に2つ目の絵本専門士養成講座の充実については、従来は東京会場のみであったが、2026年度より新たに大阪会場でも開講する。従来の東京会場と同じカリキュラムにて、西日本で活躍する専門家や実践家を中心に選定された講師により実施する。2026年3月2日17時まで受講生を募集している。詳細は国立青少年教育振興機構のホームページをご覧いただきたい。

Ref:
“絵本専門士”. 国立青少年教育振興機構.
https://www.niye.go.jp/services/ehon.html
“認定絵本士”. 国立青少年教育振興機構.
https://www.niye.go.jp/services/ehon-nintei.html
柴谷紗良. すべてのひとに絵本を届ける 絵本のエキスパート. 読書推進運動. 2025, (691), p. 5.
http://www.dokusyo.or.jp/kikanshi/kikanshi.htm
絵本専門士養成制度準備委員会. 絵本で子どもも大人も心を豊かに~絵本専門士養成制度準備委員会報告書~. 2014, 5p.
https://www.niye.go.jp/pdf/syuisyo.pdf
国立青少年教育振興機構. “絵本専門士の養成と活躍について~絵本専門士将来ビジョンから~”. 11p.
https://www.mext.go.jp/content/20250521-mxt_chisui01_000042572_004.pdf