E1621 – ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DC-2014)

カレントアウェアネス-E

No.269 2014.10.30

 

 E1621

ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DC-2014)

 

  2014年10月8日から11日まで,米国テキサス州オースティンにおいて「2014年ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DC-2014)」 (E988E1121E1232E1344E1488参照)が開催された。全体で14か国から約200名,日本からは研究者や学生等6名が参加した。

 今回は「メタデータの交差点:文化的記憶の島々をつなぐ架け橋」というテーマのもと,2日間の本会議で基調講演,研究論文・プロジェクト発表,特別セッション及びポスターセッションが行われた。また,本会議の前後には,Linked Data(CA1746参照)に関するワークショップ等が開催された。

 会議のテーマに用いられた「文化的記憶(Cultural Memory)」という言葉は,文化情報資源や学術情報資源といった人類の文化的社会的な記憶・記録を指している。これらを収集・保存・提供し後世へ伝える役割を持つ図書館,文書館,博物館等の「記憶機関(Memory Institution)」を相互にリンクさせるメタデータの役割の検討が,今回の会議の主眼である。会議では様々な報告や発表があったが,中でも印象的だったのは,情報資源の提供におけるコンテクスト(文脈)の必要性に対する認識の高まりと,そのコンテクストを提供する手段としてリンク可能な識別子が重要性を増していることである。以下,この点を中心に会議の内容を紹介する。

 Europeana(E1557参照)からは,Europeana Data Model(EDM)についての報告があった。EDMは当初,図書館における書誌データのように,個々の情報資源の記述に焦点を置いて開発された。しかし,文書館が有する情報資源を対象としたメタデータにおいては,コレクションの階層構造の記述や他の情報資源やコレクションとの関係の記述が重視されている。このような文書館のメタデータをEuropeanaの収集対象にする際の課題として,階層構造を活かした検索を可能にすること,一つのインタフェースで利用者が個々の情報資源だけでなく,コレクションの階層構造を把握して関連資料にアクセスでき,情報資源のコンテクストを理解できるようにすること等が挙げられた。

 基調講演を行った米Zepheira社のミラー(Eric Miller)氏は,情報流通において価値があるのは,誰が誰とつながっているかというリンク情報であり,人々はリンクしやすいものとつながっていくため,GoogleもFacebookもリンクのしやすさを考慮して,データを小さなモジュールにすることに取り組んでいると述べた。そして,これを実現するものとして,情報をリンクさせ,かつ識別する識別子が非常に重要だと指摘した。

 ミラー氏はまた,同社が米国議会図書館とともに開発しているBIBFRAME (E1386参照)は,MARCレコードの各要素を分解することで,情報資源を他のデータにリンクさせ,他のデータからもリンク可能なLinked Dataにすることができるため,各機関がそれぞれのニーズに合った形に設計できる柔軟なモデルになっていると説明した。これは,Linked Dataのワークショップの中でされた説明と整合性がある。ワークショップでの説明によれば,識別子は一つの分野やコンテクストに依存するものではない。例えば,「パブロ・ピカソ」は『ゲルニカ』を描いた画家としても,映画作品の主人公としても,またスペイン出身の著名人の一人としても記述することができる。このように,識別子はデータの読み手や使い手の思い浮かべる文脈によって異なる意味を持ちうるため,どのようなコンテクストの中でも使うことができる。また,データ構造やソフトウェアが変化しても,識別子は変わらない。したがって,技術や時代の変化にフレキシブルに対応して,永続的に利用することができる。このような特徴を持つ統一資源識別子(URI)を含むことによって,Linked Dataはデータの価値を高めており,それゆえにデータ提供機関にとって意味を持つとのことである。

 今回の会議を通じて,データの相互運用性を安定的かつ永続的に保ち,かつ柔軟であることを可能にする鍵は,リンク可能な識別子にあることを実感した。フランス国立図書館からの国際標準名称識別子(ISNI)に関する報告の中で「識別子のレイヤーに橋を架ける」と表現されたように,筆者は,識別子はリンク可能であることによって,情報資源の島々に橋を架けることができるのだと考える。各国の図書館等が作成・維持管理しているデータは,いずれウェブ上で相互にリンクし合うことで,多様なデータの架け橋となり,相互運用性を確保する基盤となりうるだろう。

電子情報部電子情報流通課・福山樹里

Ref:
http://dcevents.dublincore.org/IntConf/dc-2014
http://dcevents.dublincore.org/IntConf/dc-2014/schedConf/presentations
http://dcevents.dublincore.org/IntConf/dc-2014/paper/view/313/336
http://dcevents.dublincore.org/IntConf/dc-2014/paper/view/312/331
http://dcevents.dublincore.org/IntConf/dc-2014/paper/view/313/341
http://pro.europeana.eu/edm-documentation
http://www.isni.org/
E988
E1121
E1232
E1344
E1488
E1557
E1386
CA1746